青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 午前1時。

 俺達は今、ビニールハウスのそばに車を停車させている。交通量がほとんどなく、道幅も広いから、停めさせてもらった。そして、現場を確認して物影だったと納得した聖河さんが、お義父さんの車に戻っていった。帰りも真羽が運転するそうだ。その様子を見て、俺はため息をついた。かっこいいからだ。

「はあ……。車の運転が出来る人を尊敬するよーー。かっこいいなあ。黒崎さんはいつ、免許を取ったんだっけ?」
「俺は20歳の時だ。真羽君もそうだったそうだな?」
「うん。俺の周りで学校に通う生徒が増えた時期だったからさーー。俺も取りに行きたいって、あんたと喧嘩になったっけ……。少しだけだったけど……。でも、ヴィジブルレイでデビューが待っていたから、先延ばしにしたんだよね……。羽音さんも運転するんだ。めったにしないみたいだけどさ」
「お前には俺がいる。やめておいてくれ。タクシーもある。親父もいざとなれば……」
「お義父さんには運転手さんがいるじゃん。そっか、俺の運転手は黒崎さんなんだね。なんか良いね、そういうの」
「お前が事故を起こしたニュースを見たくない。悠人君も同じなんだろう。ギタリストの手をも怪我をしたらと、考えたそうだ。お前だって同じだ。久弥さんも運転してないそうじゃないか……。ああ、レコーディング明けで眠いからか。そうだな。夜通しの作業もあるそうだからな……。来週木曜日のリハーサルは一日通してだっただろう?夜遅くまでかかるそうだな?迎えに行く」
「だめだよ。寝ていてよ~。午前1時までだからさ。長谷部さんが悠人と俺を送ってくれるって言っているんだ。たまには家にいてよ~」
「いや、迎えに行く。夏樹、外に出ないか?星がよく見えるぞ……」
「ほんと?また何かあるんじゃないの?」

 せっかくだから信じて外に出てみた。外はいっそう冷たくなっていて、吐く息が白くなった気がした。今年は温かくて、気温がマイナスにならないらしい。寒がりの俺にとっては嬉しいことだ。今夜も寒くない。しっかりと着込んできているからだ。すると、黒崎が車を動かした。乗っているのは、俺達とアンと一貴さんとユリウスだけだ。

「カズ兄さん!黒崎さんを止めてよ~~っ」
「夏樹君。車を移動させるだけだ。ほら、この方が良いだろう?」
「そうだ。停め直しただけだ……」

 信用ならない。なぜかその言葉を口にせずに飲み込んだ。いつもの黒崎の意地悪だと思った。いざとなれば、お義父さんの車に乗るからいいよと言い返して、ビニールハウスのそばに停車しているお義父さんの車のそばまで行った。すると、黒崎が車から声を掛けてきた。
 
「ユーリーがそこに行った。ビニールハウスのそばだ。お前も伴をして座っておけ。……冗談だ。俺も行く」
「なんだよ~。ユーリーと一緒にいるから良いよ~」

 俺は夜空を見上げて星を探した。シリウスが浮かんでいるのがすぐに分かった。そして、オリオン座が浮かび上がるようにして、輝き始めたように感じた。そして、俺達の頭上にはペガスス座とアンドロメダ座が浮かび上がっている。秋の星座だ。もうすぐで夜空にはオリオン座が天頂に来るだろう。その頃には、年明けになる。

 俺が黒崎とホテルのお正月プランを楽しんだのは、つい最近のことかと思ったのに、もう一年経とうとしている。その時は晴海さんとユーリーもいた。俺はユーリーのお守りを言いつかって、引きずられるようにしてブリキのおもちゃを見たり、ヨーヨーすくいの縁日を案内した。懐かしい思い出だ。昨日のことのように思えるのに。
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