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9-6(悠人視点)
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18時。
マンションの共有フロアにて過ごしている。プライベートガーデンという、屋内にある中庭だ。大きなガジュマルの樹が並んでいる。天井を仰ぐと、吹き抜けの空間が広がっている。開放感のある空間だ。
大学の試験が全て終わって気が抜けた。今の気分もそうだ。まるで抜け殻状態のようになり、ソファーにもたれ掛かった。先客はいない。離れた場所を歩いている人だけだ。
「あああ……。お気に入りなのにーー」
頭に浮かぶのは、トリンドランドで購入したTシャツのことだ。学食で昼ご飯を食べている時に、チキン南蛮のタレを溢してしまい、赤く染まってしまった。コインランドリーで夏樹が応急処置をしてくれた。まだ2回しか着ていないのに。
ここに来たのは気分転換のためだ。一人で外を出歩けないからだ。この間はデパートでウロつき、早瀬から叱られてしまった。ここならマンション内だからOKだ。
「ふうーー。リラックスできるなあー」
植物の匂いと水のせせらぎ音が心地いい。しばらく遊歩道を歩いていないから、忘れていた感覚だ。明日、食事の帰りに歩ける。定期試験が終わったことと、番組が放送されるお祝いも兼ねている。
また脱力感に襲われて、強い眠気が起きた。ここで寝るのは危ないのに。そこへ、グリーン系の匂いが鼻をかすめて、身体を引っ張られた感覚に驚いた。
「わわわ……っ」
「心配したぞ。目を開けなさい」
目を開くと、眉をひそめた早瀬がいた。膝の上に抱きかかえられた状態だ。しかし、安心できるわけがない。小言が始まったからだ。
今日は早めに帰宅したそうだ。電話を入れたのに出ないから、何かあったと思った。帰ると、洗面所にTシャツが浸け込まれていた。赤いから驚いた。ここに迎えに来ると寝込んでいた。危なっかしすぎると立ち続けに言われてしまった。
「電話が鳴らなかったよ。げええ……、マナーモードにしてた」
「今日は試験だったからな。ふうー」
「わわわ……。重いよ」
「放送まで時間がある。話しておくことがある」
「ここで?なんで?」
「盗聴器の反応が出た。楽器部屋からだ。加藤さんと調査会社に立ち会ってもらった」
「何それ……。素人記者の関係?」
「まだ分からない」
このマンションのエントランスを記者がウロついた時に、受付から警察を呼ばれて、それ以来、見かけなくなった。こうなるまで何も教えてくれなかったとは思わない。全体的に考えてのことだからだ。なるべく気持ちを落ち着かせて、今回の話を聞いた。
盗聴器は、ファンから贈られたグッズから発見された。IKUの関係者経由だから受け取ったものだ。ギターケースに付けていた。それを持って移動することもあった。
「調べた結果、一つだけだった。明日から大学が休みだ。しばらくホテルへ宿泊しよう。その間に徹底的に調べる。いいね?返事は ”はい” だ」
「はい!」
「いい子だね」
中庭を出た。自分達の部屋に向かう間、今夜からのスケジュールを聞いた。部屋に入った後は、この話題を出さないこと。荷物の準備をするフレーズも出さないこと。それを早瀬と約束した。宿泊先は、IKUの本社ビルの近くのホテルだ。
「今日決めたの?全部のことを」
「そうだよ。加藤さんと事前に話し合っていたけど」
「すごいね。パッパッと……」
「得意不得意がある。俺は得意な方だ。それだけのことだよ」
「俺の得意技はあるのかなー。慌ててばかりだよ。ショックだし」
「ネガティブの特技がある。周りが放っておけない技だ。さあ、入るぞ」
「んがーー」
「鼻が詰まっているのか?」
「ちがうってばー」
髪の毛をグシャグシャと撫でられた。鼻や頬もグリグリされて、抵抗した。それが良かったのか、緊張感を持つことなく、玄関のドアを開くことができた。
マンションの共有フロアにて過ごしている。プライベートガーデンという、屋内にある中庭だ。大きなガジュマルの樹が並んでいる。天井を仰ぐと、吹き抜けの空間が広がっている。開放感のある空間だ。
大学の試験が全て終わって気が抜けた。今の気分もそうだ。まるで抜け殻状態のようになり、ソファーにもたれ掛かった。先客はいない。離れた場所を歩いている人だけだ。
「あああ……。お気に入りなのにーー」
頭に浮かぶのは、トリンドランドで購入したTシャツのことだ。学食で昼ご飯を食べている時に、チキン南蛮のタレを溢してしまい、赤く染まってしまった。コインランドリーで夏樹が応急処置をしてくれた。まだ2回しか着ていないのに。
ここに来たのは気分転換のためだ。一人で外を出歩けないからだ。この間はデパートでウロつき、早瀬から叱られてしまった。ここならマンション内だからOKだ。
「ふうーー。リラックスできるなあー」
植物の匂いと水のせせらぎ音が心地いい。しばらく遊歩道を歩いていないから、忘れていた感覚だ。明日、食事の帰りに歩ける。定期試験が終わったことと、番組が放送されるお祝いも兼ねている。
また脱力感に襲われて、強い眠気が起きた。ここで寝るのは危ないのに。そこへ、グリーン系の匂いが鼻をかすめて、身体を引っ張られた感覚に驚いた。
「わわわ……っ」
「心配したぞ。目を開けなさい」
目を開くと、眉をひそめた早瀬がいた。膝の上に抱きかかえられた状態だ。しかし、安心できるわけがない。小言が始まったからだ。
今日は早めに帰宅したそうだ。電話を入れたのに出ないから、何かあったと思った。帰ると、洗面所にTシャツが浸け込まれていた。赤いから驚いた。ここに迎えに来ると寝込んでいた。危なっかしすぎると立ち続けに言われてしまった。
「電話が鳴らなかったよ。げええ……、マナーモードにしてた」
「今日は試験だったからな。ふうー」
「わわわ……。重いよ」
「放送まで時間がある。話しておくことがある」
「ここで?なんで?」
「盗聴器の反応が出た。楽器部屋からだ。加藤さんと調査会社に立ち会ってもらった」
「何それ……。素人記者の関係?」
「まだ分からない」
このマンションのエントランスを記者がウロついた時に、受付から警察を呼ばれて、それ以来、見かけなくなった。こうなるまで何も教えてくれなかったとは思わない。全体的に考えてのことだからだ。なるべく気持ちを落ち着かせて、今回の話を聞いた。
盗聴器は、ファンから贈られたグッズから発見された。IKUの関係者経由だから受け取ったものだ。ギターケースに付けていた。それを持って移動することもあった。
「調べた結果、一つだけだった。明日から大学が休みだ。しばらくホテルへ宿泊しよう。その間に徹底的に調べる。いいね?返事は ”はい” だ」
「はい!」
「いい子だね」
中庭を出た。自分達の部屋に向かう間、今夜からのスケジュールを聞いた。部屋に入った後は、この話題を出さないこと。荷物の準備をするフレーズも出さないこと。それを早瀬と約束した。宿泊先は、IKUの本社ビルの近くのホテルだ。
「今日決めたの?全部のことを」
「そうだよ。加藤さんと事前に話し合っていたけど」
「すごいね。パッパッと……」
「得意不得意がある。俺は得意な方だ。それだけのことだよ」
「俺の得意技はあるのかなー。慌ててばかりだよ。ショックだし」
「ネガティブの特技がある。周りが放っておけない技だ。さあ、入るぞ」
「んがーー」
「鼻が詰まっているのか?」
「ちがうってばー」
髪の毛をグシャグシャと撫でられた。鼻や頬もグリグリされて、抵抗した。それが良かったのか、緊張感を持つことなく、玄関のドアを開くことができた。
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