青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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25-1 親子鑑定

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 9月10日、土曜日。午前6時。

 朝ご飯の支度をしているところだ。今朝は洋食にしてある。目玉焼きとベーコン、サラダ、トーストがメニューだ。それから、作り置きのおかずも出した。その中にスパニッシュオムレツがある。目玉焼きがあるのに食べてくれるだろうかと思って黒崎に聞くと、食べてくれるということだった。もう食べておきたかったから良かった。

 今日は俺達は出かける。一泊二日で倉口さんに会いに行く。朝陽の親子鑑定のためだ。旅のメンバーは朝陽と俺と黒崎の3人だ。どうして俺まで行くかというと、実家の両親達に会いに行くためだ。そして、せっかく俺も行くというならと、伊吹と聡太郎も実家に行くことになり、おそらく、向こうで会うと思う。

 黒崎はリビングで電子新聞を読んでいるところだ。アンはお義父さんと散歩に出かけている。今朝は少し早めに出かけた。アンドリューは外に居る。開けてあるテラス窓から見えるところに座り、外を眺めている。

「黒崎さん。ご飯が出来たよ。食べてよ」
「ああ。いつもすまない」
「なんだよ、急に。あんた、今日のことで緊張しているんだろ。朝陽の高校の先生も来るからさ……」
「ホテルの部屋を借りておいて良かった。家の中じゃ言い合いになりそうだ」
「そうだよね。取っ組み合いの喧嘩になるとかさ。外だったらそういうわけにもいかないって思うもんね」

 今回の親子鑑定には、ママの浮気相手も来る。朝陽の高校の先生だ。20年以上前に関係が終わったとはいえ、倉口さんからすると腹が立つだろう。何か言って喧嘩になる可能性がある。高校の先生は何も言えない立場とは言え、やられたらやり返すという展開になるかも知れない。

 朝陽と倉口さん達が集まる場所は、ホテルの部屋にした。俺達の泊まるホテルではなく、近くにあるホテルの一室を選んだ。そこは黒崎の知り合いがいるホテルであり、もし喧嘩が起きても対処をしてくれるそうだ。俺達もそこに泊まれば良いが、親子鑑定という思い出ができる朝陽のために、別のホテルにしたそうだ。モヤモヤして眠れないかも知れない。だから、せめて違うホテルなら、ゆっくり休めるのでは無いかということだ。

 そう思うと、黒崎はとても優しい人だと分かる。朝陽は黒崎のことが怖くてたまらないという話だったが、最近はそうでもないらしい。黒崎が愛情を見せるからだ。たとえ、命令口調で話されてもだ。成績表を見せろとか、普段は何を食べているか言えとか、他にも用事を言いつける。それでもだ。

 さて、俺達は朝ご飯を食べる。そこで、外に出ているアンドリューの方を向いた。アンが帰って来た後に朝ごはんを食べる習慣があるが、もう食べてもらいたい。アンドリューもこっちを見ている。

「アンドリュー、入っておいでよ。朝ご飯を食べようよ」
「……」
「あれ?入ってこないのかよ?どこに行くの?裏に行くの?」

 アンドリューが家の中に入ってこずに、移動を始めた。そして、俺が言ったとおり、キッチンにある裏口から鳴き声がした。さっそくドアを開けると、アンドリューが待っていた。

「ニャア」
「どうしたの?こっちから入るんだね~。どうしてこっちだったの?」
「夏樹。網戸が閉まったままだ」
「え?」
「ほら。アンドリューが入ってこられなかった。だから、裏から入ったんだろう」
「ああーーーー!」

 思わず声を上げた。黒崎が言うとおり、網戸が閉まったままだった。アンドリューが出ているときはいつも開けているのに、いつもの習慣で閉めてしまったのか。それを俺が呼んだから、アンドリューは困ったに違いない。そう思うと心が痛くなった。

「アンドリュー。ごめんね!」
「俺も悪かった。気がつかなかった」
「え?あんた、悪いって言ったの?本当に今日はどうしたんだよ~」

 俺がアンドリューの頭や身体を撫でていると、黒崎が素直な発言をしたから驚いた。今日の黒崎なら朝陽にも優しいだろう。アンとアンドリューのことはお義父さんの家で預かってもらう。それがあるから、黒崎はいつもと違うのだろうか。俺もいない中で2匹が留守番をすることになる。お義父さん達が面倒を見てくれる。しかし、それでも黒崎は寂しいようで、なんだかいつもと違う。
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