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すると、玄関の小道の方から、新しい人影が入って来た。早瀬さんと悠人だった。持っているのはトートバッグだった。図書室で借りてきた本が入っているはずだ。こっちを見て笑っていた。一貴さんの方も、嬉しそうに笑顔を返していた。それを見て、背中の痛みが消え去った。
ここで浮かべている笑顔は、本当のものだと思った。練習の時に顔を合わせている時も、笑顔を浮かべていた。悠人も一貴さんも。しかし、その時は周りへ配慮してのことで、本当のものではなかったと思う。唇の傷は、火傷をして治りづらいと言い訳をしていた。信頼を裏切られて、それでも一貴さんのことが好きで、どうしていいのか分からないそうだ。早瀬さんも同じだと思う。
コンサートを控えているし、心の負担を考えて、一貴さんのことで詳しいことを教えてもらっていない。怒り狂った悠人を諫めていた早瀬さんは、黒崎と同じ表情をしていた。後悔と怒りだ。今は違う。悠人のことを、一貴さんへ促している。
3人のことを眺めていると、黒崎がそばへ来た。昨日の夜、このままではいけないと、悠人たちの方から話があったそうだ。そこで、晴海さんが一番上の兄として動き、花壇の手入れをしようと言い出した。大人の話し合いよりもいいぞと言って。
「黒崎さん……。昨日、教えてくれたらいいのに」
「お前の心は別の話だ。傷は消えない。だから家を出ようと話した」
「この庭が好きだから出て行かない」
「親父のことが嫌いだろう?正直に言え」
「ちょっと嫌いだったよ。今は元に戻ったよ」
黒崎はお見通しだったのか。そっと抱きついた。
「お義父さんのことも、放っておけないもん。遠藤さん家に遊びに行ったのは、このため?」
「居ない方がいいそうだ。迎えに行ってやる」
「俺も行くよ。うひゃひゃ。抱き合っているね~」
悠人が一貴さんへ抱きついた。早瀬さんも軽く抱きしめると、一貴さんが泣きそうになった。まるで子供のようだ。あんな姿を初めて見た。
「黒崎さん……。お兄ちゃんのイメージが……」
「心を開けたんだろう。写真を撮っておくか」
「珍しいね。え?マジで?止めろよ~」
早瀬さんが逃げようとしている。まさかキスをしようとしたのか?悠人が怒り出している。ちっとも反省していないじゃないかと言いながら。晴海さんは我関せずで、土を運び始めた。そして、遠藤さんの家に行こうとすると、黒崎から止められた。
「面白そうだ。もう少し見たい」
「バカヤロー!喧嘩になるだろ」
「それでいい。親父を迎えに行こう」
肩を抱かれて歩き始めた。そして、向かいの家へ行くまでに、二葉の今後の話が出た。秘書をやめさせるということだった。彼女を見込んでのことには違いないが、人質にしたのも同然だったと言い出した。
「親父が黒崎製菓グループから身を引く。二葉のことも手放すと言った。月曜日から勤務が始まるが、様子を見て話す。親父からだ」
「黒崎さんが一緒に居てあげてよ」
「二葉が嫌がるはずだ。二人の話だ」
「あとでフォローしてあげてね?」
「親父のことばかりを心配するな」
「妬くなよ。大事にしすぎて加減が分からない人が多いよね?黒崎家って……」
「性格が悪いだけだ」
「台無しにするなよ~」
左手の甲へキスをされた。ここにも放っておけない人がいる。身体の痛みを取り去ってくれた。お返しにバシバシ叩いてやった。やめろと言いながらも笑っている。
(今夜は満月だなあ……)
要らないものを手放す。その意味が正しいのなら、この家が新しく進み始めたというか。これからは、いいものが満ちるといい。
門を開けて、向かいの家へ訪ねて行った。佳代子さんに笑顔で迎え入れられて、昔話をしているお義父さんの顔を見て、ホッと出来た。黒崎家に来て良かった。ここに呼んで良かった。そう思ってもらえるようにしていきたいと思った。
