白い雫の天使~親愛なる人への旋律

夏目奈緖

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 身体が重い。寝返りを打とうとした時、何かが阻んだ。すると、時計の針の音が聞こえてきた。黒崎に置いてけぼりにされたくない。それを思い出して目を開くと、心配そうな顔の黒崎が座っていた。夢から覚めたようだ。大きく伸びをしたが、どこも痛くない。

「夏樹。大丈夫か?」
「あ……。黒崎さん……」

 しんみりした空気を変えておきたい。夢を見たことだし、現実に間近で誘惑ポーズを披露しよう。そこで、唇を尖らせて顔を近づけた。黒崎は苦笑している。少しは楽になったか?と聞かれて、返事の代わりに頷いた。

「30分で目が覚めたよ」
「本当に起きるな」

 頭を撫でられた。すっと顔が近づいたが、離れてしまった。カーテンが閉まっているから平気なのに。そこでまた誘惑してやろうと思った。少しだけ首を傾げて、目元を伏せがちにした。唇だけの動きで、黒崎の名前を呼んだ。しかし、無反応だ。今度は上目遣いをして囁いた。

「黒崎さん……。ねえ?」
「こら、起きるなら……」
「黒崎さん……。靴下を脱がせて」
「すでに素足だ」
「そうだね……。履かせて?」
「足を出せ」

 ぶっきらぼうに言い返されて、足を持ち上げられた。目を合わせずに靴下を履かせてくれた。さっきの効果があるのかと吹き出してしまった。すると今度は、怖い目を向けられた。上目づかいをすると、振り切るようにして立ち上った。出る準備をするぞと。今度は忍び笑いでベッドから降りた。意地悪はされなかった。
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