710 / 938
20-31
しおりを挟む
黒崎家のお墓は東京近郊にある。元は海運業で栄えた黒崎家は、元は武家だった。それが江戸時代に商人を始めて、それが呉服屋だった。そして、機織り工場を経営し、様々な文様の織物を発表する場を作るなど、アーティスト支援も行っていたという。
うちの家に残っているのは、30センチ×50センチの織物数点だ。木の枠にはめられており、柄を楽しむために家の中に飾られるわけだ。昔の人はお店でこれらを買い求めて、絵画を楽しむように見ていたということだ。しかし、戦争が起きたことで火災で焼けたり、物資を買うために売ったりして、作品はほとんど残っていない。明日食べるお米を買うためだったという。
海運業を始めたのは江戸時代の終わりからで、当時は大きな船を所有していたそうだ。そこで、海外から運ばれてきた輸入品が入ってきて、お菓子もあったそうだ。そこで黒崎家は注目し、明治時代から御菓子を作るようになり、戦後からチョコレートを製造するようになり、今の黒崎製菓が出来上がった。
アンリと秀悟さんは黒崎製菓の形を作った人と言える。お菓子を作ろうと提案したのが、その2人だからだ。俺は一度で良いから会ってみたかった。タイムマシンがあるのなら、過去に行ってみたいと思う。
「お義父さん。お墓参りには今日行ってみない?黒崎さんと二葉は仕事中だけどさ」
「そうだね。私もそれを考えていた。しかし、みんなで行った方がいいだろう。今度の土曜日はどうだろうか」
「俺なら大丈夫だよ。あ……。番組の宣伝が始まったよ。心霊番組のナレーションは夏樹と聡太郎君だって言ってくれているよ」
すると、テレビで夏の心霊番組の話題が出た。そこで、俺が出ている番組が宣伝された。放映日と、見どころとして、ディスレクトサイドゼロのナツキと聡太郎がナレーションを担当したと司会者が言って、情報番組の中で出演者からの拍手が起きた。
「……ディスレクトサイドゼロといえば、デビュー曲の“I still love you”ですね。4月10日発表の今流れている曲はダウンロード数が……回で、繊細と言われていた声のナツキさんのボーカルが力強くなり、新たな魅力があります。今回はそのナツキさんと、ギターの聡太郎さんがナレーションを担当されました。その様子がこちらです」
司会者がそう言うと、この間のスタジオでの光景が流れ始めた。俺と聡太郎が並び合ってナレーションを吹き込んでいるところだ。手に持っているお茶はメーカー名がしっかりと映し出されている。番組の協賛企業だからだろう。こういうところも気を付けないといけないのだと知り、カメラマンは大変だと思った。そして、黒崎製菓のお菓子も映った。控え室のテーブルに置かれたものがロングショットで映っていた。
「お義父さん。ここは冒頭の部分を吹き込んだシーンだよ。俺、緊張してさ……」
「そうか。出来上がりは良いと言っていたじゃないか。放映が楽しみだ。ん、ユーリー、どうしたんだ?」
「アンドリューの爪が伸びている。切った方が良い。この子は爪とぎしないから、伸びるのが早い」
ユーリーがアンドリューを抱いている。アンは暑いからソファーの上に座って、扇風機の風に当たり続けている。ユリウスは一貴さんの肩の上にいる。何とものどかな光景だ。
「ユーリー、怪我した?」
「いいや、大丈夫だ。子猫の爪は痛いものだ。このままだと何かに引っかかりそうだ。しかし、爪とぎしない猫は珍しい。トイレの後に砂を掛けないのもなあ」
「そうなんだよ。母猫から引き離されて、同居猫もいないから分からなかったんだと思うよ。本能でやるって聞いたことがあるんだけど、この子の場合はそうじゃないみたいだね。それにして、アンドリューはユーリーのことが好きだなあ」
そう言って、俺はアンドリューのことを見つめた。初めて会ったときからユーリーのことが好きで、姿を見つけたときはそばに行っている。
すると、一貴さんが焦った声を出した。ユリウスがじたばたと逃げようとしたからだ。きっと、爪きりという言葉を聞いたからだと思う。彼もそろそろその時期だろう。
「カズ兄さん。ユリウスが震えているよ」
「そうなんだよ。細心の注意を払って切っているんだけど、この通り、怖がっている。爪ヤスリで整えられないからと試してみたけど、かえって怖がった」
