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14時半。
時間通りに講演会が始まった。Hキャンパスのホール内では、何百人もの聴講者が席に着いている。
壇上には黒崎が立ち、前方のスクリーンへ映し出された画像を展開させて、セミナーを進めている。企業が求める人材というテーマに沿っている。テンポがよく、聞き取りやすい話し方、声のトーンが心地いい。どんな場面でも動じず、大勢を前にしても、普段と変わりがない。
開明高校でも講演をやった。高校生向けの夢を与える内容だった。ここでは就職活動を意識したものだ。夢から覚めた気分になって、不安になっている子供達が先へ進んで行くために。
他のセミナーを聴講している時、周りはとても静かだったが、ここに来ている学生達は笑っている。黒崎が冗談を飛ばすからだ。現実も楽しいものだと教えてくれた。
「……では質問に答えます。この時間の前に、どこに居たか?ですね。……保健センターで、家族の靴下を履かせるのに手間取っていました。どんなに上の立場にあろうとも、面倒見のいい人材が重宝します。家庭においても同様です。……損な役回りではありません。いつか……、報われないだって?いいや、自然と人が集まるようになる。30年後には……」
たまに学生のツッコミが入っている。就職活動系の講演で、笑いが起きることが珍しい。4月には、早瀬さんがO大で講師をやった。あの時も面白くて、大学で動画が公開されたときは、人気があったそうだ。俺達が観に行った時には、学生達が真面目で驚いた。うちは変人力が強すぎるようだ。隣に座っている悠人に声をかけた。彼もまた同じ事を考えていたようだ。
「早瀬さんとは印象が違うね~。さすがに」
「キリッとしてたからね。黒崎さんはゆったりしているよ。普段は反対だと思わない?」
「そうだね。本来はそうなのかな?」
ふと、気がついた。黒崎の雰囲気が、えらく穏やかになっていることを。こうして距離を取ると実感できる。迫力がある通り、中身も同じだったのに。年を取って、丸くなったケースかな?そこで、ノートの栞を手に取った。黒崎が描いたイラスト付きだ。ナツキが唇を尖らせている。
(これは前から同じだなあ。あれ?メールが入ってる。出版社だ……)
絵本の定期購読をしている会社だ。お知らせではなさそうな件名だ。去年の夏に、絵本のストーリーを応募した。そのことだろうか?しかし、今は講演に集中しよう。
今回は俺の方が観客になり、スクリーンからの光を浴びている黒崎のことを見つめた。そして、講演が終了し、大きな拍手に送られて、壇上を下りた彼のことを誇らしく思った。
時間通りに講演会が始まった。Hキャンパスのホール内では、何百人もの聴講者が席に着いている。
壇上には黒崎が立ち、前方のスクリーンへ映し出された画像を展開させて、セミナーを進めている。企業が求める人材というテーマに沿っている。テンポがよく、聞き取りやすい話し方、声のトーンが心地いい。どんな場面でも動じず、大勢を前にしても、普段と変わりがない。
開明高校でも講演をやった。高校生向けの夢を与える内容だった。ここでは就職活動を意識したものだ。夢から覚めた気分になって、不安になっている子供達が先へ進んで行くために。
他のセミナーを聴講している時、周りはとても静かだったが、ここに来ている学生達は笑っている。黒崎が冗談を飛ばすからだ。現実も楽しいものだと教えてくれた。
「……では質問に答えます。この時間の前に、どこに居たか?ですね。……保健センターで、家族の靴下を履かせるのに手間取っていました。どんなに上の立場にあろうとも、面倒見のいい人材が重宝します。家庭においても同様です。……損な役回りではありません。いつか……、報われないだって?いいや、自然と人が集まるようになる。30年後には……」
たまに学生のツッコミが入っている。就職活動系の講演で、笑いが起きることが珍しい。4月には、早瀬さんがO大で講師をやった。あの時も面白くて、大学で動画が公開されたときは、人気があったそうだ。俺達が観に行った時には、学生達が真面目で驚いた。うちは変人力が強すぎるようだ。隣に座っている悠人に声をかけた。彼もまた同じ事を考えていたようだ。
「早瀬さんとは印象が違うね~。さすがに」
「キリッとしてたからね。黒崎さんはゆったりしているよ。普段は反対だと思わない?」
「そうだね。本来はそうなのかな?」
ふと、気がついた。黒崎の雰囲気が、えらく穏やかになっていることを。こうして距離を取ると実感できる。迫力がある通り、中身も同じだったのに。年を取って、丸くなったケースかな?そこで、ノートの栞を手に取った。黒崎が描いたイラスト付きだ。ナツキが唇を尖らせている。
(これは前から同じだなあ。あれ?メールが入ってる。出版社だ……)
絵本の定期購読をしている会社だ。お知らせではなさそうな件名だ。去年の夏に、絵本のストーリーを応募した。そのことだろうか?しかし、今は講演に集中しよう。
今回は俺の方が観客になり、スクリーンからの光を浴びている黒崎のことを見つめた。そして、講演が終了し、大きな拍手に送られて、壇上を下りた彼のことを誇らしく思った。
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