眠れる森の星空少年~あの日のキミ

夏目奈緖

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 俺達は無言になった。せっかくプラネタリウムの話題が出たというのに。何を話せば良いのか分からない。駅で見かけた人は誰なのかと聞きたい。距離が近かった理由も。しかし、言い出せない。すると、早瀬が眉をひそめた。

「行きたくないのか?」
「行きたいよ」
「だったら言うことを聞いてもらう。どうしてそんな顔をしているんだ?」
「あ、えっと……」
「言ってごらん。奥村君の関係なのか?」 
「違うよ」
「悠人、好きだ」
「ん……」

 耳元で囁かれて、その低い声に背中がゾクっとした。心臓の鼓動も早い。早瀬のことを見上げると、寂しそうな目をしていた。こんな顔をさせるつもりはなかったのに。だから、思い切って聞いてみることにした。

「京橋駅で一緒にいた人って、誰?」 
「ん?」 
「女の人と話していたのを見たんだよ」
「ああー」
「忘れるぐらい、いつものことなわけ?腕に触られていたのに、笑っていたよ」 
「そこまで見ていたのか。どうして声を掛けて来なかった?」 
「だって、邪魔だと思ったから。仕事の話かもって」
「それなら終わった後に声を掛けて来ればいい」

 早瀬がため息をついた後、笑い声を立てた。馬鹿にされた気がして、胸を叩いて押しのけた。それでも笑い続けている。だんだん馬鹿らしくなってきて、叩くのをやめた。 

「知っていたよ」 
「はああ?」 
「悠人君を見かけたんだ。反対方向を歩き始めたから、回り込んで脅かしてやろうとしたら、会社の人に会った。デートの誘いを受けた。もちろん断った」 
「そうだったんだ。なんで触られていたんだよ?」 
「それは分からない。悠人君がいたから『あの子が恋人だ』って言ったら、理解してもらえた」
 「そっか……」 

 胸のつっかえが取れてきた。早瀬が断ったならそれでいい。そう思っていると、また抱き寄せられた。妬いてもらえて嬉しかったが、君のことを悲しませたから喜べないと言って、謝られた。

「裕理さん……」
「どうした?」
「俺、慣れないといけないね!裕理さんがモテるのは、これからも変わらないと思うからさ」
「そんなにモテていないよ。でも、会社で君とのことを広まるようにする」
「いいよ。話題の主にならなくてもさ。変な噂する人がいるだろーー」
「だめだ。君と付き合っていると言う。黒崎さんみたいに、デジタルフォトフレームに君の写真を飾ろうかな」
「恥ずかしいよ」
「悠人君。君の写真が三枚ある。この間の温泉施設で撮った分だ。飾っても良いか?」
「恥ずかしいってば!」
「なんだ?さっきまで泣いていたくせに」
「うん……」
「駅でのことは何でも無い。何回かデートに誘われていたけど、断っていた。今は君がいるから説明できる。いいだろう?飾っても」
「NOって言っても飾るんだろ」
「そのつもりだ。さあ、ご飯を食べよう。まだ野菜がたくさん残っているぞーー」
「うん」

 俺は素直に頷いた。元気も出た。早瀬の方も元気が出たようで良かった。

 席に戻った後、早瀬が言っていた。大学内はオフィスから見えないのだと。俺の方こそ、オフィスにいる早瀬のことが見えない。だからこそ、何でも話す約束をした。俺はすっきりして、苦手な野菜もたくさん食べられた。そして、プラネタリウムのイベントに出かけた。
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