青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 聖河さんがお義父さんと出会ったのは、6歳の時だった。怖そうな顔をしたおじさんがお母さんと話していて、今日からあなたのお父さんになるのよと言われてビックリして、本当のお父さんはどこにいるの?と聞いたそうだ。そのお父さんは、聖河さんが赤ちゃんの時に、一度面会しただけだ。お母さんともう一人の女性と二股恋愛をして、もう一人の女性と結婚した人だ。お母さんはそのことを知らずに付き合い続けて、結婚話も出ている中で妊娠が分かり、男性が結婚していたことも知った。お母さんと男性はかなり揉めたそうだ。

 騙された証拠は存在していたから裁判で争い、認知と財産分与を受けたそうだ。生まれた子供が男の子だったら引き取ると言われたそうだが、お母さんが拒んだ。山岸家のお祖父さん達もだ。お母さんはなんと、19歳の大学生だったそうだ。それが12歳も年上の男に騙されて、散々だった。年齢まで偽られていたのだそうだ。

 裁判になる前の話し合いでは、泥沼だったそうだ。妻との間に子供ができており、その子のために認知しないというのが男性の出した答えであり、慰謝料も養育費も払わないとまで言ったそうだ。謝罪もなかった。そこで、結婚詐欺として訴えを起こす流れになり、男性が生まれた子供を引き取ると言い出して、事件にさせないようにしてきた。

 しかし、お母さんの出した答えはNOであり、裁判をして、認知をさせた。そして、それがよかったのか悪かったのか、最近になり、男性がトラブルを持ち込んできたそうだ。山岸家に手紙が届いたのだという。聖河さんと連絡を取りたいということだった。相続問題もあった。男性が亡くなった後のことだ。まだ元気だが、その問題があるそうだ。異母妹が聖河さんには一円も譲らないと言って、親族内で揉めているそうだ。聖河さんとしては、一円も要らない。それに労力を使わされた聖河さんだったから、認知が良いとは言えないという考え方だ。結ばない方がいい関係もあるということだ。

 自分にはお父さんはいないと思ってきた聖河さんだったが、山岸家のお祖父さん達と暮らしていたから、お坊さん達も居て、賑やかだったそうだ。そんなある日、お母さんが“お父さん”を連れてきた。それはお祖父さんと言ってもいい年の人だった。お父さんと呼ばないといけないと、お母さんに気を遣ってきたが、それはそれとして、良い経験だったと話してくれた。不思議な関係だそうだ。嫌なことは何も無くて、この人は悪くないのだと思っていたそうだ。悪いのは、お母さんなのだと。そういう思いがあったそうだ。

 一貴さんが食事を済ませた。俺は蕎麦を食べ終えて、おいなりさんを食べているところだ。六槍さんが一貴さんの肩をさすった。お義父さんへの悪口を言った口で、今は後悔の言葉を出しているからだ。お義父さんから“今から帰る”という電話が黒崎に入り、一貴さんに優しい言葉を伝言されたからだという。きちんと昼ご飯を食べているか?という言葉だ。

「カズ兄さん。なんだよ。今さっきは悪口を言っていたくせに~」
「一貴さん。そうですよ。神様は聞こえていたんですよ。あなたが悪口を言っているんだって……。あれ?朝陽君、君までどうしたんだ?親子鑑定のことか?」
「はい。社長が俺にも一緒にどうかっておっしゃったので……。飛行機で飛んでいけば、すぐにサンプルは採れるんだって……」

 朝陽が肩を落とした。彼の方こそ憂うつだろう。嫌いなお母さんと話さないといけなくて、お父さんにも会うということが待っている。しかし、朝陽には黒崎と二葉が居る。心強いと思う。特に黒崎だ。朝陽のことを守り切るに決まっているから、ほとんど会話をしなくても良いはずだ。

 倉口さんからは連絡は無い。お酒を飲んで絡んでくる電話もだ。黒崎としては、急に家に行ってもいいだろうと言っている。高校の先生だって鑑定したがっているそうだ。しかし、倉口さんはお酒を飲んでばかりだろうから、嫌な光景を朝陽に見せてしまうことになることを気にしている。二葉も連れて行こうと思っているそうだ。家の中に置いてきた物で、こっちに持って来たい物があればと思ってのことだ。倉口さんにも会っておきたいだろう。そういう思いもあるそうだ。

「朝陽君。君には六槍君がいるだろう。デートをしてこい。良い店を予約してやる」
「いいんですよ。そういうのは自分でしますから……」

 デートをしてこいという一貴さんに、六槍さんが遠慮した。その理由を知った。一貴さんが選んだ店では何か起こるからだという。せっかくの朝陽との時間が対処に割かれても嫌だと、はっきりと返事を返し始めた。社長と秘書という関係であり、友達同士でもあるのだと感じて、嬉しくなり、感動した。
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