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ユーリーの食事の作法は本当に綺麗だと思う。箸の持ち方がマズい俺からすると、恥ずかしくなる感じがある。俺の場合は字もそうだが、箸の持ち方が上手にならなくて、大人になってしまった。ところが、ユーリーは達筆だし、箸の持ち方も綺麗で、けなすところがない。根が素直なのだと思う。それに、とても真面目だから、きちんと習っていたのだろう。
そう思うと、ユーリーの3歳の頃のことが想像できた。写真で見る彼は可愛らしかった。あんなに小さな子がマナー講師から言われるとおりにしたなんて、やっぱり泣けてくる。
「うっうっ。ユーリー。俺、泣けてきたよ。大変だったねえ。俺が子供の頃からこの家で育っていたら、どうなっていただろうって思うよ」
「厳しくなんかなかったんだぞ。拓海君も晴海君も優しかった。彼らがやっているとおりに食べると良いと思っていた。兄さんは箸の持ち方に苦労していたみたいだけど、そのうち慣れたと言っていた。ただ、今みたいに話しながら食べていなかったから、大広間は静まりかえっていた。僕は静かにしておくのが大変だった。そこは苦労したかも知れない」
「そうだったんだってね。黒崎さんが言っていたよ。お義父さんと一緒に食べるときは静かだったって。拓海さんとは週1回しか食べられなくて、それでも、食事の時は静まりかえっていて、それが普通なんだって思ったって。俺なんか、実家で静かになんてしていないよ。伊吹お兄ちゃんがうるさくって」
「こうやって弁当を食べる日が来るなんて思わなかった。この家は変わったな。賑やかでいい」
ユーリーがお義父さんの家を振り返った。大広間ではお義父さんが1人でご飯を食べている。たまには1人でもいいそうだ。俺と黒崎が来るまではいつも1人だった。そう思うと、また泣けてきた。
「うっうっ。賑やかになったよねえ。良かったよねえ。ん?南波さん。俺にコメントが来たの?」
「来たよ。ナツキ、泣かないでって書いてあるよ」
「うっうっ。嬉しいよ。顔を出していないのに、声だけでも聞いてくれてさ。ごめんね。俺って誤解を受ける奴だから、なかなか画面に出られないんだ」
「分かっているよって書いてくれているよ」
「ふう。食べ終わった。寝る」
ユーリーが一番先に食べ終わった。弁当箱を簡易テーブルの上に置き、テントの中に入っていった。ゴロッと横になっている。たしかに、“おっさん”だ。
「ユーリー。おっさんになっているよ」
「僕はまだそんな年じゃない。今夜は涼しい方だな。寝やすいだろう。僕もこの中で寝ようかな」
「だめだよ。あんたのことだから、南波さんに何かしそうだよ~」
「そんなことはしない。庭でテントを張りたいと思っていた頃がある。ああ、いいな。テントの匂いが落ち着く。これで雨が降ってきたら、雰囲気が出る。もちろん、今夜のような晴れの天気の方がいいけどね。……ん?この本を読んでいたのか。天体観測の本だ。隆さんの図書室にもあったやつじゃないか?」
「どれどれ?あ、これ、シリーズ化しているんだよ。図書室には無いやつだよ」
「そうか。僕と本の好みが似ている」
テントの中には何冊かの本が入っていた。いつも読んでいるのだろう。番組の中では、南波さんが静かに本を読んでいるのを眺めながら寝落ちするという視聴者がいるのだという。今日のような賑やかな放送は珍しい方なのだろう。コメントが活発に流れていっている。
「ユリウスさん。リクエストだよ。テントの中を映してだって」
「僕が寝ているところを映すのか?おっさんなのに」
「あはは。さっきは否定していたくせに」
「今夜はやっぱり僕はここに居ることにする。南波君は寝ていていいよ。僕が見張りをする。……ぐーーーー」
「寝てる……」
ユーリーが寝息を立て始めた。それを見て、南波さんが吹き出して笑いだした。まだ放送に慣れていないだろうに、こうしてカメラの前で寝られるのがすごいのだという。俺もそう思った。
すると、南波さんが弁当箱を落としそうになった。それを慌てて持ち直して、落とさずに済んだ。しかし、シュウマイがこぼれそうになった。
「あ、ヤバイ!」
「ん?どうしたんだ?」
「ユリウスさん……」
南波さんの声に、ユーリーがガバッと起き上がった。たしかに見張り番だ。寝たと思ったのに寝ていなかったのか、すぐに起きられたのか。かっこいいと思った。そして、それは南波さんも同じだったようで、ライトで照らされている中、顔が赤くなったのが分かった。そこで、俺はお邪魔虫だったかなと思って頰を掻いて、二人きりにした方がいいかなと思ったのだった。
そう思うと、ユーリーの3歳の頃のことが想像できた。写真で見る彼は可愛らしかった。あんなに小さな子がマナー講師から言われるとおりにしたなんて、やっぱり泣けてくる。
「うっうっ。ユーリー。俺、泣けてきたよ。大変だったねえ。俺が子供の頃からこの家で育っていたら、どうなっていただろうって思うよ」
「厳しくなんかなかったんだぞ。拓海君も晴海君も優しかった。彼らがやっているとおりに食べると良いと思っていた。兄さんは箸の持ち方に苦労していたみたいだけど、そのうち慣れたと言っていた。ただ、今みたいに話しながら食べていなかったから、大広間は静まりかえっていた。僕は静かにしておくのが大変だった。そこは苦労したかも知れない」
「そうだったんだってね。黒崎さんが言っていたよ。お義父さんと一緒に食べるときは静かだったって。拓海さんとは週1回しか食べられなくて、それでも、食事の時は静まりかえっていて、それが普通なんだって思ったって。俺なんか、実家で静かになんてしていないよ。伊吹お兄ちゃんがうるさくって」
「こうやって弁当を食べる日が来るなんて思わなかった。この家は変わったな。賑やかでいい」
ユーリーがお義父さんの家を振り返った。大広間ではお義父さんが1人でご飯を食べている。たまには1人でもいいそうだ。俺と黒崎が来るまではいつも1人だった。そう思うと、また泣けてきた。
「うっうっ。賑やかになったよねえ。良かったよねえ。ん?南波さん。俺にコメントが来たの?」
「来たよ。ナツキ、泣かないでって書いてあるよ」
「うっうっ。嬉しいよ。顔を出していないのに、声だけでも聞いてくれてさ。ごめんね。俺って誤解を受ける奴だから、なかなか画面に出られないんだ」
「分かっているよって書いてくれているよ」
「ふう。食べ終わった。寝る」
ユーリーが一番先に食べ終わった。弁当箱を簡易テーブルの上に置き、テントの中に入っていった。ゴロッと横になっている。たしかに、“おっさん”だ。
「ユーリー。おっさんになっているよ」
「僕はまだそんな年じゃない。今夜は涼しい方だな。寝やすいだろう。僕もこの中で寝ようかな」
「だめだよ。あんたのことだから、南波さんに何かしそうだよ~」
「そんなことはしない。庭でテントを張りたいと思っていた頃がある。ああ、いいな。テントの匂いが落ち着く。これで雨が降ってきたら、雰囲気が出る。もちろん、今夜のような晴れの天気の方がいいけどね。……ん?この本を読んでいたのか。天体観測の本だ。隆さんの図書室にもあったやつじゃないか?」
「どれどれ?あ、これ、シリーズ化しているんだよ。図書室には無いやつだよ」
「そうか。僕と本の好みが似ている」
テントの中には何冊かの本が入っていた。いつも読んでいるのだろう。番組の中では、南波さんが静かに本を読んでいるのを眺めながら寝落ちするという視聴者がいるのだという。今日のような賑やかな放送は珍しい方なのだろう。コメントが活発に流れていっている。
「ユリウスさん。リクエストだよ。テントの中を映してだって」
「僕が寝ているところを映すのか?おっさんなのに」
「あはは。さっきは否定していたくせに」
「今夜はやっぱり僕はここに居ることにする。南波君は寝ていていいよ。僕が見張りをする。……ぐーーーー」
「寝てる……」
ユーリーが寝息を立て始めた。それを見て、南波さんが吹き出して笑いだした。まだ放送に慣れていないだろうに、こうしてカメラの前で寝られるのがすごいのだという。俺もそう思った。
すると、南波さんが弁当箱を落としそうになった。それを慌てて持ち直して、落とさずに済んだ。しかし、シュウマイがこぼれそうになった。
「あ、ヤバイ!」
「ん?どうしたんだ?」
「ユリウスさん……」
南波さんの声に、ユーリーがガバッと起き上がった。たしかに見張り番だ。寝たと思ったのに寝ていなかったのか、すぐに起きられたのか。かっこいいと思った。そして、それは南波さんも同じだったようで、ライトで照らされている中、顔が赤くなったのが分かった。そこで、俺はお邪魔虫だったかなと思って頰を掻いて、二人きりにした方がいいかなと思ったのだった。
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