白い雫の天使~親愛なる人への旋律

夏目奈緖

文字の大きさ
219 / 265

25-6

しおりを挟む
 ザーーー、ザーーー。

 2人で湾沿いの広場を歩いている。IKUのコンサートホールが遠くに見えている。お店の客層を大学生にして良かったようだ。その通りに、若い年代が多く通っている。

 黒崎が苦笑している。ここでやれというのかと。当たり前だと言い返した。人が多いけれど、広いから密集していない。クルクル回るのには問題ない。旅先での駆け引き、今日の告白、頬をつねったこと、お仕置きにはピッタリだ。

 黒崎の腕をグイグイ引っ張り、人のいない場所を選んだ。向かい合い、肩周りに両腕を回した。俺の方は準備完了だ。ここまで来ると観念しただろう。

「つかまっておけ」
「りょーかい!」

 脇の下に両腕が回された。そして、しっかりホールドしたのを確認した後、ゆっくり回り始めた。片足ずつ浮き上がり、少しずつ回転を始めた。高校生ぐらいの子たちが見て笑っている。自分たちもやりたいと言っている。

 5回転ぐらいで止めるかと思えば、サービス精神を出してくれた。何度もクルクル回り、景色が変化していく。メリーゴーランドの状態だ。

 10回ぐらい回ったところで、黒崎から文句が出てきた。聞く気はない。さらにすがりついて、俺の方から地面を蹴った。黒崎じゃため息をついて笑っているようだ。

「もっとだよ~」
「腰が痛い。ベッドに影響する」
「わあああ、ドン引きするよ。分かっているの?」
「俺には意味がない。進むか引き返すしか選択肢がないものを、一歩引いたところで現状は変わらない」
「そういうところが好きだよ~」

 もっと回れと命令すると、両足が宙に浮いた。さすがに疲れて息が上がった。止まった時には目が回り、地面へ座り込んだ。

「ふう。疲れた~」
「お前は疲れていないはずだ」
「そんなことないもん!」

 抱きかかえられて立ち上がった。黒崎がため息をついている。俺の方は目が回った。自分の方から回れと言った以上、文句は言えない。

「黒崎さん。汗をかいているよ。はい、どうぞ」
「ああ」

 バッグの中からハンカチを取りだして、黒崎の額を拭いてあげた。汗を引かせたいから、もう一度店内に戻ろうかと黒崎に言うと、今帰ると風邪を引くぞと止められた。

「デザートで食べ足りない物があるのか?」
「あんたのことを考えて言ったんだよ~。息が切れているだろ?俺とは違って……。わあ~。つねるなよ~」

 もう少しで黒崎から頬をつねられるところだった。俺達は笑いながら広場を後にした。ガラス越しに見えている、一貴さんたちへ手を振りながら。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

不夜島の少年~兵士と高級男娼の七日間~

四葉 翠花
BL
外界から隔離された巨大な高級娼館、不夜島。 ごく平凡な一介の兵士に与えられた褒賞はその島への通行手形だった。そこで毒花のような美しい少年と出会う。 高級男娼である少年に何故か拉致されてしまい、次第に惹かれていくが……。 ※以前ムーンライトノベルズにて掲載していた作品を手直ししたものです(ムーンライトノベルズ削除済み) ■ミゼアスの過去編『きみを待つ』が別にあります(下にリンクがあります)

【完結】君の手を取り、紡ぐ言葉は

綾瀬
BL
図書委員の佐倉遥希は、クラスの人気者である葉山綾に密かに想いを寄せていた。しかし、イケメンでスポーツ万能な彼と、地味で取り柄のない自分は住む世界が違うと感じ、遠くから眺める日々を過ごしていた。 ある放課後、遥希は葉山が数学の課題に苦戦しているのを見かける。戸惑いながらも思い切って声をかけると、葉山は「気になる人にバカだと思われるのが恥ずかしい」と打ち明ける。「気になる人」その一言に胸を高鳴らせながら、二人の勉強会が始まることになった。 成績優秀な遥希と、勉強が苦手な葉山。正反対の二人だが、共に過ごす時間の中で少しずつ距離を縮めていく。 不器用な二人の淡くも甘酸っぱい恋の行方を描く、学園青春ラブストーリー。 【爽やか人気者溺愛攻め×勉強だけが取り柄の天然鈍感平凡受け】

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

デコボコな僕ら

天渡清華
BL
スター文具入社2年目の宮本樹は、小柄・顔に自信がない・交際経験なしでコンプレックスだらけ。高身長・イケメン・実家がセレブ(?)でその上優しい同期の大沼清文に内定式で一目惚れしたが、コンプレックスゆえに仲のいい同期以上になれずにいた。 そんな2人がグズグズしながらもくっつくまでのお話です。

恋人はメリーゴーランド少年だった~永遠の誓い編

夏目奈緖
BL
「恋人はメリーゴーランド少年だった」続編です。溺愛ドS社長×高校生。恋人同士になった二人の同棲物語。束縛と独占欲。。夏樹と黒崎は恋人同士。夏樹は友人からストーカー行為を受け、車へ押し込まれようとした際に怪我を負った。夏樹のことを守れずに悔やんだ黒崎は、二度と傷つけさせないと決心し、夏樹と同棲を始める。その結果、束縛と独占欲を向けるようになった。黒崎家という古い体質の家に生まれ、愛情を感じずに育った黒崎。結びつきの強い家庭環境で育った夏樹。お互いの価値観のすれ違いを経験し、お互いのトラウマを解消するストーリー。

僕を惑わせるのは素直な君

秋元智也
BL
父と妹、そして兄の家族3人で暮らして来た。 なんの不自由もない。 5年前に病気で母親を亡くしてから家事一切は兄の歩夢が 全てやって居た。 そこへいきなり父親からも唐突なカミングアウト。 「俺、再婚しようと思うんだけど……」 この言葉に驚きと迷い、そして一縷の不安が過ぎる。 だが、好きになってしまったになら仕方がない。 反対する事なく母親になる人と会う事に……。 そこには兄になる青年がついていて…。 いきなりの兄の存在に戸惑いながらも興味もあった。 だが、兄の心の声がどうにもおかしくて。 自然と聞こえて来てしまう本音に戸惑うながら惹かれて いってしまうが……。 それは兄弟で、そして家族で……同性な訳で……。 何もかも不幸にする恋愛などお互い苦しみしかなく……。

僕の恋人は、超イケメン!!

八乙女 忍
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?

ある少年の体調不良について

雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。 BLもしくはブロマンス小説。 体調不良描写があります。

処理中です...