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ザーーー、ガーーー。
トイレを済ませて戻っていくと、新しい音が聞こえてきた。ガランとしている空間に響いている。早瀬の視線の先には遊覧船が走っていた。観たいと思っていたデザインの船だった。
「ゆうとー、キミが観たい船が走っているぞ」
「おおー。シルバー・メタリック、”流線形ボディー”。宇宙船をイメージした船なんだよ」
有名な漫画家がデザインしたものだ。屋上にも出られるから乗ってみたいと思った。肩を抱かれてもたれ掛かるようにして、ガラス壁越しに眺めた。上から見るとイメージが変わるだろう。歩いている時に観られるかな?
肩を抱いた手が動き、腹回りや腰の辺りを撫で始めた。なんだかイラらしい動きだから幻滅した。一気にムードが台無しだ。見上げると、やっぱりエロい笑い方をしていた。
「トリャー!」
「まだ何もしていないぞ?さあ、紅茶を買おうかなー」
あっさり攻撃をかわされて、足元がヨロけた。あわてて早瀬の背中にすがりついた。笑って逃げているから意地悪だ。
すると、背後から回した手を握られたままで、キッチンのような動きを始めた。ここには誰もいないから、やってもいいかと思った。早瀬もそれを分かっている。上手くのせられたふりをしておこう。あっちへ行ったりこっちへ行ったりと、動きに合わせて移動した。ジュースを買った後も続けた。そして、早瀬が、さあ、行こうかと言って歩き始めた。
「ゆうとー、今夜はオムレツを焼くぞ。カボチャサラダもだ」
「裕理さーん。オムレツソースは、なにー?」
「バジルとトマトソースだよ。お気に入りだろう?」
「おおーー、……みぎ?」
「右だよ、左、右」
「みぎ、ひだり、みぎー!」
「トマト、トマト、トマト」
「バジル、バジル、バジルー!」
「カボチャ、カボチャ、カボチャ」
「サラダ、サラダ、サラダー!」
自分たちの声が、建物内に響き渡った。楽しくなって周りを見渡すと、”7階へお進み下さい”という表示板を見つけた。あっちから行くんだねと、その方向へ視線を向けた瞬間、ズッコケそうになった。
ガランとした殺風景な通路には、見慣れた2人の姿があったからだ。しかも甘ったるい空気に包まれて、キスをしている。夏樹と黒崎さんがいた。
早瀬も2人に気がついて、小さく吹き出した。今日は黒崎さんの誕生日だからデートに来たのだろう。早瀬に聞くと、予定を合わせていないと言って笑っている。黒崎さんは俺たちに気づいているのに、夏樹の身体を触り続けている。ここにも変態がいた。
「裕理さん。エレベーターへ乗ろうよ」
「そうだね。ああー、エスカレートしているな。人が来るだろうに」
「もうー、いいから。はいはいーー」
早瀬にすがりついたままで背中を押した。
奥のエレベーターへたどり着いた後、手袋が無いことに気づいた。さっきの洗面所に忘れてきた。取りに行きたいが、あの2人のいる向こうにある。まだタイミングが悪いかもしれない。迷っていると、早瀬が取ってくると言い出した。興味ありげしているから、慌てて止めた。見るつもりか?この人は変態だ。
「そのエロさを、やめてってばー」
「俺は何も言っていないぞ?悠人君は何を想像したんだ?」
「この変質者!」
「それは変わりない。エロさは健在だ。ウシになるぞー?」
「もう!メエメエ!」
投げやりに言い返した後、待っていても時間が経つばかりだと、取りに行くことにした。さっさと通り過ぎればいいだろう。
来た道を戻っていくと、壁沿いに立っている夏樹たちを発見した。密着ぐあいは変化ない。甘ったるい空気が広がっていて、近づくのに躊躇った。壁へ押し付けた夏樹の体を、黒崎さんの手が撫でている。ニットの中に潜り込んでいるようだ。
遊歩道を渡り終えた後に、取りに来ようか?それだと渡っている時に寒いぞと、小声で話し合った。その結果、勇気を出そうと決めた。
そっと一歩ずつ踏み出して、気配を消しつつ洗面所へたどり着いた。思っていた場所に置いてあったから、時間がかからなかった。それを取った後、こそこそと洗面所から出てきた。
視線の先には 案内表示があり、その手前には問題の2人が立っている。いいのか悪いのか、夏樹は気づかない様子だ。これなら大丈夫だと早足で通り過ぎていくと、夏樹が悲鳴をあげた。
「ヒャーーーッ」
「それはこっちの悲鳴だよーっ」
ニットの裾を直しつつも、俺たちのことを凝視している。こっちまで動揺するとマズい。つとめて冷静になろうとした。しかし、それはもろくも崩れ去った。俺たちのステップを目撃したと言ったからだ。
「トマトトマトって、ステップを踏んでいたよね~?」
「気のせいだよ……」
「サラダサラダって、ひゃひゃひゃー」
「食べたいなって話していただけだよ!」
「ヒョーーーーッ」
「あああ……」
どうしよう?見られていたのか。いや、それ以外にも疑問がある。そばに居ることに気づいたなら、イチャつくのをやめないのか?その答えは ”NO” だった。
なんてアホらしい。悲鳴を上げたくせに。これが黒崎カップルといえよう。これ以上はツッコむことを止めて、彼らは北ルートを通ると言うから、南ルートを使うことにした。
トイレを済ませて戻っていくと、新しい音が聞こえてきた。ガランとしている空間に響いている。早瀬の視線の先には遊覧船が走っていた。観たいと思っていたデザインの船だった。
「ゆうとー、キミが観たい船が走っているぞ」
「おおー。シルバー・メタリック、”流線形ボディー”。宇宙船をイメージした船なんだよ」
有名な漫画家がデザインしたものだ。屋上にも出られるから乗ってみたいと思った。肩を抱かれてもたれ掛かるようにして、ガラス壁越しに眺めた。上から見るとイメージが変わるだろう。歩いている時に観られるかな?
