白い雫の天使~親愛なる人への旋律

夏目奈緖

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 お店から出た後、茶色のテントを目指して歩いた。日差し強く、UVパーカーのフードを被った。日傘を差せと言われたことがあるが、さすがにやりたくない。畑の世話をする時には、大きなパラソルを立てている。

「ヴィジブルレイじゃない ? かっこいい!」
「あのー、もしかして……」

 女性達から声を掛けられた。そして、握手をした後、営業企画部の平田さんが来て、俺たちをテントへ促した。爽やかスマイルを浮かべつつだ。すると今度は、男子大学生風の子がやって来た。”綺麗ですね”と微笑まれたが、嫌な気にならずに済んだ。黒崎から囁かれるから、耐性がついたのかな?ベッド限定だ。価値が高くて蕩けそうだ。

「”夏樹、綺麗だ”。だからさー、平気になったんだよー?」
「なつきー、早く行こうねー」
「昨夜も囁かれたんだ……。ふふん……」
「あああ……」
「ヒョーーーッ」

 タオルハンカチで膝を叩くと、周りから視線を浴びた。笑い声まである。一気に顔が熱くなり、フードを目深にかぶった。

 平田さんから案内されて、テントの下に入った。3つ並んだ端の方だ。木製のテーブルと椅子が置かれて、社員さんが休憩していた。交代して持ち場へ戻って行く。その度に会釈している。

 こっちへ歩いてきた田所専務さんから微笑まれた。黒崎の役員室のお隣さんだ。俺の方を見て、”大人になったわね”と微笑まれた。今回は新規路線の重要ポイントのため、スタッフとして参加したという。俺が開発部で勤務する予定も知っており、感慨深く頷いている。

「ありがとうございます。席を占領してすみません」
「いいのよ。最初から用意していたから。お客様の救護スペースも確保してあるし。あら、常務が到着よ。怖い顔だわ。何かやったの?」
「ひいいいいっ。ラインを送り忘れただろ?」
「あ、忘れてた。さっきので。うっうっ」

 昨夜のことを思い出して興奮したからだ。これでは全く意味がない。こっちへ歩いてくる段階から、眉間に皺が寄っている。

 悠人と田所さんが背後に庇ってくれた。笑いながらだ。二人を中心にしてクルクル回って逃げたが、呆気なく捕まった。肩を引かれて抱き寄せられた。そして、自然と向かい合わせになり、両腕が回された。軽く抱きしめられている感じだ。こんな人通りのある外でされるのは、珍しいことだ。束縛がきつくて逃げ出したい時代のようだ。ただし今の黒崎は意地悪そうに笑っている。

「あの、黒崎さん?外だよ?」
「分かっている。お仕置きだ。恥ずかしいだろう」
「もちろんだよ。分かっているなら離してよ……」
「離さない。100数えるまでは」
「常務は休憩時間に入ったのよ。店を見てきます」
「お願いします」

 田所さんが去って行った。黒崎から囁かれた。現場で培ったアンテナを張っているから、自分よりも適任だと。役員が珍しいイメージだ。体制が変化し、ああいう人が上がって来たそうだ。副社長になれば口出しできる権限が多く、意外と悪くないと笑っている。

「よかった~。いつもの黒崎さんが戻ってきたね」
「お前のおかげだ。危なっかしい子を守るためだ。開発部に目を光らせてやる」
「考案レポートは家でやるだろ。ほとんど出て行かないもん」
「慣れればオフィスに勤務させてもいい」

 させてもいいのか。なんて強引な言いざまだ。黒崎らしくて安心するほどだ。そろそろ離してほしい。いくら休憩時間でも、社員だからマズイだろう。口で言っても聞かないから実力行使だ。喉が渇いたと口実をつけて離してもらった。
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