青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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6-1 ガーデンパーティー

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 11月23日、土曜日。午前9時。

 今、キッチンで洗い物をしているところだ。すると、ある情報番組が流れてきて、洗い物の手を止めた。TDDのコンサートリハーサル風景がワンカット流れていた。来週の金曜日と土曜日に開催するコンサートの宣伝を兼ねているのだとと、ついさっき、長谷部さんから連絡が入っていた。

 その映像の中での俺はボーカルの練習をしていた。マイクを握っている光景だった。悠人と並んで立ち、スタッフとの会話の部分が切り取られていた。俺も悠人も落ち着いて進めており、胸がドキドキしているという内容の会話も入っていた。久弥の引退というテロップも出ていたから、胸が熱くなったり痛くなったりしていたが、お皿を割らずに洗い終えて、今、シンクの中を洗っているところだ。

 風水占いの本を読むとと、家の中の水回りとカーテンの色にこだわれと書いていた。カーテンの色は合格点だった。しかし、水回りの汚れとなると、サボっていたから、読んでいて耳が痛くて、今、徹底的に磨こうと思っている。

「ああーー、ここも汚れているなあ……。こことここも、げげげ、これ、黒カビ?じゃなかった。フライパンに付いていた焦げが張り付いていたのか~。ああー、家内安全を願って、キュッ、キュッと。ああー、うちは犬しかいないからさあーー、猫の手も借りたい時は、ユーリーの出番なんだよねえ……。綺麗好きだからさーー。黒崎さーーん」

 テレビを観ているはずの黒崎のことを呼んだが、返事しか返ってこない。隣に座っているユーリーの方が振り向いてくれた。今月末でドイツに帰る人に、家事を手伝わせるわけにはいかない。頼んだらやってくれる人だ。しかし、黒崎のお手伝いはトーストにバターを塗ることと、お茶碗を出すことのみだ。それでいいと思っているが、食器洗いを手伝ってもらいたい。お皿の水滴を拭き取ることも頼みたいぐらいだ。

 それはどうしてかというと、食洗機が昨日の夜から故障してしまい、食器を手洗いしているからだ。昨日修理の人が来て、見てくれた。部品を取り寄せるということで、修理は明日以降になるという話だった。コンサートが控えているから、俺は家を留守にする。黒崎も出張があり、お義父さんに立ち会いを頼むしかない。それか、来月に修理を依頼するかのどちらかを選ぶことになった。黒崎は来月で構わないと言っているから、そうしようと決まった。俺とアンの食器しかないから大した枚数ではない。キッチングローブをはめて、気を付けて洗っている。

 今日は俺も黒崎も休みで、家にいる。ユーリーもそうだ。さっき、実家の母からラインが入っていた。昨夜、別のチャンネルでも、TDDのコンサートリハーサル風景が宣伝されていたそうだ。俺のことがかっこよく思えたそうで、恋をしそうになったと書かれていて、笑い飛ばしたところだ。ファンになってくれるというのにいけないことだろうか。この年になっても”お母さんが好き“というイメージから脱皮したいところだ。インタビューでも聞かれている。今月誕生日だという母に何を贈るのかと。

「黒崎さーーん。おーーい」
「はーーーい」
「ユーリーはゆっくりしていてよ~」
「うん」

 黒崎がこっちを向いた。手伝おうか?と声をかけてくれた。そうだ、その返事がほしかった。しかし、こんなに素直にされると可愛いから頼めなくなり、お茶のおかわりはどうかと問いかけた。すると、欲しいと返事が返ってきたから、さっそくお茶を煎れようと、カウンターの前に移動した。
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