白い雫の天使~親愛なる人への旋律

夏目奈緖

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 ガーーーーー。

 どれぐらいの時間を見つめ合っただろうか。裏道を車が走り去ったことで、静寂が破られた。少しの無言時間で気持ちが落ち着き、振り上げた手を下ろせなくなった。そう怒ることでもなかったと思い始めた。

「夏樹。俺が悪い。どうすればいい?」
「もういいよ。時間が無くなるから。歩いて行く?タクシー?」
「タクシーで行く。時間はある」
「黒崎さん?」

 グイっと肩を引かれた。周りを確認した後、唇へキスされた。許すまで続けると言われては、許すしかない。なんだか黒崎のことが可哀そうになったからだ。思い出のマンションの前で、ヤキモチを妬き合っている。36歳と21歳という組み合わせだが、これに関しては対等な関係だ。

「ふふん。お互いに成長したじゃん」
「何日間でも謝る」
「俺の方も妬かせてごめんね。悪気はなかったんだ」
「俺とは訳が違う。相手はファンだった」
「成長したじゃん。エントランスなら、写り込んでもいいかな?仲直りで自撮りしようよ~」
「はいはい……」

 ここで写真を撮りたい。黒崎からしぶしぶOKが出て、スマホの前で寄り添った。気が変わらないうちに、シャッターを連写した。どれもベストショットだ。背後の景色は3年前。笑顔は3年後の姿だ。俺たちは、とても良い方に変わった。

 さっそく、お義父さんへ送信した。沙耶さんへも。さっきの駆け引きを話すために。笑っていると、黒崎にスマホを奪い取られてしまった。返せよと取り合っていると、万理から電話が入った。お店に到着したそうだ。すっかり遅くなり、慌ててタクシーへ乗り込んだ。
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