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マリーズカフェに入り、奥のテーブル席に座った。いつもは壁沿いのカウンター席にするが、電話で話したい相手がいるから、この席を選んだ。
スマホを取り出して、『久田達弘』の連絡先をタップした。何時なら電話で話せるのか、昨夜ラインで聞いておいた。ちょうどその時間になったところだ。何度目かのコールで父と電話が繋がった。
「お父さん、おはよう」
「おはよう。書類を受け取ったか?」
「昨日受け取ったよ。今月末に退寮するよ。引っ越し先を探しているよ。決まったら連絡するから」
「そうか。お前の方から詳しいことを話すのは珍しいな」
「いつまでも子供じゃないよ」
こうして父と普通に会話が出来ていることが驚きだ。一か月前まで考えられなかった。苛立ちも悲しさも起きない。
「勉強の方はどうだ?夏樹君とは……」
「仲良くやっているよ。これだけは言っておくよ。俺は相手のステータスで友達を選ばない。夏樹がいい子だから友達なんだ」
「ほう……、はっきり言うようになったな」
「お父さんの息子だからだよ」
これから大事な話を始める。本当に子供だった自分と別れるための一歩だ。今まで避けてきた話題を話すと前置きすると、父が口ごもった。両親にはお互いに好きな人がいるはずだという話題だ。その状態で離婚をしないのは、社会的な体裁を気にしてのことだ。息子としてはケジメをつけてほしい。
「お父さん。お母さんとは連絡を取っていないだろ?」
「すれ違っている」
「それは言い訳だよ」
「そうだ……」
「お母さんには好きな人がいる。半同棲状態と思う。電話をかけたとき、男の人の声がしたから。土曜日の午前中だったよ」
「知っている……」
「お父さんにも好きな人がいるよね?30歳ぐらいの人。虎ノ門駅を使っている人だよ」
「知っていたのか……」
「このカフェで見かけているよ。お父さんと電話しているのを聞いたことがあるんだ。『久田法律事務所』『達弘さん』って言葉が出てきたから分かったんだ。誰が聞いているかも分からないのに。名前を出さないように言ってあげたら?」
「話したのか?」
「ううん。カレシの息子ですなんて自己紹介されても困るだろ?ちゃんと場を設けてほしい。どこでもいいよ。高級懐石でも、ショッピングモールのフードコートでもね。気に入った場所でいいから」
「認めてくれるのか?」
「相手の人、子供が出来たんだよね?検診のことを話しているのを聞いたんだ。聖加世病院へかかっているって」
「そうだ……」
「子供を堕せなんて言っていないよね?『無事に生まれてから結婚する』なんて言っていないよね?20年前の、どこかのふざけた男みたいにさ……」
「……」
「ちゃんと離婚して、その人と結婚しろよ。男としてケジメを付けろよ!」
これで言いたいことは終わった。じゃあ。そう言って電話を切ろうとすると、引き止められた。
「悠人、待ってくれ」
「どうしたの?」
「すまなかった」
「俺には謝らなくていいよ。お母さんに謝ってよ」
「話し合う……」
「うん。音楽のことは、今日は聞かないんだね?」
「反対しているのは変わらない」
「お父さん。大学へ通わせてくれてありがとう。4年間、しっかり勉強する。将来のことを決めるまで時間が欲しい。勉強も音楽も頑張るから、認めてほしい。お父さんの再婚を認めることが交換条件だよ」
「それとこれとは別だ」
「8月18日に、ミライ・アマチュアバンドコンテストがある。ベースで参加するんだ。交換条件を呑むなら見に来てほしい」
「バンド名は?念のためだ……」
「”IRON ANGEL”だよ。詳しい時間はラインで送るから。じゃあね」
プツ。話を切った直後、早瀬へラインを送った。ちゃんと言えたよ、と。
スマホを取り出して、『久田達弘』の連絡先をタップした。何時なら電話で話せるのか、昨夜ラインで聞いておいた。ちょうどその時間になったところだ。何度目かのコールで父と電話が繋がった。
「お父さん、おはよう」
「おはよう。書類を受け取ったか?」
「昨日受け取ったよ。今月末に退寮するよ。引っ越し先を探しているよ。決まったら連絡するから」
「そうか。お前の方から詳しいことを話すのは珍しいな」
「いつまでも子供じゃないよ」
こうして父と普通に会話が出来ていることが驚きだ。一か月前まで考えられなかった。苛立ちも悲しさも起きない。
「勉強の方はどうだ?夏樹君とは……」
「仲良くやっているよ。これだけは言っておくよ。俺は相手のステータスで友達を選ばない。夏樹がいい子だから友達なんだ」
「ほう……、はっきり言うようになったな」
「お父さんの息子だからだよ」
これから大事な話を始める。本当に子供だった自分と別れるための一歩だ。今まで避けてきた話題を話すと前置きすると、父が口ごもった。両親にはお互いに好きな人がいるはずだという話題だ。その状態で離婚をしないのは、社会的な体裁を気にしてのことだ。息子としてはケジメをつけてほしい。
「お父さん。お母さんとは連絡を取っていないだろ?」
「すれ違っている」
「それは言い訳だよ」
「そうだ……」
「お母さんには好きな人がいる。半同棲状態と思う。電話をかけたとき、男の人の声がしたから。土曜日の午前中だったよ」
「知っている……」
「お父さんにも好きな人がいるよね?30歳ぐらいの人。虎ノ門駅を使っている人だよ」
「知っていたのか……」
「このカフェで見かけているよ。お父さんと電話しているのを聞いたことがあるんだ。『久田法律事務所』『達弘さん』って言葉が出てきたから分かったんだ。誰が聞いているかも分からないのに。名前を出さないように言ってあげたら?」
「話したのか?」
「ううん。カレシの息子ですなんて自己紹介されても困るだろ?ちゃんと場を設けてほしい。どこでもいいよ。高級懐石でも、ショッピングモールのフードコートでもね。気に入った場所でいいから」
「認めてくれるのか?」
「相手の人、子供が出来たんだよね?検診のことを話しているのを聞いたんだ。聖加世病院へかかっているって」
「そうだ……」
「子供を堕せなんて言っていないよね?『無事に生まれてから結婚する』なんて言っていないよね?20年前の、どこかのふざけた男みたいにさ……」
「……」
「ちゃんと離婚して、その人と結婚しろよ。男としてケジメを付けろよ!」
これで言いたいことは終わった。じゃあ。そう言って電話を切ろうとすると、引き止められた。
「悠人、待ってくれ」
「どうしたの?」
「すまなかった」
「俺には謝らなくていいよ。お母さんに謝ってよ」
「話し合う……」
「うん。音楽のことは、今日は聞かないんだね?」
「反対しているのは変わらない」
「お父さん。大学へ通わせてくれてありがとう。4年間、しっかり勉強する。将来のことを決めるまで時間が欲しい。勉強も音楽も頑張るから、認めてほしい。お父さんの再婚を認めることが交換条件だよ」
「それとこれとは別だ」
「8月18日に、ミライ・アマチュアバンドコンテストがある。ベースで参加するんだ。交換条件を呑むなら見に来てほしい」
「バンド名は?念のためだ……」
「”IRON ANGEL”だよ。詳しい時間はラインで送るから。じゃあね」
プツ。話を切った直後、早瀬へラインを送った。ちゃんと言えたよ、と。
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