白い雫の天使~親愛なる人への旋律

夏目奈緖

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26-1 黒崎の選択

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 7月22日、月曜日。午前5時半。

 俺の一日は、畑の水やりから始まる。夏場は毎日のことだ。その後で朝ごはんづくりを始める。今朝は和食系だ。厚焼き玉子をカットして、大根おろしを添えた。ストックがあるから手早く済む。

 あれこれと作業するのは黒崎のせいだ。あれやこれやとうるさくて、美味いと言わせたいがために工夫をして来た。マスタードが辛い、味が薄い濃い。何でも言う人だ。しかし、現在では文句が出ない。これが理由で家出されたら、立つ瀬がないということに気づいたからだ。

「結局は俺のことが優先なんだよねぇ。一貴お兄ちゃんのことがあったし……」

 黒崎がそのうちストレスで病気になり兼ねない。一貴さんは、お義父さんが大事にしている”夏樹”のことを引き離そうとした。もめ事を起こして、黒崎と一緒に出て行くのを狙っていた。

 そこで黒崎は、お義父さんからの”ごめんなさい”を引き出そうとしたわけだ。限界までやらせた結果だ。一貴さんは優しい人だ。本来の姿を黒崎達が信じたから出来たことだ。

 俺のことでも引っかかることがあるだろう。不審者が出ているからだ。引っ越したところで危険が及ばないわけがない。そう考えているようだ。

 この状態を心配しているのが晴海さんだ。荷物を分けろと言っている。危険なことを考え出すのは、これから増えていくぞと。

「本来は末っ子なのにな。もっと我儘でもいい気がする。でも、温かい人になったなあ。その分、気苦労が増えたけど……」

 少々の文句ぐらいは聞き流してあげよう。労うために一品追加する。高菜フーズの高級豆腐で冷奴だ。冷蔵庫からそれを取り出していると、足音が近づいた。背後から腕が回されて、頬へキスをされた。昨夜はイチャついていない分、時間が長い。

 不意打ちでキスをしてやると、頬ずりされた。ヒゲがチクチクしている。身じろぎすると、腕に力を込められた。これでは逃げ出せない。

「黒崎さん。チクチクするよ。男前が台無しだってば」
「日ごろからコケ降ろされている。慣れた」
「ヒゲがチクチク、嫌味をちくちく。やめろよ~」

 今夜のお楽しみにしてよと囁くと、ぱっと離れてくれた。機嫌を損ねたくないからだ。はいはいと言って、黒崎のことをダイニングテーブルへ押して、高級豆腐のパッケージを開いた。
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