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19時。
黒崎が運転する車が、月島さんが住んでいるマンションの前に近づいた。お義父さんが黒崎と交代するまで、一貴さんに付き添ってくれている。俺は忘れないようにと、膝の上にお土産を乗せてあったから、月島さんにそれを渡した。中身はお餅だ。それと、遠藤さんから沢山貰ったミカンと、実家から送ってきたユズ茶のペーストが入った瓶が入っている。これは最近発売された物で、とても美味しいからと、実家の母がうちに沢山送ってきてくれた。
「月島さん。こういうので申し訳ないけど、良かったら食べて下さい」
「ありがとう。今度、僕の方からも何か持って行くよ」
「良いんだよ。今日だって美味しい物を貰ったんだもん。かりんとうと黒砂糖。カズ兄さんが年末に食べていた物だなんて、まるで見ていたみたいな話だったね。二葉、月島さんが帰るよ。挨拶しなきゃ……」
「うん……」
車に乗った後すぐに眠り始めた二葉が目を覚ました。そして、俺はまた驚いた。病院の中で見たときと同じように、今度は聖河さんではなく、彼女の顔に、別の男性の顔が青く浮かんでいたからだ。俺は言葉を失い、悲鳴を飲み込んだ。病院ではなんだか涙が出てきたのに、今は違う。そんな俺に気づいた月島さんが、肩を揺すって俺のことを助けるようにして声を掛けてくれた。
「また見たのか?」
「うん。男の人の顔だよ。若い人だよ。これ、過去世なの?今、消えた!また浮かんだ!」
「過去世じゃないと思う。レディーのことを守っている人の顔だよ。女の人もいるね。今日来たということは、何か起きたかな……。ああ、来た。彼らと天の方からだよ。僕に頼み事か。どんなことですか?」
「ああ、いるんだね……」
月島さんが軽く目を閉じた。すると、二葉のスマホにラインの着信が鳴った。そして、画面を見た彼女が軽く悲鳴を上げた。逮捕された医者の友達からのラインだったそうだ。その子は逮捕後に釈放されて、家で待機しているそうだ。しかし、自由に連絡を取って良いことになっていないはずだ。自分の弁護士からも注意を受けているだろう。
二葉の名前を出しての殺害予告は無かったが、きっかけは倉林さん達がやっていた爆破予告メールに影響されてのことだと、警察からの取り調べで話したそうだ。アイドルグループへの殺害予告と事務所の爆破予告、そして、黒崎製菓の社員への殺害予告の容疑だった。本人が認めているのは、アイドルグループへの殺害予告のみだ。
「二葉、何て書いてあるの?黒崎さん、後で見てよ。さあ、見せて……。“今までと同じように仲良くして下さい。私は県外の病院で勤務が決まっていて、もうすぐで出て行くから、生まれ故郷に帰ったら、あなたたちがいる環境にしておいてもらいたいの”。……なんだよ。自分のためにそうしてくれってことだよね。こういうラインって、送ってきて良いのかな。謝罪なんて何も書いていないよ。返事はしたらだめだよ」
「うん」
すると、聖河さんがラインの文面を見て、勤務先は受け入れがないと思うけどと言った。医師免許だってどうなるか分からないのだと。アイドルグループの事務所は示談する気はなくて、起訴された後、裁判になるだろう。民事でも刑事事件でも裁判がある。二葉への殺害予告はしていなかったから、こうしてラインを送ってきたのか。
友達関係はとうに終わりを迎えている。二葉への嫌がらせのために殺害予告をした倉林さん達との友達関係を続けて欲しいだなんて、どうやったらその発想が浮かぶというのか。そこで、運転席から黒崎が声を掛けてきた。
「夏樹。後で沙耶に連絡を入れておくから、消さないでくれ。スクショを取ってくれ」
「うん。保存したよ。月島さん。どう?何かあった?」
「あったよ。地元の友達関係ではごちゃごちゃしそうだという、天からのメッセージだった。もう終わりで良いんだ。新しい人生が待っているんだ。もう送っているんだけどね。こっちに来た後の友達がいる。レディーはもう地元には帰らない。縁が切れたんだ。でも、天の声では、まだ整理が付かなくて、色々言ってくる人がいると思うけど、振り返るなということだ。困ったことだ。そのラインはまた送ってくる可能性がある。同じ内容で何通も来るだろう」
「そっか……。あ、また顔が浮かんだよ。今日の俺はどうしたのかな……」
オバケを見たなんていう話を聞いたら逃げ出したい俺なのに、今は不思議と怖くなかった。二葉はまた眠たそうにしていて、なんだか様子がおかしいと思った。
