青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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15-22(夏樹視点)

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 18時。

 病室のベッドで寝ているところだ。伊吹は飛行機に乗って向こうに行っている頃だ。長谷部さんと聡太郎達は一貴さんとユーリーとで食事に出かけて、その後で帰っていった。お義父さんは二葉と一緒に家で留守番をしている。

 俺のそばには黒崎がいる。今さっき、夕食を受け取りに行ってくれたところだ。鶏胸肉のトマト煮込みの匂いがたしかにしていた。さっきからお腹が空いていて、何か食べたいと思っていた。黒崎が買ってきてくれたプリンは食べてある。ゼリーはデザートにするか、明日の朝にしようと思っている。

「黒崎さん。ありがとう。あんたは食べなくて良いの?」
「用意してある。出前のカツサンドだ。うな重もある」

 そう言って、黒崎が紙袋を見せてきた。ちょうど今のタイミングで届いたそうだ。ここの病院と言えば、カツサンドとうな重だ。俺が入院したとき、黒崎がここで食べていた。検診の帰りにもテイクアウトすることもある、すっかりお馴染みの店だ。

 俺はカツサンド達の良い匂いを嗅ぎながら、いいなあとつぶやいた。少し分けて貰いたい。しかし、お腹に入りそうもない。病院の夕食だけでお腹がいっぱいになりそうだ。

 ガラ。黒崎がテーブルをベッドに寄せてきた。これで一緒に食べられる。テーブルの上に夕食を並べて、お茶を煎れて、さあ、開始だ。お茶は黒崎が煎れてくれた。

「黒崎さん。手つきが良いねえ。さすがは元秘書だよ。家でも入れてくれると良いのに……」
「お前が煎れる方が美味い。適材適所だ。今日はお前は病人だ。じっとしておけ」
「ふうん。家で煎れるとき、お茶の葉をまき散らすくせに……」
「細かいところには気がつかない。ここは不思議とよく見えるし、落ち着く」
「ふうん……」

 黒崎の言っていることは正しい。たしかにここは落ち着く。ざわざわしているのは廊下で、部屋の中に入ると静かだ。だから、すぐに眠気が起きる。夕方に黒崎が着替えを持って戻ってきた後、俺は安心して寝てしまった。だから、卒業式の動画をまだ全部見ていない。

「黒崎さん。一緒に観ようよ」
「ああ。タブレットを持って来て良かった。お前に観る元気もあって良かった」
「うん。痛み止めが効いて楽になったよ。退院するとき、痛み止めを貰えるんだ。仕事に備えてさ。でも、また酷い頭痛が起きたら、どうしよう」

 この発想は消えるわけがない。月曜日と火曜日だけは持ちこたえたい。デビュー曲の発表当日も忙しい。特に聡太郎と大和と琉芯のお披露目をしないといけないから、テレビの生番組にも出る。テレビに出ないアーティストがいるが、俺達は積極的に出る方を選んだ。バラエティー番組にもだ。羽音さんがお手本で、俺達は真似をさせて貰っている。

「夏樹。寝ているときに、羽音さんからラインが入っていたぞ。返事は後で良いと書いてあった」
「そっか。あんたが見てくれたんだね。なんて書いてあった?」
「大丈夫か、心配していると書いてくれていた」
「今、返信するよ」

 俺はスマホを手に取った。誰でも読めるように、スマホにロックは掛けていない。仕事で移動するときはロックを掛けた方が良いが、何かあったときのためにそうしていない。仕事にはいつも長谷部さんがついてくれているから落とし物の心配が無い。いつでも誰でも俺のスマホの中が見れるようになっている。

 それはどうしてかというと、俺の体調不良のときに代わりに誰でも電話に出られるようにしておくということと、仕事での付き合いをオープンにするためだ。それと、麻薬の関係で疑いを持たれないためだ。所持と使用。もしも疑いを掛けられたときに、俺の交友関係がオープンになっていて、繋がりがないことが証明されるからだ。警察から疑われたり、噂をされると厄介だ。

 それに、黒崎にもオープンにしたいからでもある。勝手にラインを見てもいいということにしてある。その代わり、既読になっても返信していないことを防ぐために、見たらきちんと報告して貰っている。羽音さんはそれを知っているから、少し返信が遅くなっても、黒崎が代わりに見たのだと知ってくれている。
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