青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 こうして話していると気持ちが沈んでいくのが分かった。何か明るい話題はないだろうか。このリビングにいるのは俺達の3人だ。黒崎は大広間で、お義父さんと久弥とで話をしている。サエキ酒造から発売された甘酒入りカクテル風の酎ハイが好評で、良い売れ行きらしい。サエキ酒造は黒崎製菓グループに入り、コラボ商品が増えている。バレンタイン時期限定の、チョコ風味の酎ハイの発売もあった。

「そうだ。チョコ味の酎ハイがあるよ。飲んでみてよ」
「夏樹。ビールの後の酎ハイはやめれくれーー」
「やっぱりだめなのかよ。ふうん。味が混ざるからなのか。飲みたくないんだろ?」
「ははは」

 アレクシスさんが黙っていると、ユーリーが代わりに笑った。彼はもう飲んである。あまり美味しくなかったと、正直に感想を言ってくれた。ネットでは話題になったこともあった。まずいから飲んでみろという言葉と共に。

「あーーあ、限定商品がコケるなんてなあ……」
「普通に、酒入りのチョコレートの発売で良かっただろう。サエキ酒造の酒は美味い。もったいないことをしている」

 そう言って、アレクシスさんがビールの残りを飲んだ。そして、リビングに置いてあるお酒が入った冷蔵庫を開けて、その酎ハイを取り出して、蓋を上げた。

「まずそうな匂いがしているなーーー。久弥君の弟の理久君が考案したんだよな。甘酒の研究をしていたんじゃ無かったのか……」
「理久はチョコに興味をもっているんだ。4月から開発部の社員だよ。サエキ酒造との交換社員だよ。役員でもあるんだ。これはサエキ酒造の若者ウケを狙った新規路線だって言い切っていたんだ。そこで、久弥にコマーシャルに出ろって命令していたんだけど、久弥が出なかったから、売れ行きがいまいちなんだって文句を言っていたよ」
「今度の株主総会でツッコミをウケそうだな。役員を辞めさせろって……。まあ、いいんじゃないか。マズいって評判になって、人の心の中に残ったんだ。ああーーー、マズい!」
「青汁のコマーシャルみたいだね」

 アレクシスさんが本当にマズそうな顔をしながら、酎ハイを飲み干した。俺は酒類は禁止されているから、匂いだけしか嗅いでいない。チョコのふんわりして匂いがして美味しそうだと思ったのに、そんなにマズいのか。

「そんなにマズい?」
「ああ、炭酸の入ったチョコレートなんだぞ。チョコレート入りカクテルを発売する方が良かっただろう。SNSに書いてあったぞ。迷走している商品開発って……」
「全部、理久のアイデアなんだ。どうせ僕は馬鹿息子なんだから、馬鹿な商品ばかり出して、会社を潰してやるって言っているよ。冗談だけどね。理久はバカなんかじゃないよ。すごく真面目なんだ」
「そうだろうな。しっかりしていると聞いている。そうか、佐伯さんの家でも騒動があったのか……」
「うん。お父さんが恋人に貢ぎすぎて、家が傾きかけたんだって言っていたよ。ロマンス詐欺の疑いで警察が捜査をしているんだ。だから、お父さんに譲られずに、亡くなったおじいさんの遺言により、おじいさんの財産や会社の権利は、全部理久に渡されたんだ。会社のことは信頼してる親戚の叔父さんに譲って、後はおじいさんの貯金を使って、なんとか持ちこたえたんだ。はあーーーー」

 また気持ちが沈む話になってしまった。こんな時は一貴さんの出番だ。理久とは友達だし、久弥とも仲が良い。なにか良い話題を提供してくれそうだ。

「カズ兄さんを呼んでくるよ。さっき、愛しの修輔君から電話が入って、部屋に籠もっているんだ」
「邪魔をすると悪い。……そうか、呼んでくるのか」
「うん。行ってくるよ」

 そう言って、俺は椅子から立ち上がった。姿が見えないと心配でもある。今日のこともある。藤沢には、俺の方から親子鑑定のことを伝えたから、一貴さんに電話を掛けてくれたのだろうと思った。
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