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すると、一貴さんが話したいことがあると言った。真面目な顔をしている。藤沢のことだろうか。いい報告が聞けると良いなと思った。期待はしてない。どうせまた何か言って嫌われて、これから仲直りを目指すという方向だろう。そういう気がした。しかし、今日は違うことだった。お義父さんとの親子鑑定の日が決まったという報告だった。
「いつになるの?」
「今日だ。お義父さんが帰って来た後でする」
「急だね!」
「鑑定キットは取り寄せてあるから、いつでも出来るんだ。年末年始の休みに入るから、24時間鑑定サービスを使おうと思っている。でも、僕としてはやりたくないという気持ちだ……」
「そっか……」
「その気持ちをお父さんに話したら、今日はやめておこうという話になった。でも、やりたい気持ちはあるんだ。はっきりさせたいってね……」
「カズ兄さんは、お義父さんの息子だよ。そう思うんだ」
「そうなると、うちの母が黙っていない。息子じゃない方が良いような気がしている」
「そうだね……」
一貴が引っかかるのは蓮子さんのことだ。瑛子さんに喧嘩をふっかけることは二度としないで貰いたいと思っているが、自分が息子だと分かれば親戚達に威張り散らし、この家に乗り込んで来そうだと言っている。しかし、一貴さんは蓮子さんのことを静かにさせる力を持っていて、昔のような怖い存在ではない。家は都内にあるが、去年の法事の後から会っていない。一貴さんが骨折したときも黙っていた。
もう顔を合わせたくないというのが本音だが、お母さんだから、何もしないというわけにはいかず、一生顔を合わせないというのは出来なくて、そういうことはもう乗り越えられるメンタルを持っている自分のはずなのに、昔、母親の前で萎縮していた自分を思い出して嫌になるのが怖いそうだ。
「夏樹君。僕はここに居ても良いだろうか」
「もちろん良いに決まっているよ!何言っているんだよ。蓮子さんが来たって大丈夫だよ。みんな大人なんだから」
「そうか。ありがとう」
「なんだよーーー、泣くよ?」
一貴さんが大人しいから心配になった。こういう日を迎える前には気持ちが不安定になり、子供っぽくなるかと思っていたのに、随分と大人だ。きっと手が焼けるに決まっていると思っていたのに。
「夏樹君。泣かないでくれ」
「カズ兄さん。子供っぽくなれよーーー。血の検査は嫌だーーって、暴れるみたいにしろよ~。シャツの腕をまくってさ~」
「あれは恥ずかったから、もうやらない。ついでに親子鑑定ができれば便利なのにな」
「うん……」
採血の結果で分かれば便利だと思った。うちの家の中では一貴さんの注射針嫌いが笑いになっているから、ちょうど良いと思った。採血の瞬間になると涙ぐみ、身体が震え上がり、採血できない状況になってしまう。そして、その時の一貴さんは固く目をつぶり、針を見ないようにして、カタカタと震えている。
だから、特別に、この間はお義父さんが中に入らせてもらって付き添った。お義父さんとしては恥ずかしいという感覚は無くて、どうしてこんなに怖いのかと心配になったそうだ。小さい頃に起きた体験が影響しているのだろうと言っていた。しかし、本人は何かは覚えていないそうだ。そういうわけで、聖加世病院でも一貴さんは注射が怖い人だと知って貰えて、本人はホッとしている。そういうことが安心感になるそうだ。
すると、六槍さんがこっちを見ていることに気づいた。一貴さんは急に島川社長の顔になり、お義父さんへの悪口を口にし始めた。成績のことで叱ってきたくせに、自分だって悪い時があったと知っているんだという話だ。それを聞いて、呆れてしまった。
「カズ兄さん。やめろよ~~~」
「いいや、六槍君も聞いてくれ。あの人はだな……」
「はははは。僕が見ていると、普段の社長になるんですよ」
「そうだって言うよね~。家の中だと子供っぽいんだけど、今も十分そうだよ」
