青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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22-15(夏樹視点)

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 17時半。

 今夜の晩ご飯は日本食だ。コックさんが来てくれて、盛り付けをやってくれている。キッチンの中には白い服を着た人がいて、まるで料亭のようになっている。なんて豪華なのだろう。どこかの店に行く案もあったが、エミリアさんにとっては初日の晩ご飯はこの家で食べる方が良いだろうということになって、こうすることにした。

 たった今、一貴さんが会社から帰ってきた。今日は早めに出たそうだ。いつもよりも早い。エミリアさんにお土産を持って帰ってきた。プラセルで作っている洋服だという。大きなリボンをかけた箱を持って入ってきた。俺は彼のことをリビングで迎えた。

「カズ兄さん、おかえりなさい」
「ただいま。エミリアさんはどこだ?」
「今、部屋から出てくるよ。さっきまで寝ていたんだ。さすがに時差には勝てないってさ。長旅だったし」
「そうか。夏樹君、僕はどこか変じゃないか?」

 一貴さんが自分のスーツ姿を指した。昼間と同じだ。どこも変ではない。汗臭いとかいうことだろうか。しかし、そんなことはない。清潔感に溢れている。

「大丈夫だよ。汗臭いっていうの?」
「いや、汗は掻いていない」
「大丈夫だよ。多少汗を掻いていても仕方が無いと思うんだ。外は暑いもん。車ではクーラーを効かせていたっていっても、多少はねえ」
「良かった。あ……」

 すると、エミリアさんが下りてきた。ユーリー達の話し声がするから分かった。一貴さんとしては緊張の瞬間のようで、身体をこわばらせた。俺はそれを見て、とても可哀想だと思った。エミリアさんは事情を知っているから多少何かあっても許してくれるだろう。そう言っていたからだ。可哀想にと。

「カズ兄さん。リラックスしてね」
「あ、ああ……。あの人はお母さんじゃない。あの人はお母さんじゃない……」
「泣けてくるよ~」

 すでに蓮子さんのことは怖くなくなっている一貴さんだし、法事の時に彼女が誰かに喧嘩を吹っかけたときには止めに入っていたが、トラウマというのはなかなか解消されず、このように身体が反応してしまう。今、一貴さんの身体がカチコチになった。

「エミリアさんだよ」
「あ、ああ……」

 エミリアさんがリビングに入ってきた。ワンピースを着ている。一貴さんが緊張した顔をしているからなのか、彼女も緊張したような顔になっていた。そして、二人が対面した。お昼ご飯の時に画面越しに会っているが、直接会うとなるとまた違いがあるようだ。

「エミリアさん!一貴です!」
「おかえりなさい。改めまして、初めまして。エミリア・バーテルスです」
「お会いしたかったです!」

 二人が寄り添うようにして立った。そして、一貴さんからプレゼントが渡された。滞在中に来てもらいたい服の詰め合わせだそうだ。プラセルのブランドの中からエミリアさんに似合いそうなものを選んだそうだ。そして、希望があればオーダーメイドも受けると言っている。

「まあ、すみません。なるべく荷物を軽くしてきたので、こっちでいくつか服を買おうかと思っていたんです」
「そうでしょう。今年の夏も暑いですから、何枚でも着替えがあるといいと思いました。どの服も肩の凝らないデザインばかりです」
「開けても良いですか?」
「もちろんです!」
「どんなのかな~?ワクワクするね~」

 エミリアさんがリボンを解いた。そして、テーブルの上に置いた箱を開封した。一番最初に入っていたのは、紺色の生地のワンピースだった。2枚目にあったのはトップスで、花柄だ。下にはそれに合わせるスカートが入っていた。下にも何かある。それは花柄のワンピースだった。同じ花柄でもイメージが違っていて、とてもお洒落だと思った。ブランドの名前はビザンテというそうだ。

「どれも素敵だわ。ありがとうございます」
「ぜひ着て下さい。どれも涼しい素材で作ってあります。庭の探索をされたいということで、ズボンを入れておこうと思ったのですが、丈がわからなかったので、スカートを選びました」
「スカートは大好きです。もちろん、ズボンも履きますけどね。お腹周りが楽そうなスカートだわ。早速着たいわ。着替えてきます」
「はい!」

 一貴さんが顔を赤くして笑顔で頷いた。親しくなりたいという気持ちは本物だ。それなのに、こんなに緊張するなんてやっぱり可哀想だと思った。しかし、エミリアさんが笑顔で居るから助かっているようで、リビングを出て行く彼女のことを笑顔で見送っていた。
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