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17時半。
本社ビルの一階にあるカフェで、枝川さんを待っている。シャルロットキッチンという名前の店だ。てっきり社員が入っているかと思いきや、観光客に見える人が多かった。旅行雑誌を広げているからだ。カフェモカを飲みながら、大きなガラス窓からの景色を眺めた。見事にオフィスビルしか建っていない。
(この辺って観光スポットがあったっけ?)
スマホで周辺を検索しても見当たらない。ふと、この店のことが載っている気がした。その予感は当たり、黒崎製菓の直営店だと知った。商品を使ったスイーツを展開しているという。さっそくメニューを手に取った。
(へえ。シャルロットプレートか。ジュリエットもある。カカオ85%のチョコを使用。95%じゃないのか。売っているやつみたいに……。このために作ったのかな?枝川さんが知っているかな?メモをしよう……)
好奇心が湧いてきた。目指す会社なら知っておくべきだ。情熱だけでは希望は通らないと聞いたからだ。これは両親から教わったことだ。
あっという間に8個の質問が出来た。食事をしながら教えてもらおう。
(でも……。仕事が終わったのに、そんな話をしたくないよね。それに何を話そうかな?あ……お兄ちゃんからラインだ……)
この近くに音楽スタジオがあるため、通りかかることが多い。様子を見に行こうか?なんて書いてある。半分は嫌がらせだ。
久弥には今回のことを話していない。クリア後にしたかった。枝川さんと食事に行く話はした。初日のことや、社会人との会話のポイントが聞きたかった。失敗を恐れてのことだ。そこまで気負うなと返って来た。向こうから誘ってきたからだと言っていた。
(なになに?どこの店に行くかって?そっか、話してなかった……)
昼休憩のときに、枝川さんから、カフェの後で食事に行こうと誘われた。ここから徒歩で10分の、リストランテ・サローネだ。イタリアンだと聞いた。大学生も見かける店だから、臆することがないだろうとも言っていた。久弥にそう返事をすると、電話が掛かってきた。
「もしもし。どうしたの?」
『その店は、半個室だ。仕切りが高めで人目につきにくい。ドアがないから安心感はあるけど、デート目的だぞ。確信した』
「そうかな?話し相手だって……」
『なんで大学生を誘うんだ?まあ、悪い人じゃないそうだ。男が恋愛対象で、お前もそうだ。いい感じになってもいいけど……』
「知っている人なの?」
『会ったことはない。評判だけ聞いた』
「そっか。裕理君に聞いたの?」
『黒崎常務さんに連絡を取った』
「知り合いだったの?」
『ああ。俺のサエキ酒造時代にお世話になった人だ。……枝川さんの人となりを聞いたうえで心配ないと判断した。仕事は真面目で人当たりもいい。ただし気が多いようだ。恋人が欲しくてアチコチに声をかけるから、相手にされないらしいぞ。本命からは……』
(そうなのか。気が多い人は嫌だな。誤解かもしれないけど……。あれ?俺には関係ないのに……)
少しがっかりした。初日にロビーで声をかけてもらったのは、それが目的だったのか?と。最初は仕事としてでも、親切にされたのはそういうことか?とも。けっこうグイグイと話しかけられたし、逃げ道を塞がれた気もする。
(考え過ぎかな……。力になってもらえたんだ。お礼がしたい……)
「お兄ちゃん。今回のことでトラブルが起きたんだよ。クリア済だよ。話そうと思ってて……。枝川さんからアドバイスをもらって、裕理君からもいい話が聞けた。あと……、黒崎君っていう子、如月君とか。影響された子がいるんだ。いいことがいっぱいあった。だから……、疑いたくない」
『へえ……。ちょっと話し方が変わったな。いい経験だな。ただなあ……、疑う意味じゃない。好きになってもらうのはいいことだ。ただし、お前は流されるタイプだから心配してる』
「言い返せないよ……」
『もし出来るなら、”お気楽亭” にしてもらえ。そこから徒歩で10分もかからない。知っているとは思う。和食系で、居酒屋よりはデート向けだ。仕切りは座って頭が出る程度の高さだ。……今日は寒いから、お兄ちゃんが言ってた店に行きたいなって言え』
「そんな言い方があるのかー。イタリアンも食べたいけど……」
もしかするとデートかも知れないのに、俺はなんてのんきなんだろう。
本社ビルの一階にあるカフェで、枝川さんを待っている。シャルロットキッチンという名前の店だ。てっきり社員が入っているかと思いきや、観光客に見える人が多かった。旅行雑誌を広げているからだ。カフェモカを飲みながら、大きなガラス窓からの景色を眺めた。見事にオフィスビルしか建っていない。
(この辺って観光スポットがあったっけ?)
