青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 本当はこのまま抱きついていたいが、俺にはまだもう一つ仕事が残っていて、部屋を出て行かなければならない。関係者席に残っている人達への挨拶だ。ほとんどがプラセルの関係者であり、昨日の夕方に挨拶を済ませてある。しかし、俺達との握手がしたいということで、もちろん俺達もそうしたくて、これから向かう。

「黒崎さん。関係者席に行くけど、一緒にどう?」
「ああ、もちろんだ。挨拶をするんだろう?この後はどこにでも付き添ってやる」
「いつもの黒崎さんだね。お義父さんもいるんだろ?晴海お兄ちゃん達も……。記念写真を撮ろうよ!まだ撮っていなかっただろ?」
「ああ、そうしよう。髪の毛が乱れていないんだな。さすがはプロのセットだ」
「そうだろーー。ローザーさんがささっと作ったんだ。俺、すっごい頭を振っていたのに、かっこいいままだよ。俺がやったら寝癖かなって言われると思うんだ。尊敬するよ」
「ああ。この道30年だと言っていたな。生涯続けるなら、70年の道もありそうだ」
「そうだよねえ。ローザーさんって、食べ物に気を付けているそうだから、長生きしそうだよ。そうなりたいんだってさ。未来の乗り物がどんな風になるのか、見たいんだって言っていたよ」
「そうか……。聖河と付き合うことになったのか?もう広まっているぞ。晴海兄さんが言っていた」
「マジで?どこから広まったんだろ?聖河さん、バタバタしていたはずだし、ローザーさんも関係者席に行く余裕はなかったと思うんだ」
「それは……」

 コンコン。するとその時だ。控え室のドアがノックされた。入ってきたのは、話題の主だった。聖河さんだ。早速俺はこの話を彼にした。すると、喋ったのは、僕とローザーさんだと言い出したから驚いた。

「いつの間に?」
「晴海君達に紹介したくて、彼を連れて行った。今日のコンサートの前だよ。君がアリーナ席を案内する撮影中に紹介させたもらった。お父さんにも話したかった」
「そうなんだね。お義父さんの反応はどうだった?」
「ああ。喜んでくれていたよ。初デートは来週だ。まずは食事をして、お互いのことを知ることにするよ。何も知らない者同士だ。はははは」
「幻滅したりして……。いた!何するんだよ~」
「余計な事を言うな」
「だってさ~、そうじゃん……。いた!痛い!」

 黒崎が俺の頬を指ではじいた。その瞬間、痛みが走り、距離を取って逃げた。ちょうど良いから部屋から出て、関係者席に行くことにした。すると、黒崎がドアを開けて、俺のことを廊下に出した。

「なんだよ。俺のことを追い出すわけ?」
「関係者席に行くつもりなんだろう?俺は聖河と話をするから、お前一人で行ってこい」
「なんだよ~、俺を一人にするなよ~っ」

 パタン!ドアが閉められてしまった。そこで、俺が自分でドアを開けて黒崎に仕返しをしようとすると、彼の方も開けたタイミングだったから、俺の身体が宙に浮いた。

「わあああああーー」
「足を出せ」
「よっと……」

 黒崎の声に反応して、俺の左足が伸びて着地した。背中がヒヤッとして、汗をかいてしまった。聖河さんの前だからなのか、黒崎が俺の身体を支えてくれなかった。それを恨みに思い、彼の足先を蹴ってやった。コンサートは無事に済んだから、これから黒崎とは喧嘩し放題だ。

「ふん!こいつめ!」
「なんだと?お前、泣かすぞ」
「はははは。2人とも、やめろ」

 聖河さんが俺達の間に入るようにして立ち、俺達を引き離した。それでも俺は黒崎の足を蹴り続けるようにジタバタ動き、後から入ってきた長谷部さんから止められて、大人しくした。
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