青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 午前0時半。

 今から一貴さんを大勢で迎えに行くところだ。隣を歩いているのは、早瀬さんと悠人だ。オバケは真っ暗なところで出るのかと思えば、そうでもないと知り、意外だと思ったという話をしている。

 一貴さんはここに着いた時、悲鳴を上げていた。ビニールハウスのそばに向かっている道中でも肩を叩かれたのだと、お義父さんから聞いてある。そんなに怖い思いをしたのに、一人で散歩に行ったのが意外だと思った。ユリウスがいるからだろうか。飼うことになって良かったと、心から思っている。

 それは俺達全員の思いだ。偏屈な性格をしている一貴さんが、優しくなったからだという。最初から優しい人だとは感じていた。しかし、ユリウスが来る前と後では大違いだと、お義父さんが言っていた。会社でも柔和になって好かれているそうだ。そして、たまに失敗して慌てて困っている姿に、なんて愛嬌がある人なんだと受け取られているそうだ。オフィスにもユリウスを連れて行っているから、社員さんからおやつの差し入れがあるという。フェレット用のビスケットだ。味はフェレットフードと同じらしいが、食感が違うせいか、よく食べると一貴さんが言っていた。そして、困ってもいた。それしか食べなくなったという。

「ユリウスのおやつが充実しているんだ。カズ兄さんが困っているよ。それしか食べなくなったんだって……。でも、みんなの気持ちが嬉しくてさ、ユリウスもよく食べるし、フードだしって……」
「美味しいんだろうね。島川さんの手作りフードは不評なのか?前はよく食べているって聞いたことがあるんだけど……」
「うん。そうなんだよ~。俺と似ているんだ。おやつの形にしたら、よく食べるなんて……。あ、見つけたよ!あれはユリウスじゃないかな……」

 遠くの方に人影が見えた。一貴さんだ。姿が見ることができて、ホッとした。46歳という立派な大人なのだが、たまに子供みたいになるから困ることがある。本人も困って対処が出来ないことが起きてしまう。周りに誰も居ないときには、プラセルコーポレーションの島川社長の姿になり、演じて、乗り切っていくと聞いている。しかし、仕事から離れたらそうでもなくて、俺達を困らせる。今もそうかもしれない。一貴さんのことを引っ張るようにしてユリウスが先に走り、その後ろを一貴さんが走って来ている。

 ハーネスはどこにあるのだろう。たしか、ここに着いたときには付けていたのに。とにかくユリウスが一生懸命に、こっちに向かって走っている。何かあったのだろう。彼も困らされているのかも知れない。はあはあと息をしながら、一貴さんが追いついた。

「カズ兄さん!ゆっくりおいでよ~。俺達は逃げないよ」
「はあ……。この子が突然走り出したからだよ。はあ……。運動不足だ。ランニングマシーンを買わないといけないかな。ああ、ユリウス。君も疲れただろう。寝たのか……」

 ユリウスが地面にペタンと寝そべり、目を閉じ始めた。きっと、一貴さんを俺のところまで連れてきてくれたのだろう。世話の焼ける飼い主だと思っているのかも知れない。喉は渇いていないだろうか。

「ユリウス、給水ボトルがあるよ。はい。どうぞ。ああーー、喉が渇いていたんだね。よく飲んでいるね。またトイレに行くかも。車に積んであるんだよね?」
「ああ、セットしてある。すまない。持って来てくれたのか。ああ、飲んでいる。ありがとう。アンも飲むか?」

 一貴さんがアンの頭を撫でた。まだいいよと言っているようで、尻尾をパタパタと振って、彼のことを見上げている。そして、ユリウスのそばに行き、クンクンと匂いを嗅いだ。

 ユリウスはアンのことが好きだから、水を飲むのをやめて、アンの匂いを嗅ぎ始めた。鼻をくっつけるようにして。そして、また水を飲み始めて、飲み終わると同時に、一貴さんの腕に登っていった。やっぱり彼が一番良いのだろう。相方ということだ。
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