白い雫の天使~親愛なる人への旋律

夏目奈緖

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 この会場には、広い応接室がある。そこで両親たちがいた。これから宿泊先のホテルへ戻り、明日の午前の飛行機で帰る予定だ。

 万理が笑いながら、黒崎と話している。随分と大人びて見える。今年、20歳の誕生日を迎えたからだろうか。黒崎と出会った時は、万理はまだ高校2年生だった。あっという間だったと感じた。

「早いものだ。万理ちゃんが20歳なのか」
「圭一君は36歳だもん。3年ぐらいあっという間なんじゃないの?私にとっては大違いだけど」
「クソガキ、バカヤロウ」
「ひどーい!」

 そう言いながら、万理が黒崎の肩をバシバシ叩いている。図々しくなったと本人が話していた。それを母が諫めて静かになった。両親と向かい合うと、背が高くなった気がすると言われた。

「お母さんのことを見下ろすのって、不思議でさ~」
「あなた、背が伸びたもの」
 
 今ここでは、母の身体のことが心配になっている。白髪染めをやっていない様子だ。髪の毛の根元から3センチは伸びている。もっとかもしれない。記憶の中よりも、白髪が増えている。

「お母さん。白髪染めは?忙しいんだろ……」
「それがねー。痒みが出たから止めているのよ。皮膚科で相談して……」
「そっか。スタイリストさんに聞いてみるよ。カットの仕方で目立たなくなるそうだよ」

 何気なく口にしたことなのに、両親が吹き出して笑い出した。何かおかしいのか?俺から美容の話題が出たからだった。なんて失礼な反応だろう。

「なんだよ~。表に出る仕事をしているんだよ?」
「だって……。浅草&大阪ミックスカジュアルと、ウサギー姿を見せられたのよ?」
「笑い過ぎだよ。個性的でいいじゃん。ねえ、黒崎さん……」

 ダメもとで黒崎へ話を振ってみた。大した返事はないだろうが。すると、肩を抱かれた。両親へ微笑みかけている。母の頬が赤く染まった。なんてゲンキンな人だ。

「夏樹は何を着ても似合います。つい服を買っては叱られています」
「あら~、そうなんですかー?」
「この子は可愛い。お母さんに似て」
「本当にお上手ですね~」

 母が本気で照れくさそうにしている。こっちが恥ずかしい。黒崎のことをグイグイ引っ張り、端の方へ連れて行った。黒崎は悪びれた様子もなく、平然としている。微笑みのサービスと軽い冗談で場を沸かせていた。家族以外からも、熱い視線を注がれていた。俺は面白くない。

「黒崎さん。こっちを向けていろよ。壁の方だよ」
「もう帰る頃だ。気にするな」
「そうじゃなくて、あんたが”減る”からだよ~」
「だったら構ってくれ。寂しい」
「え?」

 本当に寂しそうな顔をしている。ステージ上で注目を浴びたから、面白くなかったそうだ。それが当たり前のことだと理解していると言われたから、思わず吹き出して笑った。すると、俺の笑い声が大きかったのか、別の意味で注目を集めて、今度は俺の方が黒崎から隠された。肩を抱かれて壁の方へ促された。

 向こうでは、悠人が一貴さんをイジっていた。名刺に書いてある純粋な友達募集の件だ。名刺に載せるのは動機が不純だ。面と向かって断りづらいだろうと言っている。あとで黒崎に相談しよう。

(まあいいか。笑っているし……。あれ、フラつく……)

 安心すると、視界がグラっと揺れた。黒崎の腕に抱き留められた。外の空気を吸わせますと、黒崎が周りに断りを入れた後、部屋から連れ出された。
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