スマホで周辺を検索しても見当たらない。ふと、この店のことが載っている気がした。その予感は当たり、黒崎製菓の直営店だと知った。商品を使ったスイーツを展開しているという。さっそくメニューを手に取った。
(へえ。シャルロットプレートか。ジュリエットもある。カカオ85%のチョコを使用。95%じゃないのか。売っているやつみたいに……。このために作ったのかな?枝川さんが知っているかな?メモをしよう……)
好奇心が湧いてきた。目指す会社なら知っておくべきだ。情熱だけでは希望は通らないと聞いたからだ。これは両親から教わったことだ。
あっという間に8個の質問が出来た。食事をしながら教えてもらおう。
(でも……。仕事が終わったのに、そんな話をしたくないよね。それに何を話そうかな?あ……お兄ちゃんからラインだ……)
この近くに音楽スタジオがあるため、通りかかることが多い。様子を見に行こうか?なんて書いてある。半分は嫌がらせだ。
久弥には今回のことを話していない。クリア後にしたかった。枝川さんと食事に行く話はした。初日のことや、社会人との会話のポイントが聞きたかった。失敗を恐れてのことだ。そこまで気負うなと返って来た。向こうから誘ってきたからだと言っていた。
(なになに?どこの店に行くかって?そっか、話してなかった……)
昼休憩のときに、枝川さんから、カフェの後で食事に行こうと誘われた。ここから徒歩で10分の、リストランテ・サローネだ。イタリアンだと聞いた。大学生も見かける店だから、臆することがないだろうとも言っていた。久弥にそう返事をすると、電話が掛かってきた。
「もしもし。どうしたの?」
『その店は、半個室だ。仕切りが高めで人目につきにくい。ドアがないから安心感はあるけど、デート目的だぞ。確信した』
「そうかな?話し相手だって……」
『なんで大学生を誘うんだ?まあ、悪い人じゃないそうだ。男が恋愛対象で、お前もそうだ。いい感じになってもいいけど……』
「知っている人なの?」
『会ったことはない。評判だけ聞いた』
「そっか。裕理君に聞いたの?」
『黒崎常務さんに連絡を取った』
「知り合いだったの?」
『ああ。俺のサエキ酒造時代にお世話になった人だ。……枝川さんの人となりを聞いたうえで心配ないと判断した。仕事は真面目で人当たりもいい。ただし気が多いようだ。恋人が欲しくてアチコチに声をかけるから、相手にされないらしいぞ。本命からは……』
(そうなのか。気が多い人は嫌だな。誤解かもしれないけど……。あれ?俺には関係ないのに……)
少しがっかりした。初日にロビーで声をかけてもらったのは、それが目的だったのか?と。最初は仕事としてでも、親切にされたのはそういうことか?とも。けっこうグイグイと話しかけられたし、逃げ道を塞がれた気もする。
(考え過ぎかな……。力になってもらえたんだ。お礼がしたい……)
「お兄ちゃん。今回のことでトラブルが起きたんだよ。クリア済だよ。話そうと思ってて……。枝川さんからアドバイスをもらって、裕理君からもいい話が聞けた。あと……、黒崎君っていう子、如月君とか。影響された子がいるんだ。いいことがいっぱいあった。だから……、疑いたくない」
『へえ……。ちょっと話し方が変わったな。いい経験だな。ただなあ……、疑う意味じゃない。好きになってもらうのはいいことだ。ただし、お前は流されるタイプだから心配してる』
「言い返せないよ……」
『もし出来るなら、”お気楽亭” にしてもらえ。そこから徒歩で10分もかからない。知っているとは思う。和食系で、居酒屋よりはデート向けだ。仕切りは座って頭が出る程度の高さだ。……今日は寒いから、お兄ちゃんが言ってた店に行きたいなって言え』
「そんな言い方があるのかー。イタリアンも食べたいけど……」
もしかするとデートかも知れないのに、俺はなんてのんきなんだろう。
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