青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 20時。

 晩ご飯を食べ終わった後だ。安斎さんからもらった鯛の刺身は南波さんに喜んでもらえた。唐揚げも美味しいと言ってもらえた。何も無いけどと、せめて美味しい物があればと思って出した物でくつろいでもらえて、ホッとした。俺が作った南蛮漬けも食べてもらった。

 今、大広間で過ごしている。南波さんが放送を付けて、晩ご飯の紹介と、食べるところを視聴者に見てもらっていた。夏樹は出ないのかという言葉に、声だけで出てみた。すると、あのドイツ人男性を出してくれというからユーリーに出てもらうと、南波さんとカップル認定をされていた。俺は隣にいるユーリーに声を掛けた。

「良かったね。ユーリー。見た目がカップルなんだよ~」
「僕達は友達だ。それにしても、一貴さんは今夜も遅くなるのか。大変だな。モデルの逮捕となると、代替えのモデルを探さないといけない」
「うん。プラセルの仕事が多かったから、社員が警察に事情を聞かれているんだって。カズ兄さんは会ったことのない人だったから事情は聞かれていないらしいけど、そのうち聞かれると思うんだ。また怪しまれないかな……」
「六槍君が気を付けているんだろう。彼の言うことを聞かないから、前回は怪しまれた。イケイケの格好でインスタに出るからだ」
「もう出ていないよ。カズ兄さんはテレビにも出たらいけないタイプだよ」

 俺とユーリーが話している間、俺達の手元にはスマホが置かれている。南波さんと並んで話している黒崎が番組に映っている。コメントには、すごい男前だという言葉があった。それを見て、なんだかモヤモヤした。またヤキモチを焼いてしまった。

「黒崎さん。番組に出ないでよ。なんちゃって……。言えないよね。こんなこと……」

 部下の番組に出るななんて言えない。しかし、小声で口に出してしまい、黒崎に聞こえてしまい、彼がこっちを向いた。

「夏樹。妬くな」
「げげげ。どこまで耳がいいんだよ~。早く年を取れよ~」
「うるさい」

 俺の言葉に反応して、黒崎が眉間に皺を寄せて言い返してきた。そして、また南波さんとの会話に戻った。お義父さんは二葉と話し込んでいる。笑顔だ。それにはホッとした。志乃さんはスイスに戻る前にこっちに寄れなくなってしまった。お母さんとの話し合いがあるからだ。法事のあった今日が良かったが、お母さんがそんな気持ちになれないと言い、志乃さんからの電話を切ってしまった。しかし、このままにしたくないから、明日、お母さんのアパートに訪ねていくそうだ。父が同席する。

 さっきはユーリーが二葉にデザートの梨を分けてあげていた。元気を出せよという意味だ。色々あって、二葉が疲れている。朝陽と倉口さんの親子鑑定の時は、2人が顔を合わせた状態で口の中の粘膜を検査キットでこそげ取ることになるそうだ。二葉はその場に同席したいそうだが、お義父さんが止めている。黒崎も同じ意見だ。もうここの娘であり、会う人を決めるのは当主や親なのだと言っていた。

 それには二葉が異論を唱えていたが、ユーリーが間に入って、彼女を説得した。二葉は彼の言うことならすんなりと聞く。ユーリーはニコニコ笑っていて優しいが、何かを決めるときには厳しい顔になって、結論を出す。それはもう決定事項であり、覆らない。

(南波さんのこともそうなのかな。もう諦めたし、付き合わないって事かな……)
 
 ユーリーが一度決めたら気持ちを変えないのはよく知っている。そう思って彼のことを見つめると、ニコニコと笑って見つめ返してきた。とても頑固だなんて思えない笑顔だ。ノアに似ていると思った。ノアは考え方が柔軟だ。しかし、ユーリーはそうではない。こうだと言ったらこうなんだと意見を押し通す。それにはお義父さんが手を焼いている。

「ユーリー。南波さんのこと、諦めたってこと?」
「そういうわけじゃない」
「付き合ってもらえればいいのに」
「それじゃだめなんだ。僕のことを好きだって言ってもらえないとね。良さそうとか、悪いからなんて言われたくない」
「頑固だねえ。南波さん、あんたことが好きだと思うよ。上楽先生にヤキモチを焼いていたんだもん」
「それでもだ」

 ユーリーがあくびをした。さすがに眠くなってきたそうだ。そして、南波さんの方を向いた。僕だって嬉しかったんだと言いながら。それを見て、本当に頑固だと思ったのだった。
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