176 / 265
20-9
しおりを挟む
17時。
講演会が終了し、黒崎と一緒にタクシーに乗って帰宅している。今夜は家でご飯を食べる。話題は、出版社からのメールのことだ。応募した作品が採用されて、絵本のサイトに掲載されることになった。毎月5作品ずつ、応募作品の中から載るそうだ。俺の分は7月中旬の予定だ。
「その頃って、シャルロットキッチンのオープンの時期だよね。お祝いしたいよ~」
「よかったな。俺のイラストも載るのか……」
黒崎には挿絵を描いてもらった。ペンネームは黒崎双樹にした。俺につける、名前の候補の一つだったと聞いている。
さっそく悠人たちが祝ってくれた。大学内で買った個装のドーナツが、たくさん袋に入っている。しばらくオヤツに困らない。
さらに嬉しいことがある。怜さんと会えることになった。コンサートが終わった後がいいだろうと、話を進めていた。黒崎も怜さんも、うちに遊びに来る程度で考えていたけれど、一貴さんとしてはそうはいかないようだ。会社の大事な提携先だと言っていた。だからレストランを予約した。ざっくばらんな方が楽だろうに。
早瀬さんと悠人も誘ったが、ゆっくり話せないだろうと遠慮された。今年中は、怜さんが国内にいるから会える機会がある。怜さんの仕事の方も、慌ただしさが落ち着いたそうだ。
「プレゼントを用意しようよ。来週の日曜日だし……」
「和菓子を買っておく。あの調理器具はどうだ?気に入っているやつだ」
「バンバンミックスのことだね。それがいいね。最新型だから喜ぶよ。これから買いに行こうよ」
「今日は帰るぞ。ゆっくりしておけ。興奮して眠れないだろう」
「いいことだもん」
「いくらでも聞いてやる。早めにベッドへ入る約束をするなら」
「もちろん。いっぱい話したいことがあるよ。黒崎さんの講演とか……」
「そうか。楽しめたか」
書類を読みながら聞いてやる。好きなだけ話せと苦笑された。何をやっていても、俺の話が頭に入るから器用だ。
ガーーー。
我が家の前に到着した。門を入ると、イタチが迷い込んでいた。よく見るとフェレットだ。逃げないから、人に慣れているのかな?
「あれ?ご近所さんのペットかな?」
「一貴が来たぞ。親父もか……」
「隆さーん。一貴お兄ちゃん。この子、知ってる?」
「今日から飼うことにしたよ」
一貴さんが追いかけて来た。知り合いから教えてもらい、オフィスにも連れて行けるからと、家族に迎えることにしたそうで、今日の午前中に、ペットショップへ行ったそうだ。お義父さんは何も聞いておらず、驚いている。帰って来たら、この子が家の中を走っていたそうだ。
フェレットを飼ったことがないから、全く知識がない。ゲージなどのグッズは買い揃えてあるそうだ。理久が飼っているから、分からないことが聞けると思った。
「困ったお兄ちゃんだね~。友達に詳しい子がいるから、今から聞くよ」
「おっと……、逃げた。圭一のことが好きなのか」
「動物に好かれるもん……」
いつの間にか、黒崎がフェレットを抱いていた。本人から寄ってきたそうだ。お義父さんが抱いているアンが、不思議そうにしている。見たことがないからだろう。
一貴さんが黒崎からフェレットを受け取り、抱き上げて、嬉しそうに笑った。俺の方も嬉しくなった。近くで暮らして分かったのは、何でも大事にする人だということだ。アンへの接し方も優しい。本気で動物が好きだと分かる。
「小さいよね~。大人になっても、1キロしか体重がないって言うし。名前は決めた?」
「ああ、いくつか迷った結果だ。男だから、ユーリだ」
「え?やめときなよ……」
「ユーリにする」
一貴さんの感覚は突き抜けていて、本気なのか冗談なのか分からない時がある。黒崎とお義父さんが眉間に皺を寄せたことで、しぶしぶ、別の名前にすると言った。
お義父さんと一貴さんが家に帰っていった。俺達も家の中に入った。そして、玄関を入るとすぐに、黒崎から襲い掛かるようにして、抱き寄せられた。噛みつくようにキスをされて、壁に追い詰められた。
「どうした……の?」
「誘惑するからだ。今夜は我慢する」
とても我慢しているようには思えない。降参したと口にした後、やっと解放された。理久に連絡を取るからと口実をつけて、逃げ出してやった。お疲れ様でしたと言いながら。
講演会が終了し、黒崎と一緒にタクシーに乗って帰宅している。今夜は家でご飯を食べる。話題は、出版社からのメールのことだ。応募した作品が採用されて、絵本のサイトに掲載されることになった。毎月5作品ずつ、応募作品の中から載るそうだ。俺の分は7月中旬の予定だ。
「その頃って、シャルロットキッチンのオープンの時期だよね。お祝いしたいよ~」
「よかったな。俺のイラストも載るのか……」
黒崎には挿絵を描いてもらった。ペンネームは黒崎双樹にした。俺につける、名前の候補の一つだったと聞いている。
さっそく悠人たちが祝ってくれた。大学内で買った個装のドーナツが、たくさん袋に入っている。しばらくオヤツに困らない。
さらに嬉しいことがある。怜さんと会えることになった。コンサートが終わった後がいいだろうと、話を進めていた。黒崎も怜さんも、うちに遊びに来る程度で考えていたけれど、一貴さんとしてはそうはいかないようだ。会社の大事な提携先だと言っていた。だからレストランを予約した。ざっくばらんな方が楽だろうに。
早瀬さんと悠人も誘ったが、ゆっくり話せないだろうと遠慮された。今年中は、怜さんが国内にいるから会える機会がある。怜さんの仕事の方も、慌ただしさが落ち着いたそうだ。
「プレゼントを用意しようよ。来週の日曜日だし……」
「和菓子を買っておく。あの調理器具はどうだ?気に入っているやつだ」
「バンバンミックスのことだね。それがいいね。最新型だから喜ぶよ。これから買いに行こうよ」
「今日は帰るぞ。ゆっくりしておけ。興奮して眠れないだろう」
「いいことだもん」
「いくらでも聞いてやる。早めにベッドへ入る約束をするなら」
「もちろん。いっぱい話したいことがあるよ。黒崎さんの講演とか……」
「そうか。楽しめたか」
書類を読みながら聞いてやる。好きなだけ話せと苦笑された。何をやっていても、俺の話が頭に入るから器用だ。
ガーーー。
我が家の前に到着した。門を入ると、イタチが迷い込んでいた。よく見るとフェレットだ。逃げないから、人に慣れているのかな?
