聖なる雫の音楽少年~あの日のキミ

夏目奈緖

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 リビングの広いテーブルに料理を並べて、ラグの上に座った。それぞれが料理を口に運びながら、テレビ画面を眺めてまったりと過ごしているところだ。夏樹が早瀬が作ったオムレツを食べて微笑んでいる。

「早瀬さんのスパニッシュオムレツは美味しいね~。ドレッシングも絶品だよ」
「ありがとう。このカルパッチョも美味しいよ」
「……こっちは?」
「タマネギを炒めたやつだよ~」

 わいわいがやがやと食事を続けた。すると、黒崎家のお父さんの話題に移った。蔵之介さんはワタベ電機側として、何度も会食の場で会っているそうだ。子供の頃にも話したことがある。佐久弥と遊んでいる時だそうだ。

「早瀬さんとも、会ったことがあるんじゃない?千尋製菓はライバル企業だっていうけど」
「覚えていないんだよ。会ったかも知れないなあ。佐久弥、覚えているか?」
「いやー、俺も覚えいないぞ。裕理はどうだったかなー。たしか引っ越してきた頃だったぞ。クラがいじめっ子から守ってくれた時だった」
「ふむふむ。君のことをねー。イジメる子がいたのか」

 佐久弥がサエキ酒造で働いていた時、黒崎製菓とタッグを組んで商品を出した。その時に、お父さんと対面したという。

「さくやー、真面目な会社員だったんだねー?」
「今でも真面目だぞ。社長室で再会した時は、側近がビックリしていた。”あの小さかった子が、大きくなった”って、言われたからだ。そういうタイプじゃないのか。黒崎さん、そうですか?」
「そういうタイプじゃない」
「お義父さんは覚えてるかもね。子供だったのが想像できないよ」
「ふむふむ。今も子供だよー?蔵之介さんだけが大人だよー」
「ウンウン。黒崎さんも同じ。大きな子供だよ」

 黒崎さんが懐かしい話があるぞと笑った。早瀬のお父さんと深川副社長が友達同士であることを教えてくれた。そして、子供の頃に行った黒崎製菓のハロウィンイベントで、黒崎さんと早瀬が初めて会ったことも。すると、早瀬が言った。

「懐かしい写真があるよ。俺たちが出会った日だ」
「気持ちの悪い言い方をするな」
「はははは。キツイなあ、さすがだ」

 早瀬がスマホを差し出した。アルバムから写した写真がある。黒崎さんのお兄さんと中学生の黒崎さんと9歳の早瀬が笑っていた。女の子と男の子もいる。黒崎さんの幼なじみの沙耶さんと怜さんという人だ。

 沙耶さんは父と同じく、黒崎製菓グループの顧問弁護士を務めている人だ。父の話では、何度か事務所に引き抜こうとしたという。

(世間は狭いなー。うちのお父さん、夏樹のお父さんと友達だし……)

 夏樹のお父さんは刑事事件を主にやっている。担当する案件に絡んでいるケースでは、父が相談に乗ってもらっていると話していた。

 すると、父と夏樹のお父さんと沙耶さんのことに話題が移った。5月のコンサートには夏樹のお父さんも来てくれる。これで3人が揃うだろうと話している。何かあったのだろうか?

「夏樹のお父さんは刑事弁護士さんだよね?うちのお父さんが相談しているって言っていたよ」
「へえ~。そっか、担当するケースに絡んでいるのか。……うちのお父さん、ストレスが溜まっているのかも。90%はシロの人しか担当しないんだよ。でもね、断れないツテで依頼があったそうだよ」
「ふむふむ……。繋がりがあるもんね」
「都内の企業だってさ。お父さん一人が担当しないけど。なるべく断りたがっているよ」
「夏樹。ビーフシチューが、口元に付いているぞ」
「ん?拭いてよ~」
「自分で拭け」
「なんだよーっ」

 黒崎さんと夏樹が喧嘩を始めてしまった。それを止めていると、早瀬からカボチャサラダを口に放り込まれた。美味しいか?と微笑まれて、胸がキュンとした。しかし、俺は素直になれなくて、デレデレ出来ないから、サラッと受け流した。
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