黒崎が運転する車が、月島さんが住んでいるマンションの前に近づいた。お義父さんが黒崎と交代するまで、一貴さんに付き添ってくれている。俺は忘れないようにと、膝の上にお土産を乗せてあったから、月島さんにそれを渡した。中身はお餅だ。それと、遠藤さんから沢山貰ったミカンと、実家から送ってきたユズ茶のペーストが入った瓶が入っている。これは最近発売された物で、とても美味しいからと、実家の母がうちに沢山送ってきてくれた。
「月島さん。こういうので申し訳ないけど、良かったら食べて下さい」
「ありがとう。今度、僕の方からも何か持って行くよ」
「良いんだよ。今日だって美味しい物を貰ったんだもん。かりんとうと黒砂糖。カズ兄さんが年末に食べていた物だなんて、まるで見ていたみたいな話だったね。二葉、月島さんが帰るよ。挨拶しなきゃ……」
「うん……」
車に乗った後すぐに眠り始めた二葉が目を覚ました。そして、俺はまた驚いた。病院の中で見たときと同じように、今度は聖河さんではなく、彼女の顔に、別の男性の顔が青く浮かんでいたからだ。俺は言葉を失い、悲鳴を飲み込んだ。病院ではなんだか涙が出てきたのに、今は違う。そんな俺に気づいた月島さんが、肩を揺すって俺のことを助けるようにして声を掛けてくれた。
「また見たのか?」
「うん。男の人の顔だよ。若い人だよ。これ、過去世なの?今、消えた!また浮かんだ!」
「過去世じゃないと思う。レディーのことを守っている人の顔だよ。女の人もいるね。今日来たということは、何か起きたかな……。ああ、来た。彼らと天の方からだよ。僕に頼み事か。どんなことですか?」
「ああ、いるんだね……」
月島さんが軽く目を閉じた。すると、二葉のスマホにラインの着信が鳴った。そして、画面を見た彼女が軽く悲鳴を上げた。逮捕された医者の友達からのラインだったそうだ。その子は逮捕後に釈放されて、家で待機しているそうだ。しかし、自由に連絡を取って良いことになっていないはずだ。自分の弁護士からも注意を受けているだろう。
二葉の名前を出しての殺害予告は無かったが、きっかけは倉林さん達がやっていた爆破予告メールに影響されてのことだと、警察からの取り調べで話したそうだ。アイドルグループへの殺害予告と事務所の爆破予告、そして、黒崎製菓の社員への殺害予告の容疑だった。本人が認めているのは、アイドルグループへの殺害予告のみだ。
「二葉、何て書いてあるの?黒崎さん、後で見てよ。さあ、見せて……。“今までと同じように仲良くして下さい。私は県外の病院で勤務が決まっていて、もうすぐで出て行くから、生まれ故郷に帰ったら、あなたたちがいる環境にしておいてもらいたいの”。……なんだよ。自分のためにそうしてくれってことだよね。こういうラインって、送ってきて良いのかな。謝罪なんて何も書いていないよ。返事はしたらだめだよ」
「うん」
すると、聖河さんがラインの文面を見て、勤務先は受け入れがないと思うけどと言った。医師免許だってどうなるか分からないのだと。アイドルグループの事務所は示談する気はなくて、起訴された後、裁判になるだろう。民事でも刑事事件でも裁判がある。二葉への殺害予告はしていなかったから、こうしてラインを送ってきたのか。
友達関係はとうに終わりを迎えている。二葉への嫌がらせのために殺害予告をした倉林さん達との友達関係を続けて欲しいだなんて、どうやったらその発想が浮かぶというのか。そこで、運転席から黒崎が声を掛けてきた。
「夏樹。後で沙耶に連絡を入れておくから、消さないでくれ。スクショを取ってくれ」
「うん。保存したよ。月島さん。どう?何かあった?」
「あったよ。地元の友達関係ではごちゃごちゃしそうだという、天からのメッセージだった。もう終わりで良いんだ。新しい人生が待っているんだ。もう送っているんだけどね。こっちに来た後の友達がいる。レディーはもう地元には帰らない。縁が切れたんだ。でも、天の声では、まだ整理が付かなくて、色々言ってくる人がいると思うけど、振り返るなということだ。困ったことだ。そのラインはまた送ってくる可能性がある。同じ内容で何通も来るだろう」
「そっか……。あ、また顔が浮かんだよ。今日の俺はどうしたのかな……」
オバケを見たなんていう話を聞いたら逃げ出したい俺なのに、今は不思議と怖くなかった。二葉はまた眠たそうにしていて、なんだか様子がおかしいと思った。
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