225 / 938
9-26
しおりを挟む
すると、黒崎も大広間に入ってきた。笑っている。ユーリーの失敗を聞いて気持ちがほぐれたようで、剣呑な空気はない。俺は沙耶さんと連絡を取り、今日の15時に、黒崎に電話をかけてくれることになっている。倉口さんからの脅し文句は、警察に届け出ることにしている。念のためだ。この家に乗り込んでくる気があるそうだ。俺の予想では、倉口さんは来ないと思っている。黒崎も同じだ。ただし、自分を傷つけるかも知れないとは思っている。
「夏樹。ユーリー。座っていろ」
「うん。そうだよね。さあ、ユーリー。中華炒めだよ。あんたの好きなイカがたくさん入っているんだ。柔らかいそうだよ」
「ああ、美味しそうな匂いがしている。こんな時なのに、お腹は空いている」
「それはそうだよ。生きているんだもん。もうすぐで二葉が帰ってくるから、話すと良いよ。向こうも何かあったみたいだし……」
「ああ、そうだな……」
「そうだぞ……」
黒崎が笑った。そして、ユーリーも少しだけ笑った。二葉も失敗をしたそうだ。社長室に持って行くお菓子とお茶をこぼしてしまい、南波さんが手伝ってくれて、一緒に片付けたそうだ。しかし、片付けているときにまたトレイをひっくり返してしまい、慌てふためいたということだった。怪我はなかった。
俺達はユーリーを挟むようにして椅子に座り、中華スープの匂いを嗅いだ。卵がふんわりしている。
「ああ、早く食べたいなあ。そうだ!カズ兄さんも何か失敗しているかも知れないよ。こういう時は揃うものだよ」
「そうだろうか……」
「そうだよ!きっと何かあるってば……。カメラを落としたとか、機材を倒したとか、モデルさんにフラれたとか……」
一貴さんの失敗を数えると、キリがない。その一方で、ユーリーは失敗することがない。食事はきちんと食べるし、飲み物をこぼさないし、朝だって決まった時間に起きている。一貴さんなんか、その反対のことをしている。寝坊しそうなときは前の晩から起きているし、飲み物はこぼすし、偏食気味だ。考え込んでいて、柱にぶつかりそうになる時も見かけたことがある。ユーリーは慎重にしているから、歩き回って考え込まない。だから、安心できる。
「おまたせ。さあ、食べよう」
「うん!」
お義父さんが部屋に入ってきた。俺達の前には温かい烏龍茶の入ったカップが置かれた。これがまた美味しくて、食欲をそそる。まず最初に烏龍茶から飲み、一息ついた。お義父さんもそうしている。
「はあ。疲れた。お腹が空いているよ」
「そうだよね。さあ、食べようっと……。わーーー、美味しい!」
俺が真っ先に食べたのは、中華炒めだ。野菜がシャキシャキしていて歯ごたえがある。しかし、よく火が通っているから柔らかくて食べやすい。そして、イカを食べて、ため息をついた。とても美味しいからだ。
「ふうーー。ここでご飯を食べたら、黒崎さんが俺が作る料理に文句を言うようになるんだ……」
「カボチャの煮物の時だったか……」
「そうだよ~。あんたがさ~、味が濃いって言うんだもん。いつもと同じ味付けなのに。あんたがそうしてくれって言うからそうしているのに、ここで食べたカボチャの方が美味しかったから、コロッと変わったんだ。ね?薄味の味付けの方が美味しいだろーー?」
「ああ。そうだった。俺が悪かった」
黒崎があっさりと謝ったから、何も言えなくなった。さすがに今は喧嘩をしなくないからでもあると思う。
「夏樹。ユーリー。座っていろ」
「うん。そうだよね。さあ、ユーリー。中華炒めだよ。あんたの好きなイカがたくさん入っているんだ。柔らかいそうだよ」
「ああ、美味しそうな匂いがしている。こんな時なのに、お腹は空いている」
「それはそうだよ。生きているんだもん。もうすぐで二葉が帰ってくるから、話すと良いよ。向こうも何かあったみたいだし……」
「ああ、そうだな……」
「そうだぞ……」
黒崎が笑った。そして、ユーリーも少しだけ笑った。二葉も失敗をしたそうだ。社長室に持って行くお菓子とお茶をこぼしてしまい、南波さんが手伝ってくれて、一緒に片付けたそうだ。しかし、片付けているときにまたトレイをひっくり返してしまい、慌てふためいたということだった。怪我はなかった。
俺達はユーリーを挟むようにして椅子に座り、中華スープの匂いを嗅いだ。卵がふんわりしている。
「ああ、早く食べたいなあ。そうだ!カズ兄さんも何か失敗しているかも知れないよ。こういう時は揃うものだよ」
「そうだろうか……」
「そうだよ!きっと何かあるってば……。カメラを落としたとか、機材を倒したとか、モデルさんにフラれたとか……」
一貴さんの失敗を数えると、キリがない。その一方で、ユーリーは失敗することがない。食事はきちんと食べるし、飲み物をこぼさないし、朝だって決まった時間に起きている。一貴さんなんか、その反対のことをしている。寝坊しそうなときは前の晩から起きているし、飲み物はこぼすし、偏食気味だ。考え込んでいて、柱にぶつかりそうになる時も見かけたことがある。ユーリーは慎重にしているから、歩き回って考え込まない。だから、安心できる。
