青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 この光景を見て、黒崎はどう思うだろう。彼は今、リビングにいて、みんなと話している。お義父さんが早瀬さんにドイツに行かないのか?と言い出すものだから、聖河さんがやんわりと止めているのを見つめた。黒崎も止めている。晴海さんは静観しているようだ。しかし、何度も聞き始めたら、さすがに止め始める。そして、止め始めた。

「あんたなあ……。ドイツは遠い。そんなに頻繁に行ける場所じゃないだろう。こっちに仕事だってある。悠人君にもだ」
「航空機を使って15時間の空の旅だ。気晴らしに良いんじゃないか?ああ。怖い。言うのをやめるよ。はははは」

 晴海さんから止められたから、お義父さんがドイツ行きの話題をやめた。みんな引きつった笑い声を出している。お義父さんは最初は難色を示していた。それが本心だ。しかし、冗談を言いたかったのか、その話題を出したようだ。ユーリーの熱心な様に心を動かされたのもあると思う。一貴さんと二葉も、おじいちゃん、やめておけと言っているのを見た。すると、黒崎がユーリーの隣に腰掛けた。彼は今、リビングに移動している。大成とノアも居る。

「ユーリー。カステラは全部食べたのか?」
「ああ、頂いたよ。特に中身が美味しかった。しっとりしていて……。ああ、黄色い場所だ。言葉がおぼつかないよ。だから裕理の説得が叶わない……」
「やめておけ。困っている。悠人君がだ」

 黒崎がそう言って悠人の方を見ると、悠人が首を横に振って返事を返した。

「俺は平気です!裕理さんの大切なことですから……」

 悠人がユーリーの方を見て、ペコッと頭を下げると、早瀬さんが悠人のことを止めているのを見て、俺も止めた。

「悠人。いいから座っておけ。隆さん、ここにもカステラが余っています。どうですか?おかわりは……」
「ああ、頂くよ。ああ、美味しい。随分とたくさんあるんだね……」

 お義父さんがカステラを食べた。近所に住んでいる安斎さんのご主人から、何箱も貰った。親戚が大量に送ってきたそうで、夫婦2人だけでは食べきれないからと、我が家に持って来てくれたところだった。

 床にはその時の段ボールが置いてあり、そこには、まだ未開封のカステラの箱がある。冷やしても美味しいという話で、ついさっき、3箱を冷蔵庫に入れたばかりだ。帰ったときの俺のオヤツにしたいからだ。

「お義父さーん。安斎さんからもらったんだよ~。お返しを考えないとねえ……」
「黒崎製菓のドレッシングの詰め合わせセットはどうだ?柑橘系の味が好みだと聞いていただろう」
「そうだね~。そうだ!TDDのコンサートDVDも観てくれたんだよ。ヴィジブルレイのもだよ~」
「そうだったのか。悪いなあ。もっと他にもないだろうか。寒くなってきたから、鍋セットがいいだろうか……」

 お義父さんがそう言うと、黒崎がもう考えてあるのだと言った。そうなのかと、お義父さんが振り向き、ニコッと微笑んだ。

「黒崎製菓の菓子の詰め合わせを用意する。鍋は酒にしたい。純米吟醸の美味いものがある。サエキ酒造から出ているやつだ……」
「それはいいね!安斎さんのご主人は、お酒が好きなんだって言っていたんだ~」

 みんなで腹ごしらえをしたところで、ユーリーから、今日の心霊スポットの話題が出された。ネットと口コミで調査済みということだ。その口コミとは、向かいに住んでいる佳代子さんと安斎さんの旦那さんだ。ここから1時間半、車で走った場所にある国道沿いのビニールハウスが並んだ道路とは、有名な心霊スポットだということだった。

 最初、俺がローザーさんのお弟子さんであるミカさんから話を聞いたときは、下半身だけ浮かんだようになっている人の姿を見たときは、そこが心霊スポットだとは知らなかったそうだ。そして、有名な場所だとは知らなくて、今になって恐ろしく感じるようになってしまったそうだ。俺もそうだ。

 近くに広いコインパーキングがあり、沢山の車を停められることも調査済みだということだ。そこで、俺はあることに気がついた。俺達は車にいて、彼一人がビニールハウスのそばに佇み、オバケが出るのを待つのだと思っていたら、一緒にビニールハウスのそばに行くという話になっていることに。
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