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古い物といえば、お義父さんの家にたくさんある。倉庫の中には年代物の記念品が山積みにされている。庭の噴水も倉庫にあった物だ。俺の腰までの高さのそれは、使ってもらえるのを待っていたかのように、出入り口の方に置かれていた。俺は倉庫に入る度に気になっていて、いつか使えないかなと思っていた。そして、また太陽の日差しの下で使うことになり、なんでも取っておくと便利だし、思い出が蘇って良いと思った。
「倉庫の話を書こうかな。うちの家は何でも取ってあってって……」
「僕も物が多いタイプだ。貴重な物もある。捨てるのはストップと言いたいと書いても良いだろう。この日記も年代物だなあ」
「庵里の日記。本当に古いよねえ。保存状態が良かったから、カビも生えていないし、湿ってもいないよ。ちょっと乾燥しているからページが取れそうではあるけど……」
パソコンの横にはアンリさんの日記を置いてある。少しずつ読み進めるためにだ。大学に頼めば解読して文章にしてくれるという。そこで、ユーリーの方から上楽先生に聞いてもらうと、ぜひ読みたいと言ってくれたそうだ。解読もしてくれるという。俺としてはありがたい話だった。そこで、近いうちに頼みに行くことにした。それまでの間、なるべく自分で読みたいと思って、読んでいるところだ。俺が思っていた解釈と違う内容があるかも知れない。それも楽しみだ。
ユーリーが日記のページを開いた。そして、スラスラと声に出して読み始めた。それに俺は驚いた。墨と筆で書かれた日記はところどころ字がつぶれて見えて、解読が難しい。しかし、達筆なようで、読みやすい方らしい。ユーリーが写真に撮って上楽先生に送り、そういう感想をもらったそうだ。
「ユーリー。あんた、本当に日本語が達者だよねえ」
「向こうの家の図書室でたくさん本を読んでいた。ドイツ語も習ったけど、僕は日本にいる物だと思っていたから、たくさん言葉を覚えておこうとしたんだ。日記も付けた。フランクフルトの実家に保管してあるよ」
「へえーーー。読みたいな。日本語で書いたの?それともドイツ語?」
「両方ある。母さんからの勧めで、どっちも書けるようにしろって。7歳から書いていたよ。8歳でここを去るときまで、毎日付けていた」
「ドイツに帰った後は付けていなかったの?」
「付けていたけど、やめたんだ。興味が外で遊ぶことに向いてね。心霊スポットに出かけることも始めた頃だった。近所にあったんだ」
「へえーーー」
ユーリーと話すと面白い。この家の昔の姿が蘇るからだ。アンリさんの日記も面白い。同じく、この家のことが分かるからだ。俺も日記を付けても良いかもしれないと思った。
「俺も日記を付けてみようかな。三日坊主で終わるかな」
「僕は読んでみたい。きっと、一貴さんのことばかり書いているんだろう。圭一もそう思わないか?」
「そう思う。あの兄貴の変な癖を書いているんだろう」
「そんなことは書かないよ。それにしても、今夜は楽しみだよ。カズ兄さんの社長さんとしての姿が見られるんだからさ。会食の席ではご飯をボロボロこぼさないし、飲み物も倒さないっていうことだから、そんなところが見られるなんて貴重だよ」
「あまり期待するな」
「言い過ぎだよ~」
黒崎の間髪入れない言い返しに、俺も言い返した。ユーリーはクスクスと笑っている。そして、日記をまた読み始めた。黒崎家が海運業を始めたときのことが書いてあるらしい。機織り工場と船とで忙しい毎日を送っているのが分かった。そして、朝ご飯に食べた物も書いてあるとのことだった。
「何を食べていたの?」
「めざしとご飯と汁だと書いてある」
「お漬物は?」
「それはないようだ。塩分を気にしてのことだろうか」
「そうだよねえ。この時代に血圧計なんか無かったはずだけど、アンリさんはブロナイザーに乗ってきたんだ。宇宙船に帰ったら血圧を測っていたかも知れないね。でも、そういうことはまだ見当たらないんだ」
「めざしが美味しいと書いてある。ああ、大根の漬物が出てきた。次の日のページに書いてある」
「ふうん。ユーリー、すごいね。俺、そんなにスラスラと読めないよ」
「ありがとう。自信を持つよ」
ユーリーが笑った。黒崎も笑っている。なんで穏やかな朝だろうか。昨日の朝なんて、俺と黒崎が喧嘩をした。朝ご飯の豆腐の食べ方についてだ。冷や奴にしたときのトッピングについてだ。もしかしたら、秀悟さんとの喧嘩のことも書いてあるかも知れないと思ったら、親近感が沸いた。