「おまたせ。さあ、食べよう」
「うん!」
お義父さんが部屋に入ってきた。俺達の前には温かい烏龍茶の入ったカップが置かれた。これがまた美味しくて、食欲をそそる。まず最初に烏龍茶から飲み、一息ついた。お義父さんもそうしている。
「はあ。疲れた。お腹が空いているよ」
「そうだよね。さあ、食べようっと……。わーーー、美味しい!」
俺が真っ先に食べたのは、中華炒めだ。野菜がシャキシャキしていて歯ごたえがある。しかし、よく火が通っているから柔らかくて食べやすい。そして、イカを食べて、ため息をついた。とても美味しいからだ。
「ふうーー。ここでご飯を食べたら、黒崎さんが俺が作る料理に文句を言うようになるんだ……」
「カボチャの煮物の時だったか……」
「そうだよ~。あんたがさ~、味が濃いって言うんだもん。いつもと同じ味付けなのに。あんたがそうしてくれって言うからそうしているのに、ここで食べたカボチャの方が美味しかったから、コロッと変わったんだ。ね?薄味の味付けの方が美味しいだろーー?」
「ああ。そうだった。俺が悪かった」
黒崎があっさりと謝ったから、何も言えなくなった。さすがに今は喧嘩をしなくないからでもあると思う。
0
あなたにおすすめの小説
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
黒獅子の愛でる花
なこ
BL
レノアール伯爵家次男のサフィアは、伯爵家の中でもとりわけ浮いた存在だ。
中性的で神秘的なその美しさには、誰しもが息を呑んだ。
深い碧眼はどこか憂いを帯びており、見る者を惑わすと言う。
サフィアは密かに、幼馴染の侯爵家三男リヒトと将来を誓い合っていた。
しかし、その誓いを信じて疑うこともなかったサフィアとは裏腹に、リヒトは公爵家へ婿入りしてしまう。
毎日のように愛を囁き続けてきたリヒトの裏切り行為に、サフィアは困惑する。
そんなある日、複雑な想いを抱えて過ごすサフィアの元に、幼い王太子の世話係を打診する知らせが届く。
王太子は、黒獅子と呼ばれ、前国王を王座から引きずり降ろした現王と、その幼馴染である王妃との一人息子だ。
王妃は現在、病で療養中だという。
幼い王太子と、黒獅子の王、王妃の住まう王城で、サフィアはこれまで知ることのなかった様々な感情と直面する。
サフィアと黒獅子の王ライは、二人を取り巻く愛憎の渦に巻き込まれながらも、密かにゆっくりと心を通わせていくが…
妖精です、囲われてます
うあゆ
BL
僕は妖精
森で気ままに暮らしていました。
ふと気づいたら人間に囲まれてました。
でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。
__________
妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精
なんやかんやお互い幸せに暮らします。
守り守られ
ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師
患者 瀬咲朔
腸疾患・排泄障害・下肢不自由
看護師
ベテラン山添さん
準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん
木島 尚久 真幌の恋人同棲中
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
きっと必ず恋をする~初恋は叶わないっていうけど、この展開を誰が予想した?~
野々乃ぞみ
BL
渡辺 真詞(わたなべ まこと)は小さい頃から人ではないモノが見えた。
残念ながら話もできたし、触ることもできた。
様々なモノに話しかけられ、危ない目にもあってきた。
そんなとき、桜の下で巡(めぐる)に出会った。
厳しいけど優しい巡は特別な存在になった。
きっと初恋だったのに、ある日忽然と巡は消えた。
それから五年。
地元から離れた高校に入った十六歳の誕生日。
真詞の運命が大きく動き出す。
人とは違う力を持つ真詞が能力に翻弄されつつも、やっと再会した巡と恋をするけど別れることになる話。(前半)
別れを受け入れる暇もなくトレーニングが始まり、事件に巻き込まれて岬に好かれる話。(後半)
・前半 巡(人外)×真詞
・後半 岬(人間)×真詞
※ 全くの別人ではありませんが、前半と後半で攻めが変わったと感じるかもしれません。
※ キスを二回程度しかしないです。
※ ホラーではないつもりですが、途中に少し驚かすようなシーンがあります。ホラーのホの字もダメだという方は自己判断でお願いします。
※ 完結しました。遅くなって申し訳ありません。ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる