白い雫の天使~親愛なる人への旋律

夏目奈緖

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21-4(黒崎視点)

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 13時。

 会食はスムーズに進んでいる。選んだ店も、コース料理の内容も、怜の好みに合っている。人づてに情報を集めたのだろう。席順もいい。夏樹を怜の隣にすることで、会話が盛り上がった。そこへ一貴が会話に入るという形だ。2人の関係性を見抜いた上でのことだ。さすがだと思った。些細なやり取りのみで、人間関係を理解できるのか。

 一貴は無用な争いを起こすことなくプラセルのかじ取りが可能だが、最近では波風を立て過ぎた。それについては修正中であり、いい方向へ進むだろう。

(会いたがったのは、着物ブランドの件のみか?)

 プラセルとの提携が進む中、会食の機会があるはずだ。怜のマネジメント側も優先事項にするだろう。今日ここで顔つなぎをしたのは、一貴がプライベートで会いたがっていたからだ。怜がデザインしている着物については、彼の個人的な趣味の範囲だ。プラセルとの着物の提携は、ほぼ諦めていると、一貴から聞いてある。だったらなぜ会いたがったのか。理由が行き当たる。

(惚れたということか。一度も会っていないが……。距離が近い……)

 一貴が怜との距離を詰めている。テーブルで隔てられても、顔が近づき過ぎだ。厄介なことになった。一貴にとってだ。怜は気難しい性格をしている。図々しい人間を遠ざける。一貴にしてみれば、怜は ”大好きな人””憧れの対象” だ。一貴は天真爛漫な面がある。それが原因で、壊れた関係もあったはずだ。ここは協力したい。

(俺達は兄弟らしくなれたのか……)

 業界ではプラセルの悪い噂を聞きすぎた。本当に本人が進めてきたことかと、耳を疑ったこともある。

 怜の前で両目を輝かせて、前のめりで話している一貴の姿を眺めた。まるで子供のようで、全く腹が立たない。しかし、怜のこめかみが引きつっている。

 夏樹はお構いなしに、相づちを打っている。いや、気づいているのか。テーブルの下で、俺の足を突いてきた。距離を取らせよう。これは本人のためになるのか?いや、止めさせるべきだろう。そこで、一貴に話しかけた。

「一貴。ハーブティーのソルベ、カモミールの炭酸ジュレ、どちらがいい?」
「もうデザートに入るのか。あっという間だな」
「夏樹君はどうする?」
「えーっとね。迷うな~」

 怜がグラスの水を飲んだ。何やら思案顔で、一貴のことを見ている。提携のことで具体的な話は出ていない。着物ブランドを紹介してほしいことは伝えてある。彼の気分次第だ。フォローを入れつつ、一貴の印象を上げるとしよう。

  怜と夏樹が寄り添うようにして、メニューを眺めている。デザート3種類のどれにするのかと話している。怜からは、半分ずつ分けるかと提案された。すると、夏樹が俺の方を見た。

「行儀が悪いって叱るだろ?」
「いや……」

 一貴の方へ向くと、軽く頷いた。笑顔で2人に声をかけた。俺の肩を押しつつだ。いいタイミングだ。

「圭一、今日は構わないだろう。全種類をオーダーする。食べきれないようなら、少なめで頼むぞ?」
「やったー。じゃあマカロンも。一人前の量がいい」
「夏樹、食べ切れないだろうが」
「いいじゃないか。桑園さんは、いかがされますか?ブルボンバニラの紅茶と和三盆のアイスが、お勧めですが……」
「ええと……。メニューにはありませんが?」
「ご用意しています。昔から通っている店ですから、頼み込んでおきました」
「ありがとうございます。頂きます」

 怜が微笑んだ。一貴が嬉しそうに笑い、オーダーをした。待つ間は、俺の方から話題を振った。2人の間の緊張が解きほぐれて、流れが変化した。怜の作り出した空気が和らいだ結果だ。

 怜の仕事上での姿を知っている為、驚きはしないが、夏樹が面食らっている。気難しい人の印象だろう。夏樹には賑やかな部分しか見せていないからだ。
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