「でも、切らないわけにはいかないもんねえ。あちこちに爪が引っかかるからね」
そう言って、俺はユリウスの爪を見た。結構伸びてきている。フェレットの爪は伸びるのは早いから、いつも一貴さんは彼の爪を切っている。そして、震えているユリウスが俺の肩の上に乗ってきた。昨日はシャンプーしてもらったそうで、良い匂いがすると思った。そして、ほっこりした気持ちになりながら、俺達はテレビ番組を見つめた。
うちの家に残っているのは、30センチ×50センチの織物数点だ。木の枠にはめられており、柄を楽しむために家の中に飾られるわけだ。昔の人はお店でこれらを買い求めて、絵画を楽しむように見ていたということだ。しかし、戦争が起きたことで火災で焼けたり、物資を買うために売ったりして、作品はほとんど残っていない。明日食べるお米を買うためだったという。
海運業を始めたのは江戸時代の終わりからで、当時は大きな船を所有していたそうだ。そこで、海外から運ばれてきた輸入品が入ってきて、お菓子もあったそうだ。そこで黒崎家は注目し、明治時代から御菓子を作るようになり、戦後からチョコレートを製造するようになり、今の黒崎製菓が出来上がった。
アンリと秀悟さんは黒崎製菓の形を作った人と言える。お菓子を作ろうと提案したのが、その2人だからだ。俺は一度で良いから会ってみたかった。タイムマシンがあるのなら、過去に行ってみたいと思う。
「お義父さん。お墓参りには今日行ってみない?黒崎さんと二葉は仕事中だけどさ」
「そうだね。私もそれを考えていた。しかし、みんなで行った方がいいだろう。今度の土曜日はどうだろうか」
「俺なら大丈夫だよ。あ……。番組の宣伝が始まったよ。心霊番組のナレーションは夏樹と聡太郎君だって言ってくれているよ」
すると、テレビで夏の心霊番組の話題が出た。そこで、俺が出ている番組が宣伝された。放映日と、見どころとして、ディスレクトサイドゼロのナツキと聡太郎がナレーションを担当したと司会者が言って、情報番組の中で出演者からの拍手が起きた。
「……ディスレクトサイドゼロといえば、デビュー曲の“I still love you”ですね。4月10日発表の今流れている曲はダウンロード数が……回で、繊細と言われていた声のナツキさんのボーカルが力強くなり、新たな魅力があります。今回はそのナツキさんと、ギターの聡太郎さんがナレーションを担当されました。その様子がこちらです」
司会者がそう言うと、この間のスタジオでの光景が流れ始めた。俺と聡太郎が並び合ってナレーションを吹き込んでいるところだ。手に持っているお茶はメーカー名がしっかりと映し出されている。番組の協賛企業だからだろう。こういうところも気を付けないといけないのだと知り、カメラマンは大変だと思った。そして、黒崎製菓のお菓子も映った。控え室のテーブルに置かれたものがロングショットで映っていた。
「お義父さん。ここは冒頭の部分を吹き込んだシーンだよ。俺、緊張してさ……」
「そうか。出来上がりは良いと言っていたじゃないか。放映が楽しみだ。ん、ユーリー、どうしたんだ?」
「アンドリューの爪が伸びている。切った方が良い。この子は爪とぎしないから、伸びるのが早い」
ユーリーがアンドリューを抱いている。アンは暑いからソファーの上に座って、扇風機の風に当たり続けている。ユリウスは一貴さんの肩の上にいる。何とものどかな光景だ。
「ユーリー、怪我した?」
「いいや、大丈夫だ。子猫の爪は痛いものだ。このままだと何かに引っかかりそうだ。しかし、爪とぎしない猫は珍しい。トイレの後に砂を掛けないのもなあ」
「そうなんだよ。母猫から引き離されて、同居猫もいないから分からなかったんだと思うよ。本能でやるって聞いたことがあるんだけど、この子の場合はそうじゃないみたいだね。それにして、アンドリューはユーリーのことが好きだなあ」
そう言って、俺はアンドリューのことを見つめた。初めて会ったときからユーリーのことが好きで、姿を見つけたときはそばに行っている。
すると、一貴さんが焦った声を出した。ユリウスがじたばたと逃げようとしたからだ。きっと、爪きりという言葉を聞いたからだと思う。彼もそろそろその時期だろう。
