白い雫の天使~親愛なる人への旋律

夏目奈緖

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25-1 夏の一日

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 7月15日、月曜日。午前5時。

 今日は祭日だ。我が家の畑で過ごしている。草を引いて葉っぱを拾い、水やりを済ませた。黒崎が花壇に座って空を眺めている。今日の世話は時間がかかると話すと、何も言わずについてきた。しかし、手伝おうとはしない。アンが寝転がって土まみれになっても。 

「ららら~。この時間でないと暑いのよ~」

 プチトマトが大量の収穫どきを迎えた。食べ切れないから近所へお裾分けした。お義父さんの家へも。あまりに多いものだから、黒崎家では食べ飽きたという声が上がった。なんて贅沢なことか。黒崎は文句を言わない。トマトが好きだからだ。今までは苦手な野菜だったそうだ。

「俺の作ったトマトなら食べるだってさ~」

 たまに甘ったるいことを言うから、耐性ができない。それを狙っているのか?いつも言われたら、たしかに価値が下がる気はする。本気度が低いというものだ。

「つまりは~、本気ってことだよね。ヒョーーーッ」

 そばにあるトマトを収穫すると、まだ色づいていなかった。手元を見ておらず、いくつかカゴの中にも入っている。少しおけば美味しくなるだろう。

 歌と黒崎のことで頭がいっぱいだった。その当人へ振り返ると、全く関心がなさげに空を仰いでいる。少しは俺の方を見てもらいたい。カゴを振ったり前を歩いたりした。アンだけが来てくれた。

「トマトが好きな人、手を上げて下さーい」
「どうしたんだ?」
「俺が好きな人、手を上げてください。……何で笑うんだよ?こっちを見ないからだよ」
「見ている。熟れていない実を取っただろう」

 なんだ、見ていたのか。恥ずかしくなり顔が熱くなった。今度は見せるのが嫌になり、カゴを持ち上げて顔を隠した。そのまま歩いて行こうとすると、追いかけてきた。危ないだろうがと、カゴを取り上げられた。おまけに顔を覗き込んできた。

「キャーーッ」
「バカヤロウ」
「バ、バカヤロウ?あんた、言い過ぎだよ」
「見ないなら意味がないだろうが。右の頬を切っているぞ」
「トマトの葉っぱが当たったから……」
「だから目が離せない。消毒するぞ」
 
 やっぱり愛されている。さっと手を握られて歩きだした。

 玄関へと向かいながら、絵本のサイトの話をした。お昼頃には応募作品が掲載される。昨晩は寝付けなかったほどだった。楽しみにしている。
 
 家の中に入った後、黒崎が頬を消毒してくれた。間違えて染みる薬を買ってしまっていたことに気づいた。消毒液が触れて、ピリッと痛みが走り、身体が逃げた。黒崎からは肩を押さえられた。

「いたた……。間違えたよ……」
「最近は怪我をしない。いい子だ」

 黒崎は俺の些細な傷でも怖がっている節がある。熱を出しても同じ反応をする。心配ないよと抱きつくと、膝の上に抱き直された。外とは大違いに優しく微笑まれた。外とは違うねと言うと、外は恥ずかしいと話してあるだろうと、下唇をつままれた。
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