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すると、久弥が言った。美味しい物を食べてこいと。だからそんなに警戒することは無いと思った。危ないなら、帰ってこいと言われるからだ。
「店を変えてもらってもいいのかな?」
『まだ店を予約していないなら、OKだと思うぞ?……裕理のことは黙っておけ。幼馴染みだってことはな。態度を変えられても困る』
「うん。それは納得できる。……あ、枝川さんだ!ありがとう。切るね」
『お、おい。乗り気なのか……』
電話を切った。久弥が何か言っていた気がする。
ガラス壁の向こうから、枝川さんが歩いてきた。俺のことに気づき、軽く手を振ってくれた。こっちも振り返すと、店内に入ってきた。ざっくばらんな雰囲気だと思った。だから警戒なんかしなくても良いと思った。
枝川さんが席に座った。少し休憩してから店に行くという。プライベートとして向かう合うと、久弥に似ているからホッとした。
「おまたせ。珈琲しか飲んでいないのか」
「お腹いっぱいになるからです」
そうか。そう軽く頷いたところで、枝川さんが注文した珈琲が運ばれて来た。すると、女性店員さんが、枝川さんへ話しかけた。お互いが笑顔になっている。常連なら普通のことだろうし、社会人はいつだってそうだろう。
(俺もああやって話したいなあ。長いな……)
挨拶程度かと思っていたのに、けっこう長く話している。
ーー最近は来られていなかったですね。お忙しかったですか?たまたまだよ。二号店のオープン計画で……。近くのお店でお見掛けしましたよ。そうだったんだ?声をかけてほしかったのに。大勢でいらしたから。ええ?いつのことだろう?今月の始めです。
そういう会話を聞きながら、聞いていないふりをした。大人の中にいるときのコツだ。いつの間にか身についている。すると、彼らの会話が終わろうとしていた。そのタイミングで顔を上げた。
「さすがに声をかけづらいね。今度から掛けてね。気兼ねしなくていいから」
「はい。……失礼しました」
店員さんとの話が長いなと思いつつも、キッチンに戻っていく姿に笑顔で会釈した。でも、変な視線を向けられている気がする。俺も変な顔をしていたのだろうか。すると、枝川さんから笑われていた。
(失礼だったかな……)
「ごめんね。置いてけぼりにさせた。居心地が悪かっただろう」
「いえ。そんなことないです。お構いなく」
「お構いなくか……」
「え?」
「初日に戻ったね?昨日までは打ち解けてくれていたのに。どうして?」
「えーっと……」
(ちょっかいを掛けられたからだよ。ほかの参加者がいるのに……)
しかし、言いたいことを口にするのは失礼だ。気を遣って話しかけてもらったのはありがたかった。スタッフとしてフォローするのが仕事だったのだろう。先輩が後輩の面倒を見るように。大学の情報学科と同じだと思えばいい。でも、枝川さんからの質問が多くて疲れてきてしまった。こういう時は我慢するしか無い。
なるべく笑顔でいるようにすると、その顔をやめろと言われてしまった。取り繕っているのが分かったようだ。俺はなんだか腹が立った。苛立ちは良くない。それが分かっているのに、顔に出てしまったようだ。枝川さんが笑ったからだ。
「佐伯君。積極的に発言してみよう。何を言っても怒らない。ここで約束する」
「困ります……」
「どういう点で?」
「そうやって詰められるからです……」
「聞いているだけだよ」
「どうして聞くんですか?言いたくないこともありますから……」
「質問返しはルール違反。先に答えてからが基本だ」
「なんで……、あ……」
「言い返すなら、どうぞ」
(何でここまで言われるんだよ。普通に話しているだけなのに。仲良くなろうってしてるのに?)
「じゃあ答えます。今朝から話しかけられているからです。ほかの参加者よりも、ずっと多かった」
「迷惑だったのか?」
「いえ。それはないです。初日の帰りに ”線を引く” ”筋を通す” って言ったはずです。迷惑じゃないけど、困りました」
「ふうん」
枝川さんが笑い出した。嫌なものではないが、決して感じよくはない。試されている、そう気がした。だんだんと腹が立ってきた。いくら俺が年下でお世話になった立場でも、失礼だと思った。会話が成り立たない。
「俺からの答えは以上です」
「今度はこっちの番だ。急に態度を変えられるのは好きじゃない。どうして変えたんだ?」
「なんだよ!?同じことを質問するなよ!あ……」
(これは俺の方が失礼だ……)
あんたには関係ない。それを口にするのを止めた。言い争いになってしまうからだ。こんな人だとは思わなかった。自分が何か悪いことをしたのか?
「態度を変えたのは認めます。戸惑ったからです。線を引くと言ったのに、話しかけられたからです。困ったんです!人から見られて、特別扱いされているみたいだった。いい加減、初日に許してもらって、インターンシップに戻ったんだから」
「誰かに言われたのか?特別扱いって」
「いえ。言われていませんし、聞いてもいません。楽しく参加できました」
「それならいいじゃないか。誰の目を気にしているんだ?」
「それは……」
(誰の目だろう?O大のメンバー?縁を切るって決めたのに。今日は言い返した。それでも?どうして……)
頭の中がパニックだ。自分の考えていることが理解不能だ。
「誰のことが怖い?」
「一緒に参加した、O大のメンバー達のことです」
(違う気がする……。誰のことが怖いのかな……)
そう答えたものの、自分の中ではあやふやだ。今日はどうかしている。話のルート変更ばかりで逃げ道すら与えられない。
「店を変えてもらってもいいのかな?」
『まだ店を予約していないなら、OKだと思うぞ?……裕理のことは黙っておけ。幼馴染みだってことはな。態度を変えられても困る』
「うん。それは納得できる。……あ、枝川さんだ!ありがとう。切るね」
『お、おい。乗り気なのか……』
電話を切った。久弥が何か言っていた気がする。
ガラス壁の向こうから、枝川さんが歩いてきた。俺のことに気づき、軽く手を振ってくれた。こっちも振り返すと、店内に入ってきた。ざっくばらんな雰囲気だと思った。だから警戒なんかしなくても良いと思った。
枝川さんが席に座った。少し休憩してから店に行くという。プライベートとして向かう合うと、久弥に似ているからホッとした。
「おまたせ。珈琲しか飲んでいないのか」
「お腹いっぱいになるからです」
そうか。そう軽く頷いたところで、枝川さんが注文した珈琲が運ばれて来た。すると、女性店員さんが、枝川さんへ話しかけた。お互いが笑顔になっている。常連なら普通のことだろうし、社会人はいつだってそうだろう。
(俺もああやって話したいなあ。長いな……)
挨拶程度かと思っていたのに、けっこう長く話している。
ーー最近は来られていなかったですね。お忙しかったですか?たまたまだよ。二号店のオープン計画で……。近くのお店でお見掛けしましたよ。そうだったんだ?声をかけてほしかったのに。大勢でいらしたから。ええ?いつのことだろう?今月の始めです。
そういう会話を聞きながら、聞いていないふりをした。大人の中にいるときのコツだ。いつの間にか身についている。すると、彼らの会話が終わろうとしていた。そのタイミングで顔を上げた。
「さすがに声をかけづらいね。今度から掛けてね。気兼ねしなくていいから」
「はい。……失礼しました」
店員さんとの話が長いなと思いつつも、キッチンに戻っていく姿に笑顔で会釈した。でも、変な視線を向けられている気がする。俺も変な顔をしていたのだろうか。すると、枝川さんから笑われていた。
(失礼だったかな……)
「ごめんね。置いてけぼりにさせた。居心地が悪かっただろう」
「いえ。そんなことないです。お構いなく」
「お構いなくか……」
「え?」
「初日に戻ったね?昨日までは打ち解けてくれていたのに。どうして?」
「えーっと……」
(ちょっかいを掛けられたからだよ。ほかの参加者がいるのに……)
しかし、言いたいことを口にするのは失礼だ。気を遣って話しかけてもらったのはありがたかった。スタッフとしてフォローするのが仕事だったのだろう。先輩が後輩の面倒を見るように。大学の情報学科と同じだと思えばいい。でも、枝川さんからの質問が多くて疲れてきてしまった。こういう時は我慢するしか無い。
なるべく笑顔でいるようにすると、その顔をやめろと言われてしまった。取り繕っているのが分かったようだ。俺はなんだか腹が立った。苛立ちは良くない。それが分かっているのに、顔に出てしまったようだ。枝川さんが笑ったからだ。
「佐伯君。積極的に発言してみよう。何を言っても怒らない。ここで約束する」
「困ります……」
「どういう点で?」
「そうやって詰められるからです……」
「聞いているだけだよ」
「どうして聞くんですか?言いたくないこともありますから……」
「質問返しはルール違反。先に答えてからが基本だ」
「なんで……、あ……」
「言い返すなら、どうぞ」
(何でここまで言われるんだよ。普通に話しているだけなのに。仲良くなろうってしてるのに?)
「じゃあ答えます。今朝から話しかけられているからです。ほかの参加者よりも、ずっと多かった」
「迷惑だったのか?」
「いえ。それはないです。初日の帰りに ”線を引く” ”筋を通す” って言ったはずです。迷惑じゃないけど、困りました」
「ふうん」
枝川さんが笑い出した。嫌なものではないが、決して感じよくはない。試されている、そう気がした。だんだんと腹が立ってきた。いくら俺が年下でお世話になった立場でも、失礼だと思った。会話が成り立たない。
「俺からの答えは以上です」
「今度はこっちの番だ。急に態度を変えられるのは好きじゃない。どうして変えたんだ?」
「なんだよ!?同じことを質問するなよ!あ……」
(これは俺の方が失礼だ……)
あんたには関係ない。それを口にするのを止めた。言い争いになってしまうからだ。こんな人だとは思わなかった。自分が何か悪いことをしたのか?
「態度を変えたのは認めます。戸惑ったからです。線を引くと言ったのに、話しかけられたからです。困ったんです!人から見られて、特別扱いされているみたいだった。いい加減、初日に許してもらって、インターンシップに戻ったんだから」
「誰かに言われたのか?特別扱いって」
「いえ。言われていませんし、聞いてもいません。楽しく参加できました」
「それならいいじゃないか。誰の目を気にしているんだ?」
「それは……」
(誰の目だろう?O大のメンバー?縁を切るって決めたのに。今日は言い返した。それでも?どうして……)
頭の中がパニックだ。自分の考えていることが理解不能だ。
「誰のことが怖い?」
「一緒に参加した、O大のメンバー達のことです」
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