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今夜の店に到着した。しっとりとした雰囲気だ。暖かな照明の下で、しゃぶしゃぶの肉と野菜を食べている。さっき食べた前菜は好きなもので嬉しかったのに、味が分からなかった。まだモヤモヤしているからだ。早瀬は赤ワインを飲み、俺はウーロン茶だ。なんとも子供っぽい。
「今日は変だぞ?」
「コンタクトレンズが……」
「トイレに行ってくる?」
「うん!」
そうか。この手があったか。トイレに行って気を取り直して席に戻ろう。そう思って立ち上ると、早瀬も立ち上がった。個室の障子を開けて出ようとしている。
「裕理さん?」
「一緒に行くよ。迷子になるかもしれないから」
「平気だよ。店員さんがいるから迷子にならないよ」
「いいから」
お互いに通路に出てしまった以上、止めるタイミングを逃した。促されて歩いて行くと、大きなガラスの壁から外の景色が見えた。この6階からは賑やかな街並みが見える。入口には花が飾られていて、その長い枝の先が、シャツの腕の部分に引っかかりそうになった。すると、さり気なく早瀬から腕を引かれて守られた。その後、トイレへ入ろうした。しかし、前に進まなかった。腕を引かれたままだからだ。
「裕理さん?」
「今夜は大人しいなあ」
「そんなことないよ」
「チャンスだ。ここでキスをするよ」
「え?ちょっと……、やめろよ」
ドン! 早瀬の胸を押した。最近はこんなことをしていないのに。 彼もそう思ったのだろう、眉を寄せていた。
「ごめん……」
「悪い子だね。反抗か……」
「え?」
早瀬の腕の力が強くなり、壁に体を押し付けられた。周りには人がいないし、大きな花が通路からの目隠しになっている。 押し付けている手の力が緩んだのは一瞬のことで、熱い息が頬に掛かった後、目尻にキスをされた。
「やだよ……」
「逃げるな。理由を聞かせてもらう」
なんて言おう? あの人は誰?どうして笑っていたんだよ?腕に触られていたのに。問いかけたいフレーズが思い浮かんでいるのに、言葉が出ない。
「コンタクトレンズが……」
「こら!そんなに目を潤ませておいて、渇いているわけがない。食べている時からそうだった。場所を変えようと思って、ここへ連れてきた」
「そっか……」
「向こうを見てごらん。楽しそうだぞ」
顎を持ち上げていた指先が、ガラス壁の方へ向けられた。ビルの灯りと車道を走る車の灯りしか見えない。
「どこ?」
「あのビルの隙間に広場が見えるだろう?テントが光っているのが見えるか?」
「うん」
その場所には大きな広場がある。今夜、何かあるのだろう。テントの上に『ミカカメラ・星空』という看板が出ている。有名なカメラのメーカーだ。
「ミカカメラがプラネタリウムを作った。今夜はオープン前のイベントをやっている。食べた後で行こう。縁日が出ているそうだ」
「うん!行きたい」
話題が変わってホッとした。でも、早瀬は息がかかるほど近くにいる。さらに顎を持ち上げられた。俺は返事をしたのに、離れるそぶりを見せない。
「今日は変だぞ?」
「コンタクトレンズが……」
「トイレに行ってくる?」
「うん!」
そうか。この手があったか。トイレに行って気を取り直して席に戻ろう。そう思って立ち上ると、早瀬も立ち上がった。個室の障子を開けて出ようとしている。
「裕理さん?」
「一緒に行くよ。迷子になるかもしれないから」
「平気だよ。店員さんがいるから迷子にならないよ」
「いいから」
お互いに通路に出てしまった以上、止めるタイミングを逃した。促されて歩いて行くと、大きなガラスの壁から外の景色が見えた。この6階からは賑やかな街並みが見える。入口には花が飾られていて、その長い枝の先が、シャツの腕の部分に引っかかりそうになった。すると、さり気なく早瀬から腕を引かれて守られた。その後、トイレへ入ろうした。しかし、前に進まなかった。腕を引かれたままだからだ。
「裕理さん?」
「今夜は大人しいなあ」
「そんなことないよ」
「チャンスだ。ここでキスをするよ」
「え?ちょっと……、やめろよ」
ドン! 早瀬の胸を押した。最近はこんなことをしていないのに。 彼もそう思ったのだろう、眉を寄せていた。
「ごめん……」
「悪い子だね。反抗か……」
「え?」
早瀬の腕の力が強くなり、壁に体を押し付けられた。周りには人がいないし、大きな花が通路からの目隠しになっている。 押し付けている手の力が緩んだのは一瞬のことで、熱い息が頬に掛かった後、目尻にキスをされた。
「やだよ……」
「逃げるな。理由を聞かせてもらう」
なんて言おう? あの人は誰?どうして笑っていたんだよ?腕に触られていたのに。問いかけたいフレーズが思い浮かんでいるのに、言葉が出ない。
「コンタクトレンズが……」
「こら!そんなに目を潤ませておいて、渇いているわけがない。食べている時からそうだった。場所を変えようと思って、ここへ連れてきた」
「そっか……」
「向こうを見てごらん。楽しそうだぞ」
顎を持ち上げていた指先が、ガラス壁の方へ向けられた。ビルの灯りと車道を走る車の灯りしか見えない。
「どこ?」
「あのビルの隙間に広場が見えるだろう?テントが光っているのが見えるか?」
「うん」
その場所には大きな広場がある。今夜、何かあるのだろう。テントの上に『ミカカメラ・星空』という看板が出ている。有名なカメラのメーカーだ。
「ミカカメラがプラネタリウムを作った。今夜はオープン前のイベントをやっている。食べた後で行こう。縁日が出ているそうだ」
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