青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 そういうことがあるから、ローザーさんは今度実家の家族に会うという人が相談に来たときに、こうアドバイスするそうだ。今の自分の状況を何も話すなと。お兄さんは今の自分の状況だけで判断して、弟や妹に刃を向けたことになる。人生は分からない物だ。法的な手続き、例えば相続のことで連絡を取りたいという問い合わせが入ったとき、弟や妹を頼らないといけないことがある。お兄さんだけが安泰なわけがない。俺に迷惑を掛けるなという人に限って頼ってくるケースが多いらしい。そういうときはやり返しができる。協力しなければいい。例えば、親の遺産相続だ。いくら待っても連絡の取れない妹と、早く遺産分割して財産を手に入れたいお兄さんという状況だ。それはお兄さんの死後も整理が付かないままのケースもある。

 仲が良かった弟が病に倒れたり、姉が入院したりしたとき、知らぬ顔をする兄弟がいる。元から腹の底では忌々しく思っていたケースと、そのことで見捨てたケースがある。そうなればもう赤の他人であり、親から命令されたからといって、兄弟がいる祖父母の葬儀に出なければいい。葬儀の日に家から手を合わせればいいと、月島さんが言っていた。ローザーさんも同じ意見だ。実家には連絡先を教えていなかったとして、葬儀があったかどうかまで分からなくて、多分もう生きていないと思ったら、その時に手を合わせることもできるのだそうだ。

 黒崎が言うには、北添さんにはお兄さんがいるそうだ。仲が良いと良いのだがと言った。こういう時、黒崎の本音が出ている。仲が悪いという直感が当たるケースになる。お義父さんやローザーさんが言っていた話のように、こじれていなければ良い。精神的な病で、ますます心が疲弊してしまう。

 一貴さんがそうだった。誰にも心が開けずにいて、自分は一人で死んでいくのだと思っていたそうだ。そんな中、お義父さんの家に引っ越してきて、自分の心の中をさらけ出してしまった。今は開けっ放しのドアのようになっている。今、ユーリーに話しかけている。

「ユーリー。君のためにシャツをプレゼントしたい。それに合わせてネクタイも贈る」
「ありがとう。でも、ネクタイは遠慮する。君が外したがるからだ」
「それはそうだ。いい男のネクタイは外したい」
「もう、やめろよ~」

 教授が驚いた顔をして、一貴さんのことを見ている。だんだんと、かっこいい人から変な人に印象が変わっていった感じがする。しかし、人生相談といえば、教授だ。大学の授業では特別講演や心理学の先生を呼んでの時間もあった。意見を聞いてみたい。

「教授。人生は様々ですよね。人の病をあざ笑う社員がいるだなんて、悲しい限りです」
「大学でも同じだ。優秀な生徒がいたとして、彼が病気療養に入ったときに喜ぶ生徒がいる。学生時代の友達こそ、一生の友達だと言っている先生がいるが、僕はそう思わない。いつだって友達が出来る機会があるんだ。競争の中にいても心から打ち解けられる友達ができたなら、宝物になる。友達が出来ない人もいる。いなくなった人もいる。それを笑う人にもいる。馬鹿にする人もいる。ねちっこい人ということだ。その人は決して幸せになれない」
「そうですよね。教授がいてよかったです。黒崎さんなんか、因果応報って言葉を使うので、怖いんです」
「僕だってそれは思うよ。天国に行こうとしたとき、穴に落とされることはしたくない。ねちっこく人のことをあざ笑う人が、一生のうちで何も起こっていないように見えて、実際にそうだとしても、心の中はそうではないと思うよ。あざ笑っておいて、自分のコンプレックスと戦っている。人のことが怖いから、攻撃する。恐れがあるんだ」
「教授。俺、教授の生徒で良かったです。うっうっ。晴海お兄ちゃんのことをよろしくお願いします」

 俺が感動していると、黒崎が引っ越しのお兄さんの元に行った。たしか、風林さんという人だ。彼の元にまっすぐに向かった。風林さんはぎょっとした顔をしている。一体どうしたのだろうか。そして、黒崎が話しかけて、名刺を押しつけていた。風林さんは断っている。しかし、黒崎は譲らない。そして、とうとう名刺を押しつけて、こっちに戻ってきてしまった。黒崎の顔は晴れ晴れとしていた。
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