白い雫の天使~親愛なる人への旋律

夏目奈緖

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21-1 黒崎の幼なじみ・デザイナー

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 6月16日、日曜日。午前10時。

 今日は休日だ。我が家のリビングにて、黒崎から日焼け止めを塗られている。首の後ろから下の方まで丁寧に。車移動だから、日焼け対策は要らないと思う。しかし、黒崎は塗ると言って譲らない。

「黒崎さん。首の後ろは塗って終わったよ。また塗るの?」
「また日焼けをするぞ。適当に塗るからだ。赤くなっているぞ」
「多少はなるよ。ニ、三日で落ち着くから。今度は腕?さっきも……」
「厚めに塗っておく」

 ソファーで寝転がっている状態だ。抱き上げられて起こされた後、腕を伸ばされた。優しい力で、クリームの付いた手が滑って行く。首の後ろから下の辺りまで日焼け止めを塗られた。そして、身体を起こされた後、腕を伸ばされた。今度はこっちだと言って。

 車のガラスには紫外線対策がされているが、油断できないそうだ。黒崎本人は日焼けするのを気にしないくせに、俺には神経を使っている。日焼けをしてほしくないからだ。

 今日は外へ出かける予定だ。怜さんと会う約束がある。一貴さんを紹介するために。レストランでの会食だ。一貴さんが選んだ店だ。

 うちでご飯を食べればいいのに。その方が打ち解けやすいと話してある。食事の後で、我が家に遊びに来るからだ。

 昔、一度だけ訪ねて来たことがあるそうだ。どんなふうに変わっているのか、楽しみにしていると言っていた。最近の写真は送ってある。

「少しは焼けたいよ」
「お前の場合は似合わない。髪の毛が伸びてきたな。そろそろ美容院の時期だ。毛先を揃えるだけにしておけ」
「もっと短くしたいよ。後ろでまとめたら、女の子みたいだし」
 
 大学の友達が聞いたら、驚くに決まっている。髪型を自由に出来ないとは。俺はセンスがないから、アドバイスを受けているのだと思うことにしている。

「よく似合っている。怜と知り合った当時の長さだ。覚えているか?」
「そうだったね~。黒崎さんと恋人同士になった時だよ。怜さんを見て、女の人だって勘違いして、マンションを飛び出したっけ。あれがきっかけだったね。ベッドに入ったのは……」

 懐かしい思い出だ。勘違いから黒崎と喧嘩をして、仲直りできた。その結果、初めてベッドに入った。沙耶さんから仲裁されたことも大きい。今回は都内に4人が揃った。3年ぶりだ。

「沙耶さんの9月の結婚式に怜さんも出席するよね?4人が揃うよ」
「ああ。怜がお前を見て驚くだろう。ステージを動画で観ているが、実物はイメージが違う。声の張りも、顔立ちも成長した。3年間は大きい」
「万理の言ったとおりだよね。俺たちの年代は違いが大きいって。いたた……、やめひぇひょ~」
「憎まれ口は成長しないようだな」

 頬をつまんで引っ張られた。大事にしているようで、そうでないと思う。遠回しに黒崎のことを“オジサン”だと言ったからだ。すると、黒崎が手を離した後、顔を近づけてきた。そして、そっと頬に唇が押し当てられた後、首筋へも同じようにされた。心なしか、吐息が熱くなっている。イチャつくわけにはいかない。もうすぐ家を出るからだ。

「黒崎さん……。だめだよ」
「痛みを取っている。ここはどうだ」
「だめだってば……。間に合わなくなるよ」
「こっちは、どうだ」
「こら……」

 耳たぶをつまんで引っ張ってやった。笑っているから、効果がないのはいつものことだ。手を握られて、指先を舐められた。まだ息が熱い。

 黒崎が時計を見て、間に合うと笑った。そんなことはないのに。黒崎の手を払いのけても、すぐに握られてしまう。時間がないと繰り返しておいた。
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