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ところで、今日の夏樹の反応が忘れられない。夕方に風林から電話が入り、書斎に移動した。それがいけなかったそうだ。いつもそうしている俺としては戸惑ったが、機嫌が悪いのだろうと思って受け流した。それもいけなかったようだ。後で夏樹から謝られた時に、普段の夏樹ではないと感じた。今日の会食のことでナーバスになっているのかと思った。
しかし、今日の席はバンドメンバーが揃っているし、一貴が主催した物だ。枝川も参加している。肩の凝るような店では無く、どちらかというとカジュアルだ。夏樹はイタリアンが好きであり、魚介系の料理が評判の店で、気に入ると思っている。
今日紹介される会食の相手は水端という男だ。縫製工場を経営している会社の副社長であり、一貴とは打ち明けている相手でもある。個性的であり、面白い男だというから、きっと夏樹も打ち解けると思って、会食に行ってもいいと許可した。
(許可か。俺は偉そうだ。しかし、夏樹のこと思うと、自由にはさせられない……)
これから会食の席が増えるのだろう。その度に俺が許可を出すなど、可能だろうか。IKUの意向がある。俺が音楽活動の妨げになってはいけないと思っているが、活動には様々なトラップが存在する以上、黙っては居られない。性的な関係を求められることがある。だから、会食の相手や活動に携わる相手のことには口を出す必要がある。デビューするにあたって、それを条件に出していた。遠藤さんは理解してくれた。
(夏樹……。俺はお前のことを大事にしていないか?そんなことはないだろう。どうして風林のことであんな反応を見せたんだ。俺が楽しそうに2階に上がっていたなんて、あり得ない)
風林からの電話の内容は、かつて勤めていた岡田商事の社長からの誘いのことだ。もう縁が切れたと思っていたのに、引っ越しのアザレアに仕事の依頼をして来て、わざわざ風林を指名したのだという。もちろん、予定があるために断ることにしたのだが、事あるごとに風林と会おうとするのだという。かなりしつこい相手であり、辟易としていた。それをどうしたら良いのかという相談を受けていた。
もしも風林が黒崎製菓に移ってきたときに、その社長が追いかけてくる可能性がある。そのため、何か協力できないかと思って何点かアドバイスをしておいた。しかし、効果が無い。そこで、俺が引っ越しのアザレアの社長に相談するように勧めて、そうした。もちろん、社長は快く相談に乗ってくれたそうだ。その報告だった。良い結果が聞けると思って、足取りが軽くなってしまったかも知れない。
「夏樹……。ああ、あんなに機嫌を悪くすることはないだろう。何か贈り物は無いか。欲しがっていた冬物のコートはまだ店頭に出ていない。何も思いつかない……」
独り言をつぶやいてしまった。夏樹の機嫌を直させることは俺の得意とすることだ。機嫌が悪いところも魅力的だと思っている俺はおかしいだろうか。あんなに怒って、俺のことを気にしている証拠だと思うと、悪い気になれない。今の気持を夏樹が知ったら、怒るだろう。
「ん?ラインか。夏樹だ。なんだって?“水端さんにウォークインのことを打ち明けたよ”だと?どうしてそうなるんだ。誰にでも話して良いことじゃない。なんだって?ヨーク達の悪戯だと?そうか……」
彼らが話してもよいと判断したのなら、それで良かったのだろう。そうでなかったら話してはいけないことだ。仕事に影響が出てくる。一貴の評判に関わってくるからだ。夢でも見ているんじゃないか、変わった奴だと思われてしまう。話したということは、一貴の友人になり得ると判断したということなのだろう。
「“今、電話をしてもいいか?”」
そうメッセージを打って送った。すると、いいよと返事が返ってきた。そこで、こちらから電話を掛けた。すると、いつものように夏樹が出て、その声は少し慌てていた。そこで、落ち着けと言い、話を始めた。
しかし、今日の席はバンドメンバーが揃っているし、一貴が主催した物だ。枝川も参加している。肩の凝るような店では無く、どちらかというとカジュアルだ。夏樹はイタリアンが好きであり、魚介系の料理が評判の店で、気に入ると思っている。
今日紹介される会食の相手は水端という男だ。縫製工場を経営している会社の副社長であり、一貴とは打ち明けている相手でもある。個性的であり、面白い男だというから、きっと夏樹も打ち解けると思って、会食に行ってもいいと許可した。
(許可か。俺は偉そうだ。しかし、夏樹のこと思うと、自由にはさせられない……)
これから会食の席が増えるのだろう。その度に俺が許可を出すなど、可能だろうか。IKUの意向がある。俺が音楽活動の妨げになってはいけないと思っているが、活動には様々なトラップが存在する以上、黙っては居られない。性的な関係を求められることがある。だから、会食の相手や活動に携わる相手のことには口を出す必要がある。デビューするにあたって、それを条件に出していた。遠藤さんは理解してくれた。
(夏樹……。俺はお前のことを大事にしていないか?そんなことはないだろう。どうして風林のことであんな反応を見せたんだ。俺が楽しそうに2階に上がっていたなんて、あり得ない)
風林からの電話の内容は、かつて勤めていた岡田商事の社長からの誘いのことだ。もう縁が切れたと思っていたのに、引っ越しのアザレアに仕事の依頼をして来て、わざわざ風林を指名したのだという。もちろん、予定があるために断ることにしたのだが、事あるごとに風林と会おうとするのだという。かなりしつこい相手であり、辟易としていた。それをどうしたら良いのかという相談を受けていた。
もしも風林が黒崎製菓に移ってきたときに、その社長が追いかけてくる可能性がある。そのため、何か協力できないかと思って何点かアドバイスをしておいた。しかし、効果が無い。そこで、俺が引っ越しのアザレアの社長に相談するように勧めて、そうした。もちろん、社長は快く相談に乗ってくれたそうだ。その報告だった。良い結果が聞けると思って、足取りが軽くなってしまったかも知れない。
「夏樹……。ああ、あんなに機嫌を悪くすることはないだろう。何か贈り物は無いか。欲しがっていた冬物のコートはまだ店頭に出ていない。何も思いつかない……」
独り言をつぶやいてしまった。夏樹の機嫌を直させることは俺の得意とすることだ。機嫌が悪いところも魅力的だと思っている俺はおかしいだろうか。あんなに怒って、俺のことを気にしている証拠だと思うと、悪い気になれない。今の気持を夏樹が知ったら、怒るだろう。
「ん?ラインか。夏樹だ。なんだって?“水端さんにウォークインのことを打ち明けたよ”だと?どうしてそうなるんだ。誰にでも話して良いことじゃない。なんだって?ヨーク達の悪戯だと?そうか……」
彼らが話してもよいと判断したのなら、それで良かったのだろう。そうでなかったら話してはいけないことだ。仕事に影響が出てくる。一貴の評判に関わってくるからだ。夢でも見ているんじゃないか、変わった奴だと思われてしまう。話したということは、一貴の友人になり得ると判断したということなのだろう。
「“今、電話をしてもいいか?”」
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