肩を抱いた手が動き、腹回りや腰の辺りを撫で始めた。なんだかイラらしい動きだから幻滅した。一気にムードが台無しだ。見上げると、やっぱりエロい笑い方をしていた。
「トリャー!」
「まだ何もしていないぞ?さあ、紅茶を買おうかなー」
あっさり攻撃をかわされて、足元がヨロけた。あわてて早瀬の背中にすがりついた。笑って逃げているから意地悪だ。
すると、背後から回した手を握られたままで、キッチンのような動きを始めた。ここには誰もいないから、やってもいいかと思った。早瀬もそれを分かっている。上手くのせられたふりをしておこう。あっちへ行ったりこっちへ行ったりと、動きに合わせて移動した。ジュースを買った後も続けた。そして、早瀬が、さあ、行こうかと言って歩き始めた。
「ゆうとー、今夜はオムレツを焼くぞ。カボチャサラダもだ」
「裕理さーん。オムレツソースは、なにー?」
「バジルとトマトソースだよ。お気に入りだろう?」
「おおーー、……みぎ?」
「右だよ、左、右」
「みぎ、ひだり、みぎー!」
「トマト、トマト、トマト」
「バジル、バジル、バジルー!」
「カボチャ、カボチャ、カボチャ」
「サラダ、サラダ、サラダー!」
自分たちの声が、建物内に響き渡った。楽しくなって周りを見渡すと、”7階へお進み下さい”という表示板を見つけた。あっちから行くんだねと、その方向へ視線を向けた瞬間、ズッコケそうになった。
ガランとした殺風景な通路には、見慣れた2人の姿があったからだ。しかも甘ったるい空気に包まれて、キスをしている。夏樹と黒崎さんがいた。
早瀬も2人に気がついて、小さく吹き出した。今日は黒崎さんの誕生日だからデートに来たのだろう。早瀬に聞くと、予定を合わせていないと言って笑っている。黒崎さんは俺たちに気づいているのに、夏樹の身体を触り続けている。ここにも変態がいた。
「裕理さん。エレベーターへ乗ろうよ」
「そうだね。ああー、エスカレートしているな。人が来るだろうに」
「もうー、いいから。はいはいーー」
早瀬にすがりついたままで背中を押した。
奥のエレベーターへたどり着いた後、手袋が無いことに気づいた。さっきの洗面所に忘れてきた。取りに行きたいが、あの2人のいる向こうにある。まだタイミングが悪いかもしれない。迷っていると、早瀬が取ってくると言い出した。興味ありげしているから、慌てて止めた。見るつもりか?この人は変態だ。
「そのエロさを、やめてってばー」
「俺は何も言っていないぞ?悠人君は何を想像したんだ?」
「この変質者!」
「それは変わりない。エロさは健在だ。ウシになるぞー?」
「もう!メエメエ!」
投げやりに言い返した後、待っていても時間が経つばかりだと、取りに行くことにした。さっさと通り過ぎればいいだろう。
来た道を戻っていくと、壁沿いに立っている夏樹たちを発見した。密着ぐあいは変化ない。甘ったるい空気が広がっていて、近づくのに躊躇った。壁へ押し付けた夏樹の体を、黒崎さんの手が撫でている。ニットの中に潜り込んでいるようだ。
遊歩道を渡り終えた後に、取りに来ようか?それだと渡っている時に寒いぞと、小声で話し合った。その結果、勇気を出そうと決めた。
そっと一歩ずつ踏み出して、気配を消しつつ洗面所へたどり着いた。思っていた場所に置いてあったから、時間がかからなかった。それを取った後、こそこそと洗面所から出てきた。
視線の先には 案内表示があり、その手前には問題の2人が立っている。いいのか悪いのか、夏樹は気づかない様子だ。これなら大丈夫だと早足で通り過ぎていくと、夏樹が悲鳴をあげた。
「ヒャーーーッ」
「それはこっちの悲鳴だよーっ」
ニットの裾を直しつつも、俺たちのことを凝視している。こっちまで動揺するとマズい。つとめて冷静になろうとした。しかし、それはもろくも崩れ去った。俺たちのステップを目撃したと言ったからだ。
「トマトトマトって、ステップを踏んでいたよね~?」
「気のせいだよ……」
「サラダサラダって、ひゃひゃひゃー」
「食べたいなって話していただけだよ!」
「ヒョーーーーッ」
「あああ……」
どうしよう?見られていたのか。いや、それ以外にも疑問がある。そばに居ることに気づいたなら、イチャつくのをやめないのか?その答えは ”NO” だった。
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