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エントランス近くのカフェに入った。IKUからの迎えの到着を待っているところだ。店内が空いていたから良かった。おかげでゆっくり過ごせている。
この騒動が落ち着いた後のことを話した。楽しいことばかりだ。ビュッフェレストランへ行くことや、ショーを観に行くことなどだ。
加藤さんとは電話で話した。遠藤社長宅で泊まるのは、あらゆる事態を予測しての、念のための対応策だ。余計な誤解を生まなくて済むし、報道陣のシャットアウトがある程度可能だ。佐久弥も経験があると聞いて安心した。
黒崎家の向かいとはいえ、夏樹達の家には自由に遊びに行けない。夏樹も来れない。その代わりに黒崎家のお父さんが訪ねて来てくれるそうだ。実家の父が報道陣の対応をスタートしている。まだ連絡がつかない状況だ。
「今回は薬物が絡んでいる。全く接点がなくても、芸能人が身内に居れば、疑いの目が向けられる。新人の頃から、その手のグループから目を付けられている。それが分かっているからだ。佐久弥もそうだった」
「TAKAが捕まった時、ディアドロップのメンバーも調べられたって聞いたよ」
「冤罪でなくてよかった。起訴されれば、99%以上が有罪だ。法学でも習っただろう?」
「うん。怖かったよ……」
「腕の立つ人がついたから、大丈夫だぞ」
俺には弁護士がついた。遠藤さんの家で契約を結ぶ段取りになっている。中山和司弁護士という。夏樹のお父さんのことだ。森井物産の関連で弁護の依頼があったが、それを断り、俺についてくれた。気心の知れた人が、20歳の俺にはいいはずだと言ってくれた。
「それだけ危ないってことだよね……」
「少しも影響させないためだ。中山さんは、90%以上やっていない人しか担当しない。森井物産は断る段階だったそうだ」
「お母さんは頼みたかったよね。親の会社だし」
「お母さんは安心していたぞ。息子のことだ」
「向こうに着いたら電話……、出来ないのか」
「中山さんから連絡してもらえる」
腕時計を見た。もう40分も経っていた。あともう少しで別々の車で出発する。早瀬も遠藤さんの家に来てくれる。そして、騒動が落ち着いた後、マンションに帰ることになる。
電話してね。ラインするよ。毎日、会いに来てよ。そう口にする度に、早瀬が頷いてくれた。テーブルの上で手を握り、迎えが来るのを待った。
プルルルーー……。
電話の着信が鳴った。加藤さんからだ。もう迎えが来たのかと胸が痛くなっていると、”夏樹君に連絡してあげて”という内容だった。すぐに電話をかけると、滅多にないような硬い声が聞こえてきた。今、黒崎さんと温泉宿にいるはずだ。迷惑を掛けてしまった。
(冷静にならないと。夏樹は報道に嫌な思い出があるから……)
「なつきー。ごめんね。お母さんから、会社の横領事件は聞いていたんだ。麻薬まであるって知らなくて。IKU側には相談していたんだ。言わなくてごめん。余計な心配をさせたくなかったんだ……」
「謝るなよ。悠人のことは分かっているからさ。ご近所さんになるね。収録に行く時に便利になったじゃん。いっぺんに行けるから……」
「……へへへ。リクとも遊べるし!」
「俺達、今から帰ろうかって思っているんだ。黒崎さんも同じ意見だよ。今から遠藤さんの家に行くんだろ?」
「……いいってばー。明日になったら帰るだろ?そうだ。お土産のリクエストがあるんだよー。ジャコ天が売っているんだ。真空パックの。美味しいって聞いたんだーー」
「うんうん。買っていくよ。この旅館で注文できるんだよ」
「ふむふむ……。観光地ですねー」
「そうだー。そっちで何に乗ろうとしたんだよー?」
「月夜のレンジャー、ゴーゴーマシンZだよ。言ってたやつ。迎えが来るから、また今度になったよ」
「一番の目的じゃん。並んでいただろ?」
「そうだよーー。もうーー」
「うちで早瀬さんに泊まってもらおうか?遠藤さん家より気を使わないから」
「いいよー。毎日会いに来てくれるから。長くても一週間だよ。そこまで報道陣は暇じゃないそうだよー」
「うん……」
「……ごめんね。思い出した?」
「大丈夫だよ。それはそれだからさ」
電話が終わった後、早瀬から褒められた。普段通りに話せていたそうだ。俺の前では泣いてほしいと頼まれたが、泣くわけにはいかない。
その後すぐに迎えが来て、戸惑うことなく素直に送迎車に乗り込んだ。事故をしないようにねと早瀬に伝えて、胸もとに輝く、親愛なる雫のペンダントを握りしめた。
この騒動が落ち着いた後のことを話した。楽しいことばかりだ。ビュッフェレストランへ行くことや、ショーを観に行くことなどだ。
加藤さんとは電話で話した。遠藤社長宅で泊まるのは、あらゆる事態を予測しての、念のための対応策だ。余計な誤解を生まなくて済むし、報道陣のシャットアウトがある程度可能だ。佐久弥も経験があると聞いて安心した。
黒崎家の向かいとはいえ、夏樹達の家には自由に遊びに行けない。夏樹も来れない。その代わりに黒崎家のお父さんが訪ねて来てくれるそうだ。実家の父が報道陣の対応をスタートしている。まだ連絡がつかない状況だ。
「今回は薬物が絡んでいる。全く接点がなくても、芸能人が身内に居れば、疑いの目が向けられる。新人の頃から、その手のグループから目を付けられている。それが分かっているからだ。佐久弥もそうだった」
「TAKAが捕まった時、ディアドロップのメンバーも調べられたって聞いたよ」
「冤罪でなくてよかった。起訴されれば、99%以上が有罪だ。法学でも習っただろう?」
「うん。怖かったよ……」
「腕の立つ人がついたから、大丈夫だぞ」
俺には弁護士がついた。遠藤さんの家で契約を結ぶ段取りになっている。中山和司弁護士という。夏樹のお父さんのことだ。森井物産の関連で弁護の依頼があったが、それを断り、俺についてくれた。気心の知れた人が、20歳の俺にはいいはずだと言ってくれた。
「それだけ危ないってことだよね……」
「少しも影響させないためだ。中山さんは、90%以上やっていない人しか担当しない。森井物産は断る段階だったそうだ」
「お母さんは頼みたかったよね。親の会社だし」
「お母さんは安心していたぞ。息子のことだ」
「向こうに着いたら電話……、出来ないのか」
「中山さんから連絡してもらえる」
腕時計を見た。もう40分も経っていた。あともう少しで別々の車で出発する。早瀬も遠藤さんの家に来てくれる。そして、騒動が落ち着いた後、マンションに帰ることになる。
電話してね。ラインするよ。毎日、会いに来てよ。そう口にする度に、早瀬が頷いてくれた。テーブルの上で手を握り、迎えが来るのを待った。
プルルルーー……。
電話の着信が鳴った。加藤さんからだ。もう迎えが来たのかと胸が痛くなっていると、”夏樹君に連絡してあげて”という内容だった。すぐに電話をかけると、滅多にないような硬い声が聞こえてきた。今、黒崎さんと温泉宿にいるはずだ。迷惑を掛けてしまった。
(冷静にならないと。夏樹は報道に嫌な思い出があるから……)
「なつきー。ごめんね。お母さんから、会社の横領事件は聞いていたんだ。麻薬まであるって知らなくて。IKU側には相談していたんだ。言わなくてごめん。余計な心配をさせたくなかったんだ……」
「謝るなよ。悠人のことは分かっているからさ。ご近所さんになるね。収録に行く時に便利になったじゃん。いっぺんに行けるから……」
「……へへへ。リクとも遊べるし!」
「俺達、今から帰ろうかって思っているんだ。黒崎さんも同じ意見だよ。今から遠藤さんの家に行くんだろ?」
「……いいってばー。明日になったら帰るだろ?そうだ。お土産のリクエストがあるんだよー。ジャコ天が売っているんだ。真空パックの。美味しいって聞いたんだーー」
「うんうん。買っていくよ。この旅館で注文できるんだよ」
「ふむふむ……。観光地ですねー」
「そうだー。そっちで何に乗ろうとしたんだよー?」
「月夜のレンジャー、ゴーゴーマシンZだよ。言ってたやつ。迎えが来るから、また今度になったよ」
「一番の目的じゃん。並んでいただろ?」
「そうだよーー。もうーー」
「うちで早瀬さんに泊まってもらおうか?遠藤さん家より気を使わないから」
「いいよー。毎日会いに来てくれるから。長くても一週間だよ。そこまで報道陣は暇じゃないそうだよー」
「うん……」
「……ごめんね。思い出した?」
「大丈夫だよ。それはそれだからさ」
電話が終わった後、早瀬から褒められた。普段通りに話せていたそうだ。俺の前では泣いてほしいと頼まれたが、泣くわけにはいかない。
その後すぐに迎えが来て、戸惑うことなく素直に送迎車に乗り込んだ。事故をしないようにねと早瀬に伝えて、胸もとに輝く、親愛なる雫のペンダントを握りしめた。
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