青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 部屋の中は静まりかえっている。アレクシスさんは真剣だ。二葉だって真剣な顔をしている。お義父さんも同じだ。それを見ている俺とユーリーも肩が凝りそうだと言い合った。そして、アレクシスさんがじっと考えているのを見つめた。断る余地がないということか。OKという返事にならないと思ったのに、彼からすると、結婚を考える話なのかと驚いた。心はあなたにはないと言われたも同然だというのに。

「アレクシス、どうだ?」
「俺にとっては魅力的だ。自由に恋愛ができる上に、自分の子供が持てる。夫婦として出席する場には、同席をしてくれるんだろう?」
「ああ、そう言っている。アレクシス、お前だって子育てをしたいんだろう?」
「ああ。したいと思っている。できればパートナーとの間でしたい。俺には恋人はいないけど、誰か探す。だから、彼女達との子育てという道は希望できない。意見の相違だ」
「そうだな。2人産んで貰って、別々で育てるというのは無茶な話だ。兄弟を引き離すことになる。では、子供を産まない選択をした場合の結婚の話をしよう。二葉はバーテルス家に嫁ぐということで了解している。エミリアとの仲も良好だ。ただし、心の恋人は志乃さんだ。それでいいか?」
「お互いに婚外恋愛だな。契約結婚だ。俺は愛が欲しい」
「そうか。二葉、お前はどうだ?」
「二葉、無理するなよ」

 思わず俺は言葉を挟んだ。ただシンプルに、誰とも結婚したくないと言えばいいのに、色々とプランを考えていたということが分かり、また痩せたのではないかと思った。ただでさえ、地元の友達の逮捕と裁判が始まっている。これ以上の体力の消耗は良くない。

 俺が心配していると、ユーリーが肩を揺らして笑い出した。この結婚は一筋縄ではいかなくて、黙って嫁いでいきますという答えがでるわけがなくて、さすがはうちの家だと言いだした。バーテルス家は縁談が進まないそうだ。何かと条件があり、親戚同士でお見合い相手を紹介しかなくなっていると言っていた。そもそも、アレクシスさんが男性がいいのだから、この話は無しだ。

 そして、二葉が首を横に振った。俺も愛が欲しいと言った。しかし、志乃さんからは振り向いて貰えず、しかしながら、子育てには参加しても良いと返事を貰ったと言った。親友としてだ。それでもいいのだという。

「俺は子供が欲しくて。俺で役に立つなら産むよ。でも、妊娠できるか分からないんだって聞いたよ。なかなか出来ないかも知れないケースがあるんだって……。でも、お父さんがいない子育てになると思うから、やめた方が良いなって思っているよ。アレクシスさんがお父さんで間違いない環境だけど、実際には俺と志乃が育てるとなればね。色々と考えることがあるんだ。俺にもアレクシスさんには自由でいてもらいたいよ。跡取りが欲しいっていう声と、俺の希望が合ったら良いねって思っているよ。アレクシスさんには恋愛感情がわかないよ。俺、女の人が好きだから」
「そうか……。隆さん。二葉が無理をするから、この話は流してくれ。破談で良いよ」
「そうか。分かった。日本に来てくれてありがとう。ゆっくりしていってくれ。……二葉、生涯独身を貫き通すか?」
「うん。俺はそうするよ」

 二葉が返事をした。これで彼女はこの家にずっと居ることになる。アレクシスさんがホッとしていた。そして、ややヤンキー口調に戻り、色々と無理をしているんじゃないかとツッコみ始めた。それはさっきまでの怜悧な空気感では無くて、とても温かみのある雰囲気だった。

 そして、アレクシスさんが言った。“俺と二葉と一貴君とは何度も兄弟として産まれてきているんだって?”と。ユーリーを通して月島さんから聞いたのだと。それに驚いた俺だった。一貴さんの過去世を言えないと言っていたのに。
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