「カズ兄さん。ユリウスが震えているよ」
「そうなんだよ。細心の注意を払って切っているんだけど、この通り、怖がっている。爪ヤスリで整えられないからと試してみたけど、かえって怖がった」
「でも、切らないわけにはいかないもんねえ。あちこちに爪が引っかかるからね」
そう言って、俺はユリウスの爪を見た。結構伸びてきている。フェレットの爪は伸びるのは早いから、いつも一貴さんは彼の爪を切っている。そして、震えているユリウスが俺の肩の上に乗ってきた。昨日はシャンプーしてもらったそうで、良い匂いがすると思った。そして、ほっこりした気持ちになりながら、俺達はテレビ番組を見つめた。
0
あなたにおすすめの小説
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
妖精です、囲われてます
うあゆ
BL
僕は妖精
森で気ままに暮らしていました。
ふと気づいたら人間に囲まれてました。
でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。
__________
妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精
なんやかんやお互い幸せに暮らします。
守り守られ
ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師
患者 瀬咲朔
腸疾患・排泄障害・下肢不自由
看護師
ベテラン山添さん
準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん
木島 尚久 真幌の恋人同棲中
タトゥーの甘い檻
マリ・シンジュ
BL
執着系わんこ攻(大学生)× 高潔な美形教授受(30代)
どのお話も単体でお楽しみいただけます。
「先生、ここ……僕の瞳を入れるから。ずっと、僕だけを見てて」
真面目な大学教授・新城が、大学生の・羽生にだけ許した、あまりにも淫らな「わがまま」。
それは、誰にも見えない内腿の奥深くに、消えないタトゥーを刻むこと。
「下書き」と称して肌を赤く染めるペン先の冷たさ。
アトリエの無機質なライトの下、四つん這いで晒される大人の矜持。
ずっと年下の青年の、必死で、残酷で、純粋な独占欲。
愚かだと知りながら、新城はその熱に絆され、ゆっくりと「聖域」を明け渡していく――。
「……お前のわがままには、最後まで付き合う」
針が通るその時、二人の関係は一生消えない「共犯」へと変わる。
執着攻め×年上受け、密やかに刻まれる秘め事のお話。
若頭の溺愛は、今日も平常運転です
なの
BL
『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』続編!
過保護すぎる若頭・鷹臣との同棲生活にツッコミが追いつかない毎日を送る幼なじみの相良悠真。
ホットミルクに外出禁止、舎弟たちのニヤニヤ見守り付き(?)ラブコメ生活はいつだって騒がしく、でもどこかあったかい。
だけどそんな日常の中で、鷹臣の覚悟に触れ、悠真は気づく。
……俺も、ちゃんと応えたい。
笑って泣けて、めいっぱい甘い!
騒がしくて幸せすぎる、ヤクザとツッコミ男子の結婚一直線ラブストーリー!
※前作『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』を読んでからの方が、より深く楽しめます。
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
お腹いっぱい、召し上がれ
砂ねずみ
BL
料理研究家でαの藤白蒼は幼なじみで10個下のΩ晃と番になった。そんな二人の間に産まれた照は元気いっぱいな男の子。泣いたり、笑ったり、家族の温かみを感じながら藤白家の日常が穏やかに進んでいく。
そんな愛する妻と愛する息子、大切な家族のお腹いっぱい喜ぶ顔が見たいから。蒼は今日も明日もその先も、キッチンに立って腕を振るう。
さあ、お腹いっぱい、召し上がれ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる