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18時半。
ビルの2階にある ”お気楽亭” に到着した。ここはすき焼き専門店だ。女将さんが目の前で作ってくれている。早瀬が女将さんと話している間、手持ち無沙汰になった。この場では聞き役に徹するのがいい。前菜を食べつつ、黒崎さんと島川さんが話している姿を眺めながら、笑顔を浮かべた。両親から教え込まれたことが役立っている。
(お母さん。どうしているかな?中山さんから聞いたけど……)
ふと、母のことが気になった。いまだに母とは直接の連絡が出来ない。会社には通えているそうだ。プラセルとの提携準備で忙しくしている。しかし、ここで話題に出すのをやめておこうと思った。
「出来上がったよ。食べないのか?」
「あああ……」
気がつくと、島川さんから話し掛けられていた。すっかり上の空だった。早瀬と女将さんが話している間、島川さんに世話を焼かれた。デパートで会って良かった。おかげでスムーズに会話が出来ている。MIDSHIPのデザインのことや、音楽のことを話した。今の話題は、この間収録した音楽番組のことだ。
「2月9日に放送があります」
「圭一からも聞いたよ。夏樹君が勅使河原さんとコラボしたそうだね。羽音さんと予定していただろう?」
「はい。予定変更になって、別に機会になりました」
羽音さんは交通事情の関係で収録に間に合わなかった。会いたかったのに。それこそ、また機会があるはずだ。
鍋を囲むと会話が盛り上がるのか、それとも島川さんが話し上手なのか、笑いながら話せている。すると、早瀬から顎を持ち上げられた。頬に何かが付いているようだ。
「自分で拭くよ。おしぼりを取って。んんーー。拭くなって……」
「これで綺麗になった。春菊も食べなさい。豆腐もだぞ」
「食べたよ。ああ、入れないでよーー」
早瀬から強引に春菊を皿に放り込まれた。さっさと噛んで飲み込むと、お茶を差し出された。それを自然に飲ませてもらっていると、黒崎さんから視線を向けられていた。ここは家ではない。さっと離れたが、肩を抱かれて引き戻された。
「悠人。春菊から逃げるな」
「そうじゃないって。あああ……」
どうしよう?2人から笑われている。大人しく言うことを聞くと、解放してもらえた。ホッとしつつ食べていると、膝の上に手の感触があった。早瀬から触られていた。何か話したいことがあるのか?失礼なことを口にしたのか。思い巡らしても行き当たらない。まだよく分からないから、フォローが入っているのだろう。口数を減らして、聞き役になるようにした。
(そうか。俺のことばかり喋り過ぎたのか……)
さらに放り込まれた春菊を口に運んだ。息を止めて食べていると、膝をくすぐられた。わざと笑わせようとしている。意地悪をやめてもらいたい。すると今度は膝の上に戻ってきた。すき焼き鍋に隠れて見えなくて助かった。遊ぶのは失礼だろう。足を動かすと、今度は撫でてきた。
(もうーー。飲み物を頼もうか……)
メニューを探すふりをして身じろいだ。太もも辺りを触っている。手を払いのけてやった。
「裕理さん。飲み物を頼むから、メニューを見せて」
「ウーロン茶、プーアル茶。ほかには……」
「メニューを見せてよー。あああ……」
早瀬の手が膝の間に潜り込んできた。そこでやっと気がついた。エロいことをやっているのだと。履いているのは厚手のズボンだから、ダイレクトに手の感触は感じない。放置しておけば、そのうち止めるだろう。
すき焼きの他にも料理が並んでいる。お新香や煮びたしを口に運んだ。すき焼きへ箸を向けそうになるたびに、触っている手が動く。これでは2人に見えてしまう。
(なんだよーー。もう……)
これでは食事に集中できない。会話もしづらい。早瀬はこういう場に慣れているだろうが、俺はそうではない。仕事相手も同然なのに。黒崎さんのお兄さんであってもだ。
「悠人。豆腐を食べなさい」
「取ってよ……」
「自分で取りなさい」
「あああ……」
耳元で話しかけられた。その息づかいを感じて身体が震えた。置かれた手が上がってきて、とんでもないことを始めたからだ。黒崎さんを見て顔が熱くなった。どうも気づいたようだ。表情を変えずに、次の飲み物を勧めてくれた。
「そろそろ温かいものがいいだろう。プーアル茶を頼むか?」
「は、はい。お願いします……」
「それを気に入ったのか。追加で頼んでやるぞ」
「えーっと……」
食べているのは、焼き鮭のイクラ乗せだ。ご飯の上にのせて丼物で頼もうか?と言われた。さり気なく会話を振られて、悪戯から気を逸らせることが出来た。さすがに”やめてやれと” とは口にしなかった。バレると恥ずかしすぎる。
早瀬は左利きだから、食べる分には問題ない。右手で俺の足に触っている。向かいから見れば違和感がありそうだ。身体をよじれば逆効果だ。
「悠人。食べ過ぎると動けなくなるぞ?」
「うん……。そっちも食べ過ぎるなよ……」
「まだ食べたい」
「あああ……」
追加のものが運ばれて来たタイミングで、座席から立ち上った。上手くかわすことに成功して、距離を取ることが出来た。そのタイミングで、島川さんから話を振られて、すぐに元通りの空気に戻った。インタビュー記事のことや、着まわしていたシャツの話をした。おかげで、楽しく食事を終えることが出来た。
ビルの2階にある ”お気楽亭” に到着した。ここはすき焼き専門店だ。女将さんが目の前で作ってくれている。早瀬が女将さんと話している間、手持ち無沙汰になった。この場では聞き役に徹するのがいい。前菜を食べつつ、黒崎さんと島川さんが話している姿を眺めながら、笑顔を浮かべた。両親から教え込まれたことが役立っている。
(お母さん。どうしているかな?中山さんから聞いたけど……)
ふと、母のことが気になった。いまだに母とは直接の連絡が出来ない。会社には通えているそうだ。プラセルとの提携準備で忙しくしている。しかし、ここで話題に出すのをやめておこうと思った。
「出来上がったよ。食べないのか?」
「あああ……」
気がつくと、島川さんから話し掛けられていた。すっかり上の空だった。早瀬と女将さんが話している間、島川さんに世話を焼かれた。デパートで会って良かった。おかげでスムーズに会話が出来ている。MIDSHIPのデザインのことや、音楽のことを話した。今の話題は、この間収録した音楽番組のことだ。
「2月9日に放送があります」
「圭一からも聞いたよ。夏樹君が勅使河原さんとコラボしたそうだね。羽音さんと予定していただろう?」
「はい。予定変更になって、別に機会になりました」
羽音さんは交通事情の関係で収録に間に合わなかった。会いたかったのに。それこそ、また機会があるはずだ。
鍋を囲むと会話が盛り上がるのか、それとも島川さんが話し上手なのか、笑いながら話せている。すると、早瀬から顎を持ち上げられた。頬に何かが付いているようだ。
「自分で拭くよ。おしぼりを取って。んんーー。拭くなって……」
「これで綺麗になった。春菊も食べなさい。豆腐もだぞ」
「食べたよ。ああ、入れないでよーー」
早瀬から強引に春菊を皿に放り込まれた。さっさと噛んで飲み込むと、お茶を差し出された。それを自然に飲ませてもらっていると、黒崎さんから視線を向けられていた。ここは家ではない。さっと離れたが、肩を抱かれて引き戻された。
「悠人。春菊から逃げるな」
「そうじゃないって。あああ……」
どうしよう?2人から笑われている。大人しく言うことを聞くと、解放してもらえた。ホッとしつつ食べていると、膝の上に手の感触があった。早瀬から触られていた。何か話したいことがあるのか?失礼なことを口にしたのか。思い巡らしても行き当たらない。まだよく分からないから、フォローが入っているのだろう。口数を減らして、聞き役になるようにした。
(そうか。俺のことばかり喋り過ぎたのか……)
さらに放り込まれた春菊を口に運んだ。息を止めて食べていると、膝をくすぐられた。わざと笑わせようとしている。意地悪をやめてもらいたい。すると今度は膝の上に戻ってきた。すき焼き鍋に隠れて見えなくて助かった。遊ぶのは失礼だろう。足を動かすと、今度は撫でてきた。
(もうーー。飲み物を頼もうか……)
メニューを探すふりをして身じろいだ。太もも辺りを触っている。手を払いのけてやった。
「裕理さん。飲み物を頼むから、メニューを見せて」
「ウーロン茶、プーアル茶。ほかには……」
「メニューを見せてよー。あああ……」
早瀬の手が膝の間に潜り込んできた。そこでやっと気がついた。エロいことをやっているのだと。履いているのは厚手のズボンだから、ダイレクトに手の感触は感じない。放置しておけば、そのうち止めるだろう。
すき焼きの他にも料理が並んでいる。お新香や煮びたしを口に運んだ。すき焼きへ箸を向けそうになるたびに、触っている手が動く。これでは2人に見えてしまう。
(なんだよーー。もう……)
これでは食事に集中できない。会話もしづらい。早瀬はこういう場に慣れているだろうが、俺はそうではない。仕事相手も同然なのに。黒崎さんのお兄さんであってもだ。
「悠人。豆腐を食べなさい」
「取ってよ……」
「自分で取りなさい」
「あああ……」
耳元で話しかけられた。その息づかいを感じて身体が震えた。置かれた手が上がってきて、とんでもないことを始めたからだ。黒崎さんを見て顔が熱くなった。どうも気づいたようだ。表情を変えずに、次の飲み物を勧めてくれた。
「そろそろ温かいものがいいだろう。プーアル茶を頼むか?」
「は、はい。お願いします……」
「それを気に入ったのか。追加で頼んでやるぞ」
「えーっと……」
食べているのは、焼き鮭のイクラ乗せだ。ご飯の上にのせて丼物で頼もうか?と言われた。さり気なく会話を振られて、悪戯から気を逸らせることが出来た。さすがに”やめてやれと” とは口にしなかった。バレると恥ずかしすぎる。
早瀬は左利きだから、食べる分には問題ない。右手で俺の足に触っている。向かいから見れば違和感がありそうだ。身体をよじれば逆効果だ。
「悠人。食べ過ぎると動けなくなるぞ?」
「うん……。そっちも食べ過ぎるなよ……」
「まだ食べたい」
「あああ……」
追加のものが運ばれて来たタイミングで、座席から立ち上った。上手くかわすことに成功して、距離を取ることが出来た。そのタイミングで、島川さんから話を振られて、すぐに元通りの空気に戻った。インタビュー記事のことや、着まわしていたシャツの話をした。おかげで、楽しく食事を終えることが出来た。
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