Radiate Crow~あの日の誘惑

夏目奈緖

文字の大きさ
62 / 91

7-2(枝川視点)

しおりを挟む
 12時半。

 黒崎製菓の営業企画部オフィスでは、一つの騒ぎが起きている。業務中は通常通りだったが、昼休み時間を迎えて、ある話題で持ちきりだ。この企画部内の、販促チームの社員が逮捕されたことが理由だ。

 早朝に部長以上が集まり、会議が行われた。それを受けて、チーフから課長クラスが社員へのフォローを行っている。噂とするなというのは無理だ。業務の滞りを食い止めている。

(理久、気を遣っていたな。理由を話しても良かったけど……)

 痴漢捕まった社員がいるから忙しくなった。そう言えば良かったのか。なるべくなら事情を話したくない。気分のいいものではないからだ。夜遅くまで対応するため、家族がいるものは話してあるだろう。

 捕まったのは白澤という、30代後半の社員だ。以前から評判が悪く、問題を起こしていた。今月末には支社への異動が決まっていた。このことで、会社にやり返したのだろう。出世競争にやぶれた腹いせだ。

 マーケティング推進室は落ち着き払っている。橋本室長と併せてチーフである自分も目を光らせているからだ。

 どの企業でも同じことだとだが、足の引っ張り合いを頻繁にやっている。実際に自分もされている。それをクリアしつつ、心が消耗している。

 ここから見えるのは、役員室と部長クラスのデスクだ。課長以上のミーティングが行われている。それが終わり次第、室長からの指示があるはずだ。その間に、俺は部下達に声をかけた。

「太市君。午後のミーティングは中止にする。来週の火曜日、午後に変更だ」
「はい。16時からの、開発メニューチームの打合せは……」
「当初の予定通りに進めてくれ。平田を見なかったか?」
「平田ですか、さっき販促チームの方へ……」
「そうか。すまない」

 ひと言断り、パソコンに視線を落とした。平田は4月まで販促チームに所属していた。新入社員時代には、白澤から面倒を見てもらっている。知らせを耳にした後、沈み込んでいた。

(今はフォローが出来ない。帰る頃にはできるかな……)

 モヤモヤした気分で業務を続けていると、早瀬から声がかかった。すぐに向かうと、黒崎が電話中だった。また何かあったのか?

「新しい問題は起きていない。頼みたいことがある。一階のロビーの受付へ、これを届けてほしい」
「かしこまりました。今回の対応策ですか。メールにしないんですか?」
「漏れ伝わるからだ。もう一つある。顧問弁護士がロビーに到着した。ここへ案内してくれ」
「承知しました。久田弁護士ですか?」
「今回は違う。桂川弁護士だ。受付そばのソファーで待ってもらっている」
「はい。今から向かいます」

 お馴染みの久田さんではなかった。今回から新しく、顧問弁護士が加わるそうだ。さっそくオフィスを出た。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺の推し♂が路頭に迷っていたので

木野 章
BL
️アフターストーリーは中途半端ですが、本編は完結しております(何処かでまた書き直すつもりです) どこにでも居る冴えない男 左江内 巨輝(さえない おおき)は 地下アイドルグループ『wedge stone』のメンバーである琥珀の熱烈なファンであった。 しかしある日、グループのメンバー数人が大炎上してしまい、その流れで解散となってしまった… 推しを失ってしまった左江内は抜け殻のように日々を過ごしていたのだが…???

回転木馬の音楽少年~あの日のキミ

夏目奈緖
BL
包容力ドS×心優しい大学生。甘々な二人。包容力のある攻に優しく包み込まれる。海のそばの音楽少年~あの日のキミの続編です。 久田悠人は大学一年生。そそっかしくてネガティブな性格が前向きになれればと、アマチュアバンドでギタリストをしている。恋人の早瀬裕理(31)とは年の差カップル。指輪を交換して結婚生活を迎えた。悠人がコンテストでの入賞等で注目され、レコード会社からの所属契約オファーを受ける。そして、不安に思う悠人のことを、かつてバンド活動をしていた早瀬に優しく包み込まれる。友人の夏樹とプロとして活躍するギタリスト・佐久弥のサポートを受け、未来に向かって歩き始めた。ネガティブな悠人と、意地っ張りの早瀬の、甘々なカップルのストーリー。 <作品時系列>「眠れる森の星空少年~あの日のキミ」→「海のそばの音楽少年~あの日のキミ」→本作「回転木馬の音楽少年~あの日のキミ」

泣き虫な俺と泣かせたいお前

ことわ子
BL
大学生の八次直生(やつぎすなお)と伊場凛乃介(いばりんのすけ)は幼馴染で腐れ縁。 アパートも隣同士で同じ大学に通っている。 直生にはある秘密があり、嫌々ながらも凛乃介を頼る日々を送っていた。 そんなある日、直生は凛乃介のある現場に遭遇する。

死ぬほど嫌いな上司と付き合いました

三宅スズ
BL
社会人3年目の皆川涼介(みながわりょうすけ)25歳。 皆川涼介の上司、瀧本樹(たきもといつき)28歳。 涼介はとにかく樹のことが苦手だし、嫌いだし、話すのも嫌だし、絶対に自分とは釣り合わないと思っていたが‥‥ 上司×部下BL

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

恋人はメリーゴーランド少年だった~永遠の誓い編

夏目奈緖
BL
「恋人はメリーゴーランド少年だった」続編です。溺愛ドS社長×高校生。恋人同士になった二人の同棲物語。束縛と独占欲。。夏樹と黒崎は恋人同士。夏樹は友人からストーカー行為を受け、車へ押し込まれようとした際に怪我を負った。夏樹のことを守れずに悔やんだ黒崎は、二度と傷つけさせないと決心し、夏樹と同棲を始める。その結果、束縛と独占欲を向けるようになった。黒崎家という古い体質の家に生まれ、愛情を感じずに育った黒崎。結びつきの強い家庭環境で育った夏樹。お互いの価値観のすれ違いを経験し、お互いのトラウマを解消するストーリー。

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

ミルクと砂糖は?

もにもに子
BL
瀬川は大学三年生。学費と生活費を稼ぐために始めたカフェのアルバイトは、思いのほか心地よい日々だった。ある日、スーツ姿の男性が来店する。落ち着いた物腰と柔らかな笑顔を見せるその人は、どうやら常連らしい。「アイスコーヒーを」と注文を受け、「ミルクと砂糖は?」と尋ねると、軽く口元を緩め「いつもと同じで」と返ってきた――それが久我との最初の会話だった。これは、カフェで交わした小さなやりとりから始まる、静かで甘い恋の物語。

処理中です...