家に帰ると、早瀬さんと悠人が笑顔で花壇を眺めていた。一貴さんも一緒だ。その光景を見て、お義父さんが黙った。俺と同じく後悔をしているのか。手を握ると、ありがとうという言葉が返ってきて、胸が熱くなった。俺はもう一度握り返し、3人の元へ連れて行った。
ここで浮かべている笑顔は、本当のものだと思った。練習の時に顔を合わせている時も、笑顔を浮かべていた。悠人も一貴さんも。しかし、その時は周りへ配慮してのことで、本当のものではなかったと思う。唇の傷は、火傷をして治りづらいと言い訳をしていた。信頼を裏切られて、それでも一貴さんのことが好きで、どうしていいのか分からないそうだ。早瀬さんも同じだと思う。
コンサートを控えているし、心の負担を考えて、一貴さんのことで詳しいことを教えてもらっていない。怒り狂った悠人を諫めていた早瀬さんは、黒崎と同じ表情をしていた。後悔と怒りだ。今は違う。悠人のことを、一貴さんへ促している。
3人のことを眺めていると、黒崎がそばへ来た。昨日の夜、このままではいけないと、悠人たちの方から話があったそうだ。そこで、晴海さんが一番上の兄として動き、花壇の手入れをしようと言い出した。大人の話し合いよりもいいぞと言って。
「黒崎さん……。昨日、教えてくれたらいいのに」
「お前の心は別の話だ。傷は消えない。だから家を出ようと話した」
「この庭が好きだから出て行かない」
「親父のことが嫌いだろう?正直に言え」
「ちょっと嫌いだったよ。今は元に戻ったよ」
黒崎はお見通しだったのか。そっと抱きついた。
「お義父さんのことも、放っておけないもん。遠藤さん家に遊びに行ったのは、このため?」
「居ない方がいいそうだ。迎えに行ってやる」
「俺も行くよ。うひゃひゃ。抱き合っているね~」
悠人が一貴さんへ抱きついた。早瀬さんも軽く抱きしめると、一貴さんが泣きそうになった。まるで子供のようだ。あんな姿を初めて見た。
「黒崎さん……。お兄ちゃんのイメージが……」
「心を開けたんだろう。写真を撮っておくか」
「珍しいね。え?マジで?止めろよ~」
早瀬さんが逃げようとしている。まさかキスをしようとしたのか?悠人が怒り出している。ちっとも反省していないじゃないかと言いながら。晴海さんは我関せずで、土を運び始めた。そして、遠藤さんの家に行こうとすると、黒崎から止められた。
「面白そうだ。もう少し見たい」
「バカヤロー!喧嘩になるだろ」
「それでいい。親父を迎えに行こう」
肩を抱かれて歩き始めた。そして、向かいの家へ行くまでに、二葉の今後の話が出た。秘書をやめさせるということだった。彼女を見込んでのことには違いないが、人質にしたのも同然だったと言い出した。
「親父が黒崎製菓グループから身を引く。二葉のことも手放すと言った。月曜日から勤務が始まるが、様子を見て話す。親父からだ」
「黒崎さんが一緒に居てあげてよ」
「二葉が嫌がるはずだ。二人の話だ」
「あとでフォローしてあげてね?」
「親父のことばかりを心配するな」
「妬くなよ。大事にしすぎて加減が分からない人が多いよね?黒崎家って……」
「性格が悪いだけだ」
「台無しにするなよ~」
左手の甲へキスをされた。ここにも放っておけない人がいる。身体の痛みを取り去ってくれた。お返しにバシバシ叩いてやった。やめろと言いながらも笑っている。
(今夜は満月だなあ……)
要らないものを手放す。その意味が正しいのなら、この家が新しく進み始めたというか。これからは、いいものが満ちるといい。
門を開けて、向かいの家へ訪ねて行った。佳代子さんに笑顔で迎え入れられて、昔話をしているお義父さんの顔を見て、ホッと出来た。黒崎家に来て良かった。ここに呼んで良かった。そう思ってもらえるようにしていきたいと思った。
家に帰ると、早瀬さんと悠人が笑顔で花壇を眺めていた。一貴さんも一緒だ。その光景を見て、お義父さんが黙った。俺と同じく後悔をしているのか。手を握ると、ありがとうという言葉が返ってきて、胸が熱くなった。俺はもう一度握り返し、3人の元へ連れて行った。
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