青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 俺は心臓が弱いから、黒崎にも、周りの人達にも心配をかけている。ステージで歌った後は倒れ込んでいたが、それが無くなってきた。体力がついたし、身体が慣れてきたのだと思う。ステージでは大量の汗をかく。聖河さんがステージ脇に待機していて、汗を拭きながら、俺の診察をしてくれる。そして、メンバーの体調管理もしてくれている。色んな人に支えられているから、倒れるわけにはいかないという気持ちが、俺を立たせているのだと思う。

「黒崎さん。束縛がマシになってきたかな?ううん。そんなことないか……」

 俺が高校生の時は、ラインをする相手を決められていた。同じクラスの限られた子だけだった。今は違う。仕事の付き合いや友人関係というものがあり、サポートしてくれているぐらいだ。その代わり、黒崎に一日4回のラインを送ることは忘れてはならなくて、ラインや電話の相手も話す約束をしている。これを束縛といえばそうなるが、実際に助けられているから、全てがそうとは言い切れなくなっている。昔は束縛のきつさに倒れ込んだこともあった。

 さあ、大学のレポート課題をやろうと決めた。惑星環境学科に通学するのは、あともう少しだ。大学院に進む生徒がいる中、俺は卒業を選んだ。本当はもっと研究していたいなんて贅沢だろうか。しかし、俺には音楽の仕事と黒崎製菓の仕事がある。卒業後、音楽の方はスケジュールを増やす。同じバンドメンバーの悠人も卒業を選び、音楽一本になる。

「あ、いけない!雨が降ってきた~」

 リビングのテラス窓が雨粒で濡れている。サーーーッと音が立っている。うちは洗濯物をなるべく外干しをしているから、天気予報はいつも見ている。晴れの予報だったのに。庭には出ないという約束を破ることになる。黒崎がいれば、一緒に取り込んでくれる。今は一人だ。後でラインで知らせることにした。

 テラス窓を開いた。すぐそばに洗濯物が掛かっている。スリッパを履いて、気を付けてテラスに立った。そして、全ての洗濯物を取り込んだ。そんなに濡れていなかった。

「良かった~。室内干しにしておこうかな?」

 こういう時のために、室内干し用のグッズを買ってある。それを取り出して、洗濯物を掛けた。乾燥機を使えば楽だが、俺は太陽と風で乾かしたい。さっき転べば、乾燥機にしろと黒崎から言われるところだった。扇風機を持って来て、洗濯物に当たるようにした。ほとんど乾いているから、夕方までには乾くだろう。

「さあ、ラインを入れようっと。『雨が降ってきたから、洗濯物を取り込んだよ。帰りは気を付けて帰ってきてね』送信」

 ラインを送った後、レポート課題の続きを始めた。すると、アンの足音が聞こえてきた。カチャカチャと爪の音が一カ所からしている。何かやっているのだろう。すぐに立ち上がってキッチンの方に行くと、カウンターの上に置いてあった梱包材のプチプチを見つけていて、取りたがっていた。これを渡すと、掃除が大変になる。粉々になってしまう。食べてもいけない。

「アン。これはだめだよ。見えるようになっていたのがいけなかったね。ごめんね。代わりにこれで我慢してよ」

 こういう時の為に、ストックしてある犬用のオモチャがある。リビングの棚の引き出しから、ハンバーガーの形の人形を取り出した。すると、アンが走ってきて、パクッと咥えた。尻尾も振っている。これが気に入ったようだ。

「良かった~。まだあるからね。あ、気づかれそう……」

 慌てて引き出しを閉めた。黒崎が買ってきてくれたオモチャだ。アンが喜ぶと思って、色んな物がある。アンは黒崎のことが大好きだ。世話をしているのは俺の方が多いのに。俺が叱る時があるからだろう。

「ふん。リンゴを食べさせているのは俺なのになあ。あ、ラインだ……」

 するとその時だ。ラインが入った。悠人からだった。新しい楽曲を作曲したから、歌詞を書いてくれとある。新しいバンドで使う楽曲になる。
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