眠れる森の星空少年~あの日のキミ

夏目奈緖

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 17時半。

 大学の授業が終わり、これから早瀬との待ち合わせだ。京橋駅のそばにあるカフェで、珈琲を飲んできた。この店の前で約束をしている。今日買ってきたCDのジャケットを見ていると、目の前に車が停まった。

「おまたせ」
「今来たところだよーー」

 さっそく助手席に乗り込んだ。車内は綺麗に掃除されていて、鼻に付かない程度の芳香剤が置かれている。見た目も車内も清潔感に溢れている。早瀬の見た目も爽やかそうだ。癖のある人には見えない。 

「今日はドライブがてら、郊外の店で食べようと思っている。車酔いは大丈夫だったね?」
「うん。平気だよ。そんなに遠く?」 
「片道40分だ。道が混雑しているからだよ」 
「そうなんだ」 
「近くに海がある。星空を眺めるのが好きだって教えてくれたから、帰りに寄るよ」
  
 この間の食事の時に、好きなものを話した。俺の事だけを聞かれて、早瀬の話を聞いていない。知っているのは名前と職業、年齢だけだ。ペナルティーがいつまで続くのかは分からないが、一緒に過ごすなら知りたいと思った。 

「早瀬さんの話も聞かせてよ」 
「興味を持ってくれたんだね」
「違うよー。この間は、事情聴取されているみたいだったからだよ」
「それだけ悠人君に興味があるからだよ」 
「俺は男には興味がないよ。げえええっ」

 早瀬が信号待ちで俺の手を握り、この間のように眺め始めた。そして、指に出来たタコに触れた。ギターの弦を押さえるから、固くなっている。

「何か楽器をやっている?」
「うん。ギターを弾いているよ。今のバンドでは、ベースだよ」 
「へえ……、ジャンルは?」 
「ハードロックと、ヘヴィメタルだよ。オリジナルは、まだやっていないんだ。新しいバンドなんだ」
「僕もよく聴くよ。ヘヴィメタルの方が多い」
「ふうん。どのバンドが好きなの?」
「イングー、ハロウィズ。国内ならベテルギウスが好きだよ」
「俺も好きなバンドだよ。でも、ヘヴィメタルが好きな子が少ないから、寂しかったんだ」 
「そうだね。ヘビメタなんて好きそうに見えないのにねって、言われたことはないか?」
「あるよーー」
「どのジャンルでも同じ事が言える。興味がなくても、相手は会話の糸口にしている。どうせ知らないだろ?って思わずに、会話を楽しんでみるといい」

 思わず言葉に詰まった。言い当てられたからだ。ペースに呑まれていないのに、何を話せばいいのか分からなくなった。
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