青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 さて、みんなが席についた。すると、IKUの関連会社からの人が入ってきて、また賑やかになった。俺達は挨拶を済ませて、みんなで乾杯ということになった。乾杯の音頭は一貴さんがすることになった。水端さんからの希望だ。IKUからは飯野さんも来ていて、彼もそう言った。

 ザワザワ。みんながそれぞれ隣の人同士で話している中、一貴さんが立ち上がった。そこで、みんなが彼に注目した。俺の隣には悠人がいて、また狼狽えている。一貴さんが乾杯の音頭を取るときは長い挨拶があるそうで、ドン引きするそうだ。

「ゆうとーー。それって、早瀬さんと君とで食事に行った席でのことだろ?冗談でやっているんだよ。今日は仕事だもん。ささっとやるよ」
「それならいいけど……」
「さあ、グラスを持って」
「うん」

 一貴さんがみんなに一礼した。そして、乾杯の挨拶が始まった。てっきり俺は簡単な挨拶だけだと思っていたら、本格的に話し始めた。悠人の言った通りになった。

「ご指名いただきました、プラセルコーポレーション社長の黒崎一貴です。本日は、お忙しい中、お集まりいただきありがとうございます。さて、本日の会食では、日ごろの疲れを癒し、親睦を深める良い機会にしたいと思います。プラセルコーポレーションではデザインの良さが評判なのですが、それもこれも製品を縫う工場のおかげであります。そして、当社の名前を広めて下さったIKUエンタテイメント様には感謝申し上げます。そして、水端企画さんにおかれましては、長年すれ違いのようにしてご縁が頂けなかったのですが、当社からの強い押しでなんとか取引にこぎつけることができました。プラセルコーポレーションは業界で嫌われていますので、取引して下さらなかったのです。それを、社長の水端勇様が広い心で受け入れて下さり、今日を迎えました。本日は社長の弟でデザイナー兼副社長の水端俊也様がお越しになられています」
「あああ……」
「たしかに長い挨拶だけど、こんなものじゃない?」

 やっぱり狼狽えている悠人の肩を叩いた。そして、そろそろ挨拶が終わって乾杯に移るだろうと思った。しかし、一貴さんの話は終わらない。みんな、グラスを持って待っているのに。

「これで僕からの挨拶とさせて頂きたいのですが、一点申し上げたいことがございます。本日の料理についてです。美味しいご飯をありがとうございます。生産者の方々におかれましては……、お店独自の販売ルートにて、この様な素晴らしい農産物を組み入れることが可能となり……、ご尽力を頂いた皆様には……、感謝を申し上げます……生産者の皆さんにおかれましては、このような食物を作って下さったことに……、味と食感、価格には……」
「あああ……」
「ゆうとーー。ごめんね。悠人の言うとおりだよ。乾杯の挨拶って感じじゃ無いね」
「俺と裕理さんとで食事に行った時には必ず頂きますの挨拶をするんだけど、いつもこうなんだーーー」
「そうだったんだね。うちでは普通にしているのになあ」

 一貴さんには困った物だ。しかし、食事のことに感謝するのは良いことだから、止めないでおこうと思った。すると、六槍さんが咳払いをして、一貴さんのことを見上げた。ナイスアシストだ。挨拶が長いと言ってくれたのだろう。そこで、一貴さんが頷いた。ほとんどの人のグラスにはビールが入っていて、キンキンに冷えている。そして、グラスが汗を掻いている。もう乾杯をするだろう。しかし、全く違うことを話し始めたから、ずっこけそうになった。

「プラセルコーポレーションでは……、遊園地のトリンドランド様とのコラボレーション企画としまして、Tシャツの販売をしております。コラボは6回目でございます。マスコットキャラクターのウサギーとトラッコのキャラクターTシャツの他に、僕がデザインしたフェレットのイラストTシャツもございます。どうぞみなさま、よろしくお願い申し上げます。では、時間が差し迫ってきましたので、これで僕の挨拶をさせていただきます。では、乾杯しましょう。皆様、グラスの準備はよろしいでしょうか?それでは、ディスレクトサイドゼロ、IKUエンタテイメント、水端企画、黒崎製菓、プラセルコーポレーションの発展と皆様のご健勝を祈念して、乾杯!」
「かんぱーーーい!」
「ほ……っ」

 みんながやっと乾杯できたという顔をしている。喉が渇いていたから、早くビールを飲みたかっただろう。俺と悠人と琉芯はウーロン茶を飲んでいる。悠人はお酒に強いが、俺に付き合ってウーロン茶を選んでくれた。琉芯はまだ年齢に達していない。
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