キッチンではユーリーの足を蹴ったところだが、今度は一貴さんの足を蹴ってやった。親子鑑定の日はいつになるだろうか。一貴さんはお義父さんと約束してある。結果がどうであれ、今の生活は変えないのだと。ずっとこの家に居る。その約束だ。
「いつになるの?」
「今日だ。お義父さんが帰って来た後でする」
「急だね!」
「鑑定キットは取り寄せてあるから、いつでも出来るんだ。年末年始の休みに入るから、24時間鑑定サービスを使おうと思っている。でも、僕としてはやりたくないという気持ちだ……」
「そっか……」
「その気持ちをお父さんに話したら、今日はやめておこうという話になった。でも、やりたい気持ちはあるんだ。はっきりさせたいってね……」
「カズ兄さんは、お義父さんの息子だよ。そう思うんだ」
「そうなると、うちの母が黙っていない。息子じゃない方が良いような気がしている」
「そうだね……」
一貴が引っかかるのは蓮子さんのことだ。瑛子さんに喧嘩をふっかけることは二度としないで貰いたいと思っているが、自分が息子だと分かれば親戚達に威張り散らし、この家に乗り込んで来そうだと言っている。しかし、一貴さんは蓮子さんのことを静かにさせる力を持っていて、昔のような怖い存在ではない。家は都内にあるが、去年の法事の後から会っていない。一貴さんが骨折したときも黙っていた。
もう顔を合わせたくないというのが本音だが、お母さんだから、何もしないというわけにはいかず、一生顔を合わせないというのは出来なくて、そういうことはもう乗り越えられるメンタルを持っている自分のはずなのに、昔、母親の前で萎縮していた自分を思い出して嫌になるのが怖いそうだ。
「夏樹君。僕はここに居ても良いだろうか」
「もちろん良いに決まっているよ!何言っているんだよ。蓮子さんが来たって大丈夫だよ。みんな大人なんだから」
「そうか。ありがとう」
「なんだよーーー、泣くよ?」
一貴さんが大人しいから心配になった。こういう日を迎える前には気持ちが不安定になり、子供っぽくなるかと思っていたのに、随分と大人だ。きっと手が焼けるに決まっていると思っていたのに。
「夏樹君。泣かないでくれ」
「カズ兄さん。子供っぽくなれよーーー。血の検査は嫌だーーって、暴れるみたいにしろよ~。シャツの腕をまくってさ~」
「あれは恥ずかったから、もうやらない。ついでに親子鑑定ができれば便利なのにな」
「うん……」
採血の結果で分かれば便利だと思った。うちの家の中では一貴さんの注射針嫌いが笑いになっているから、ちょうど良いと思った。採血の瞬間になると涙ぐみ、身体が震え上がり、採血できない状況になってしまう。そして、その時の一貴さんは固く目をつぶり、針を見ないようにして、カタカタと震えている。
だから、特別に、この間はお義父さんが中に入らせてもらって付き添った。お義父さんとしては恥ずかしいという感覚は無くて、どうしてこんなに怖いのかと心配になったそうだ。小さい頃に起きた体験が影響しているのだろうと言っていた。しかし、本人は何かは覚えていないそうだ。そういうわけで、聖加世病院でも一貴さんは注射が怖い人だと知って貰えて、本人はホッとしている。そういうことが安心感になるそうだ。
すると、六槍さんがこっちを見ていることに気づいた。一貴さんは急に島川社長の顔になり、お義父さんへの悪口を口にし始めた。成績のことで叱ってきたくせに、自分だって悪い時があったと知っているんだという話だ。それを聞いて、呆れてしまった。
「カズ兄さん。やめろよ~~~」
「いいや、六槍君も聞いてくれ。あの人はだな……」
「はははは。僕が見ていると、普段の社長になるんですよ」
「そうだって言うよね~。家の中だと子供っぽいんだけど、今も十分そうだよ」
キッチンではユーリーの足を蹴ったところだが、今度は一貴さんの足を蹴ってやった。親子鑑定の日はいつになるだろうか。一貴さんはお義父さんと約束してある。結果がどうであれ、今の生活は変えないのだと。ずっとこの家に居る。その約束だ。
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