すると、アンがお義父さんに連れられて散歩から帰ってきた。そして、ユーリーが立ち上がり、お邪魔したねと言いながらお義父さんと帰っていった。その後ろ姿を見つめて手を振り、俺達は朝ご飯にすることにした。
「倉庫の話を書こうかな。うちの家は何でも取ってあってって……」
「僕も物が多いタイプだ。貴重な物もある。捨てるのはストップと言いたいと書いても良いだろう。この日記も年代物だなあ」
「庵里の日記。本当に古いよねえ。保存状態が良かったから、カビも生えていないし、湿ってもいないよ。ちょっと乾燥しているからページが取れそうではあるけど……」
パソコンの横にはアンリさんの日記を置いてある。少しずつ読み進めるためにだ。大学に頼めば解読して文章にしてくれるという。そこで、ユーリーの方から上楽先生に聞いてもらうと、ぜひ読みたいと言ってくれたそうだ。解読もしてくれるという。俺としてはありがたい話だった。そこで、近いうちに頼みに行くことにした。それまでの間、なるべく自分で読みたいと思って、読んでいるところだ。俺が思っていた解釈と違う内容があるかも知れない。それも楽しみだ。
ユーリーが日記のページを開いた。そして、スラスラと声に出して読み始めた。それに俺は驚いた。墨と筆で書かれた日記はところどころ字がつぶれて見えて、解読が難しい。しかし、達筆なようで、読みやすい方らしい。ユーリーが写真に撮って上楽先生に送り、そういう感想をもらったそうだ。
「ユーリー。あんた、本当に日本語が達者だよねえ」
「向こうの家の図書室でたくさん本を読んでいた。ドイツ語も習ったけど、僕は日本にいる物だと思っていたから、たくさん言葉を覚えておこうとしたんだ。日記も付けた。フランクフルトの実家に保管してあるよ」
「へえーーー。読みたいな。日本語で書いたの?それともドイツ語?」
「両方ある。母さんからの勧めで、どっちも書けるようにしろって。7歳から書いていたよ。8歳でここを去るときまで、毎日付けていた」
「ドイツに帰った後は付けていなかったの?」
「付けていたけど、やめたんだ。興味が外で遊ぶことに向いてね。心霊スポットに出かけることも始めた頃だった。近所にあったんだ」
「へえーーー」
ユーリーと話すと面白い。この家の昔の姿が蘇るからだ。アンリさんの日記も面白い。同じく、この家のことが分かるからだ。俺も日記を付けても良いかもしれないと思った。
「俺も日記を付けてみようかな。三日坊主で終わるかな」
「僕は読んでみたい。きっと、一貴さんのことばかり書いているんだろう。圭一もそう思わないか?」
「そう思う。あの兄貴の変な癖を書いているんだろう」
「そんなことは書かないよ。それにしても、今夜は楽しみだよ。カズ兄さんの社長さんとしての姿が見られるんだからさ。会食の席ではご飯をボロボロこぼさないし、飲み物も倒さないっていうことだから、そんなところが見られるなんて貴重だよ」
「あまり期待するな」
「言い過ぎだよ~」
黒崎の間髪入れない言い返しに、俺も言い返した。ユーリーはクスクスと笑っている。そして、日記をまた読み始めた。黒崎家が海運業を始めたときのことが書いてあるらしい。機織り工場と船とで忙しい毎日を送っているのが分かった。そして、朝ご飯に食べた物も書いてあるとのことだった。
「何を食べていたの?」
「めざしとご飯と汁だと書いてある」
「お漬物は?」
「それはないようだ。塩分を気にしてのことだろうか」
「そうだよねえ。この時代に血圧計なんか無かったはずだけど、アンリさんはブロナイザーに乗ってきたんだ。宇宙船に帰ったら血圧を測っていたかも知れないね。でも、そういうことはまだ見当たらないんだ」
「めざしが美味しいと書いてある。ああ、大根の漬物が出てきた。次の日のページに書いてある」
「ふうん。ユーリー、すごいね。俺、そんなにスラスラと読めないよ」
「ありがとう。自信を持つよ」
ユーリーが笑った。黒崎も笑っている。なんで穏やかな朝だろうか。昨日の朝なんて、俺と黒崎が喧嘩をした。朝ご飯の豆腐の食べ方についてだ。冷や奴にしたときのトッピングについてだ。もしかしたら、秀悟さんとの喧嘩のことも書いてあるかも知れないと思ったら、親近感が沸いた。
すると、アンがお義父さんに連れられて散歩から帰ってきた。そして、ユーリーが立ち上がり、お邪魔したねと言いながらお義父さんと帰っていった。その後ろ姿を見つめて手を振り、俺達は朝ご飯にすることにした。
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