青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 ふうっとため息をついた。俺はこの家の人間であり、実家よりも優先しろと両親から言い聞かされてある。実家のことは任せておけばいい。しかし、最近になって中山家の祖父母に会いたいと思うようになった。3月に一度だけ祖父と話が出来て、4月に入ってもう一度電話での短い会話をした。祖母とは話ができていない。いつか話さないといけないだろうと思うと気が重い。祖父との時のように、俺の方が悪いことをした気分になれるだろうか。

 この件をお父さんに相談すると、こう言っていた。祖母は祖母で人生においてやらなければならないことがあり、俺は俺なのだと。無理に会うことはしなくていいのだと。電話だってしなくていいのだと言ってくれた。だからその時は気が晴れて、このままで良いと思った。しかし、お義父さんはそんな俺にこう言った。家族という物を作っても、自ら諍いを起して疎遠になり、将来は孤独になるのは、家族を作ったときには考えていなかったのかも知れないのだと。運命は常に動いている。家族が居るから幸せなんて思っても、きちんと話をして関係作りが出来なかったら、自分のようになってしまうのだと。

 そこで俺はこう聞いた。今は幸せになっているかと。お義父さんは答えた。そうだよと。こんなに人が集まってくるなんて思わなかったと言ってくれた。そのお手伝いができたことを、俺は嬉しく思った。

「ユーリー。やっぱりお線香を焚きたいな」
「そうしようか。どれにする?色々あるよ」
「ほんとだ。何種類もあるね。このお線香は忠明叔父さんが持って来てくれたんだ。聖河さんが受ける財産分与のことで話に来たときだよ。聖河さん、やっぱり要らないって言ったんだって……」
「そうだったのか。だから、叔父さんが来ていたのか。この家の養子になる話も断るそうだから、その話もあったんだろう」

 聖河さんのことでは彼の身の回りに変化が起きた。実のお父さんの家のおばあさんから譲られることになった都内にあるアパート物件のことだが、贈与を受けるのをやめたということだった。内田家の人と接してみて、やっぱり関わりたくないという思いが強くなったからだった。しかし、おばあさんの方は受け取ってくれという。そこで会いに行って、集まった内田家の親戚の人の前で要らないとはっきり断ると、彼らがホッとしていたという。聖河さんはその顔を見逃さなかった。祟りだなんて言って大騒ぎしていたくせに、いざ財産を渡すとなるとこの反応かと思い、呆れたそうだ。そこで、もうお別れを決めたそうだ。一円も要らないと言ってきたそうだ。しかし、まだ内田家のおばあさんとは話し合いが続いているそうだ。

 そこで、不動産取引のことで法事の時から忠明叔父さんが聖河さんの相談役になった。内田家のことを嫌がる聖河さんに、子供の頃のときと同じように、黒崎家との養子縁組のアイデアがされた。黒崎家の養子になれば、内田家の人も追いかけては来ないだろうと思ってのことだ。もう別の家の人間になりました、ということだ。

 それには聖河さんは断った。自分は山岸家の人間だからだということだった。お義父さんの実子がたくさんいる中、自分が養子にならなくても良いだろうという考えからだ。そして、山岸家のお祖父さんの反対もあった。聖河さんだけが跡取り息子では無いが、お祖父さんはお義父さんのことが嫌いだから、黒崎家の養子になるなということだった。しかし、忠明叔父さんは聖河さんのことを気に入り、黒崎家のメンバーになってほしいと希望した。とてもいい人だからだ。しかし、聖河さんにはその気は無くて、色々とありがたい話を蹴っている現状に戸惑いがあるそうだ。

「忠明叔父さんってさ。聖河さんのことが好きになったんだ。可愛いって言うんだ。俺にもデザートを持ってきてくれてさ~。お義父さんがね、年を取ると変わるなあって言っていたんだ。黒崎さん。そうだよね?あ……」
「……」

 俺達は口を閉じた。今、黒崎が仏壇の前で手を合わせ始めたからだ。なんだか荘厳なイメージがある。そして、隣の祭壇の前に行き、拓海さんの十字架を手に取り、見つめ始めた。
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