「あれ?ご近所さんのペットかな?」
「一貴が来たぞ。親父もか……」
「隆さーん。一貴お兄ちゃん。この子、知ってる?」
「今日から飼うことにしたよ」
一貴さんが追いかけて来た。知り合いから教えてもらい、オフィスにも連れて行けるからと、家族に迎えることにしたそうで、今日の午前中に、ペットショップへ行ったそうだ。お義父さんは何も聞いておらず、驚いている。帰って来たら、この子が家の中を走っていたそうだ。
フェレットを飼ったことがないから、全く知識がない。ゲージなどのグッズは買い揃えてあるそうだ。理久が飼っているから、分からないことが聞けると思った。
「困ったお兄ちゃんだね~。友達に詳しい子がいるから、今から聞くよ」
「おっと……、逃げた。圭一のことが好きなのか」
「動物に好かれるもん……」
いつの間にか、黒崎がフェレットを抱いていた。本人から寄ってきたそうだ。お義父さんが抱いているアンが、不思議そうにしている。見たことがないからだろう。
一貴さんが黒崎からフェレットを受け取り、抱き上げて、嬉しそうに笑った。俺の方も嬉しくなった。近くで暮らして分かったのは、何でも大事にする人だということだ。アンへの接し方も優しい。本気で動物が好きだと分かる。
「小さいよね~。大人になっても、1キロしか体重がないって言うし。名前は決めた?」
「ああ、いくつか迷った結果だ。男だから、ユーリだ」
「え?やめときなよ……」
「ユーリにする」
一貴さんの感覚は突き抜けていて、本気なのか冗談なのか分からない時がある。黒崎とお義父さんが眉間に皺を寄せたことで、しぶしぶ、別の名前にすると言った。
お義父さんと一貴さんが家に帰っていった。俺達も家の中に入った。そして、玄関を入るとすぐに、黒崎から襲い掛かるようにして、抱き寄せられた。噛みつくようにキスをされて、壁に追い詰められた。
「どうした……の?」
「誘惑するからだ。今夜は我慢する」
とても我慢しているようには思えない。降参したと口にした後、やっと解放された。理久に連絡を取るからと口実をつけて、逃げ出してやった。お疲れ様でしたと言いながら。
0
あなたにおすすめの小説
病弱の花
雨水林檎
BL
痩せた身体の病弱な青年遠野空音は資産家の男、藤篠清月に望まれて単身東京に向かうことになる。清月は彼をぜひ跡継ぎにしたいのだと言う。明らかに怪しい話に乗ったのは空音が引き取られた遠縁の家に住んでいたからだった。できそこないとも言えるほど、寝込んでばかりいる空音を彼らは厄介払いしたのだ。そして空音は清月の家で同居生活を始めることになる。そんな空音の願いは一つ、誰よりも痩せていることだった。誰もが眉をひそめるようなそんな願いを、清月は何故か肯定する……。
借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます
なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。
そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。
「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」
脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……!
高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!?
借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。
冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!?
短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。
発情期のタイムリミット
なの
BL
期末試験を目前に控えた高校2年のΩ・陸。
抑制剤の効きが弱い体質のせいで、発情期が試験と重なりそうになり大パニック!
「絶対に赤点は取れない!」
「発情期なんて気合で乗り越える!」
そう強がる陸を、幼なじみでクラスメイトのα・大輝が心配する。
だが、勉強に必死な陸の周りには、ほんのり漂う甘いフェロモン……。
「俺に頼れって言ってんのに」
「頼ったら……勉強どころじゃなくなるから!」
試験か、発情期か。
ギリギリのタイムリミットの中で、二人の関係は一気に動き出していく――!
ドタバタと胸きゅんが交錯する、青春オメガバース・ラブコメディ。
*一般的なオメガバースは、発情期中はアルファとオメガを隔離したり、抑制剤や隔離部屋が管理されていたりしていますが、この物語は、日常ラブコメにオメガバース要素を混ぜた世界観になってます。
死ぬほど嫌いな上司と付き合いました【完結】
三宅スズ
BL
社会人3年目の皆川涼介(みながわりょうすけ)25歳。
皆川涼介の上司、瀧本樹(たきもといつき)28歳。
涼介はとにかく樹のことが苦手だし、嫌いだし、話すのも嫌だし、絶対に自分とは釣り合わないと思っていたが‥‥
上司×部下BL
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
追放されたおまけの聖女♂は冷徹王太子の腕の中から離してもらえない〜今さら戻れと言われても、もうこの人の魔力しか受け付けません!〜
たら昆布
BL
聖女のおまけで召喚されたと思われて追放された不憫受けが拾われて愛される話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる