524 / 938
15-22(夏樹視点)
しおりを挟む
18時。
病室のベッドで寝ているところだ。伊吹は飛行機に乗って向こうに行っている頃だ。長谷部さんと聡太郎達は一貴さんとユーリーとで食事に出かけて、その後で帰っていった。お義父さんは二葉と一緒に家で留守番をしている。
俺のそばには黒崎がいる。今さっき、夕食を受け取りに行ってくれたところだ。鶏胸肉のトマト煮込みの匂いがたしかにしていた。さっきからお腹が空いていて、何か食べたいと思っていた。黒崎が買ってきてくれたプリンは食べてある。ゼリーはデザートにするか、明日の朝にしようと思っている。
「黒崎さん。ありがとう。あんたは食べなくて良いの?」
「用意してある。出前のカツサンドだ。うな重もある」
そう言って、黒崎が紙袋を見せてきた。ちょうど今のタイミングで届いたそうだ。ここの病院と言えば、カツサンドとうな重だ。俺が入院したとき、黒崎がここで食べていた。検診の帰りにもテイクアウトすることもある、すっかりお馴染みの店だ。
俺はカツサンド達の良い匂いを嗅ぎながら、いいなあとつぶやいた。少し分けて貰いたい。しかし、お腹に入りそうもない。病院の夕食だけでお腹がいっぱいになりそうだ。
ガラ。黒崎がテーブルをベッドに寄せてきた。これで一緒に食べられる。テーブルの上に夕食を並べて、お茶を煎れて、さあ、開始だ。お茶は黒崎が煎れてくれた。
「黒崎さん。手つきが良いねえ。さすがは元秘書だよ。家でも入れてくれると良いのに……」
「お前が煎れる方が美味い。適材適所だ。今日はお前は病人だ。じっとしておけ」
「ふうん。家で煎れるとき、お茶の葉をまき散らすくせに……」
「細かいところには気がつかない。ここは不思議とよく見えるし、落ち着く」
「ふうん……」
黒崎の言っていることは正しい。たしかにここは落ち着く。ざわざわしているのは廊下で、部屋の中に入ると静かだ。だから、すぐに眠気が起きる。夕方に黒崎が着替えを持って戻ってきた後、俺は安心して寝てしまった。だから、卒業式の動画をまだ全部見ていない。
「黒崎さん。一緒に観ようよ」
「ああ。タブレットを持って来て良かった。お前に観る元気もあって良かった」
「うん。痛み止めが効いて楽になったよ。退院するとき、痛み止めを貰えるんだ。仕事に備えてさ。でも、また酷い頭痛が起きたら、どうしよう」
この発想は消えるわけがない。月曜日と火曜日だけは持ちこたえたい。デビュー曲の発表当日も忙しい。特に聡太郎と大和と琉芯のお披露目をしないといけないから、テレビの生番組にも出る。テレビに出ないアーティストがいるが、俺達は積極的に出る方を選んだ。バラエティー番組にもだ。羽音さんがお手本で、俺達は真似をさせて貰っている。
「夏樹。寝ているときに、羽音さんからラインが入っていたぞ。返事は後で良いと書いてあった」
「そっか。あんたが見てくれたんだね。なんて書いてあった?」
「大丈夫か、心配していると書いてくれていた」
「今、返信するよ」
俺はスマホを手に取った。誰でも読めるように、スマホにロックは掛けていない。仕事で移動するときはロックを掛けた方が良いが、何かあったときのためにそうしていない。仕事にはいつも長谷部さんがついてくれているから落とし物の心配が無い。いつでも誰でも俺のスマホの中が見れるようになっている。
それはどうしてかというと、俺の体調不良のときに代わりに誰でも電話に出られるようにしておくということと、仕事での付き合いをオープンにするためだ。それと、麻薬の関係で疑いを持たれないためだ。所持と使用。もしも疑いを掛けられたときに、俺の交友関係がオープンになっていて、繋がりがないことが証明されるからだ。警察から疑われたり、噂をされると厄介だ。
それに、黒崎にもオープンにしたいからでもある。勝手にラインを見てもいいということにしてある。その代わり、既読になっても返信していないことを防ぐために、見たらきちんと報告して貰っている。羽音さんはそれを知っているから、少し返信が遅くなっても、黒崎が代わりに見たのだと知ってくれている。
病室のベッドで寝ているところだ。伊吹は飛行機に乗って向こうに行っている頃だ。長谷部さんと聡太郎達は一貴さんとユーリーとで食事に出かけて、その後で帰っていった。お義父さんは二葉と一緒に家で留守番をしている。
俺のそばには黒崎がいる。今さっき、夕食を受け取りに行ってくれたところだ。鶏胸肉のトマト煮込みの匂いがたしかにしていた。さっきからお腹が空いていて、何か食べたいと思っていた。黒崎が買ってきてくれたプリンは食べてある。ゼリーはデザートにするか、明日の朝にしようと思っている。
「黒崎さん。ありがとう。あんたは食べなくて良いの?」
「用意してある。出前のカツサンドだ。うな重もある」
そう言って、黒崎が紙袋を見せてきた。ちょうど今のタイミングで届いたそうだ。ここの病院と言えば、カツサンドとうな重だ。俺が入院したとき、黒崎がここで食べていた。検診の帰りにもテイクアウトすることもある、すっかりお馴染みの店だ。
俺はカツサンド達の良い匂いを嗅ぎながら、いいなあとつぶやいた。少し分けて貰いたい。しかし、お腹に入りそうもない。病院の夕食だけでお腹がいっぱいになりそうだ。
ガラ。黒崎がテーブルをベッドに寄せてきた。これで一緒に食べられる。テーブルの上に夕食を並べて、お茶を煎れて、さあ、開始だ。お茶は黒崎が煎れてくれた。
「黒崎さん。手つきが良いねえ。さすがは元秘書だよ。家でも入れてくれると良いのに……」
「お前が煎れる方が美味い。適材適所だ。今日はお前は病人だ。じっとしておけ」
「ふうん。家で煎れるとき、お茶の葉をまき散らすくせに……」
「細かいところには気がつかない。ここは不思議とよく見えるし、落ち着く」
「ふうん……」
黒崎の言っていることは正しい。たしかにここは落ち着く。ざわざわしているのは廊下で、部屋の中に入ると静かだ。だから、すぐに眠気が起きる。夕方に黒崎が着替えを持って戻ってきた後、俺は安心して寝てしまった。だから、卒業式の動画をまだ全部見ていない。
「黒崎さん。一緒に観ようよ」
「ああ。タブレットを持って来て良かった。お前に観る元気もあって良かった」
「うん。痛み止めが効いて楽になったよ。退院するとき、痛み止めを貰えるんだ。仕事に備えてさ。でも、また酷い頭痛が起きたら、どうしよう」
この発想は消えるわけがない。月曜日と火曜日だけは持ちこたえたい。デビュー曲の発表当日も忙しい。特に聡太郎と大和と琉芯のお披露目をしないといけないから、テレビの生番組にも出る。テレビに出ないアーティストがいるが、俺達は積極的に出る方を選んだ。バラエティー番組にもだ。羽音さんがお手本で、俺達は真似をさせて貰っている。
「夏樹。寝ているときに、羽音さんからラインが入っていたぞ。返事は後で良いと書いてあった」
「そっか。あんたが見てくれたんだね。なんて書いてあった?」
「大丈夫か、心配していると書いてくれていた」
「今、返信するよ」
俺はスマホを手に取った。誰でも読めるように、スマホにロックは掛けていない。仕事で移動するときはロックを掛けた方が良いが、何かあったときのためにそうしていない。仕事にはいつも長谷部さんがついてくれているから落とし物の心配が無い。いつでも誰でも俺のスマホの中が見れるようになっている。
それはどうしてかというと、俺の体調不良のときに代わりに誰でも電話に出られるようにしておくということと、仕事での付き合いをオープンにするためだ。それと、麻薬の関係で疑いを持たれないためだ。所持と使用。もしも疑いを掛けられたときに、俺の交友関係がオープンになっていて、繋がりがないことが証明されるからだ。警察から疑われたり、噂をされると厄介だ。
それに、黒崎にもオープンにしたいからでもある。勝手にラインを見てもいいということにしてある。その代わり、既読になっても返信していないことを防ぐために、見たらきちんと報告して貰っている。羽音さんはそれを知っているから、少し返信が遅くなっても、黒崎が代わりに見たのだと知ってくれている。
0
あなたにおすすめの小説
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
黒獅子の愛でる花
なこ
BL
レノアール伯爵家次男のサフィアは、伯爵家の中でもとりわけ浮いた存在だ。
中性的で神秘的なその美しさには、誰しもが息を呑んだ。
深い碧眼はどこか憂いを帯びており、見る者を惑わすと言う。
サフィアは密かに、幼馴染の侯爵家三男リヒトと将来を誓い合っていた。
しかし、その誓いを信じて疑うこともなかったサフィアとは裏腹に、リヒトは公爵家へ婿入りしてしまう。
毎日のように愛を囁き続けてきたリヒトの裏切り行為に、サフィアは困惑する。
そんなある日、複雑な想いを抱えて過ごすサフィアの元に、幼い王太子の世話係を打診する知らせが届く。
王太子は、黒獅子と呼ばれ、前国王を王座から引きずり降ろした現王と、その幼馴染である王妃との一人息子だ。
王妃は現在、病で療養中だという。
幼い王太子と、黒獅子の王、王妃の住まう王城で、サフィアはこれまで知ることのなかった様々な感情と直面する。
サフィアと黒獅子の王ライは、二人を取り巻く愛憎の渦に巻き込まれながらも、密かにゆっくりと心を通わせていくが…
妖精です、囲われてます
うあゆ
BL
僕は妖精
森で気ままに暮らしていました。
ふと気づいたら人間に囲まれてました。
でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。
__________
妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精
なんやかんやお互い幸せに暮らします。
守り守られ
ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師
患者 瀬咲朔
腸疾患・排泄障害・下肢不自由
看護師
ベテラン山添さん
準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん
木島 尚久 真幌の恋人同棲中
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
きっと必ず恋をする~初恋は叶わないっていうけど、この展開を誰が予想した?~
野々乃ぞみ
BL
渡辺 真詞(わたなべ まこと)は小さい頃から人ではないモノが見えた。
残念ながら話もできたし、触ることもできた。
様々なモノに話しかけられ、危ない目にもあってきた。
そんなとき、桜の下で巡(めぐる)に出会った。
厳しいけど優しい巡は特別な存在になった。
きっと初恋だったのに、ある日忽然と巡は消えた。
それから五年。
地元から離れた高校に入った十六歳の誕生日。
真詞の運命が大きく動き出す。
人とは違う力を持つ真詞が能力に翻弄されつつも、やっと再会した巡と恋をするけど別れることになる話。(前半)
別れを受け入れる暇もなくトレーニングが始まり、事件に巻き込まれて岬に好かれる話。(後半)
・前半 巡(人外)×真詞
・後半 岬(人間)×真詞
※ 全くの別人ではありませんが、前半と後半で攻めが変わったと感じるかもしれません。
※ キスを二回程度しかしないです。
※ ホラーではないつもりですが、途中に少し驚かすようなシーンがあります。ホラーのホの字もダメだという方は自己判断でお願いします。
※ 完結しました。遅くなって申し訳ありません。ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる