連理の枝と約束~あなたと月の下で

夏目奈緖

文字の大きさ
2 / 4

雪庭の枝

しおりを挟む
 アンリは異星の血を引くという。七夕の織姫と彦星にあたるベガとアルタイル、その両方の血を宿し、アルタイル星の軍に属している。時々、同胞が空飛ぶ船で訪ねてくる。光をまとった船が夜空を横切るたび、俺は胸を締めつけられる。いつかアンリも、あの船で帰っていくのだと。

 離れたくない。好きだと言いたい。けれど、言えない。アンリには故郷に婚約者がいる。任務を終えれば帰還し、式を挙げるのだという。そんな男に想いを告げるなど、できるはずもない。男が男を好きだなどと、この時代に口にできるものか。俺にも縁談の話はあるが、兄が察して遠ざけてくれている。

 俺の気持ちを知っているのか、アンリはよく俺をからかう。抱きしめ、何食わぬ顔で添い寝をする。恋人のようでいて、決して一線は越えない。遊ばれている。今も、きっと。彼のために取り寄せた細工の贈り物を見せても、アンリは受け取るだけで、俺ではなく夕日を見ている。

「秀悟。かぐや姫が求婚者に望んだ蓬莱ほうらいの玉の枝は、こんなものだったのかな」
「そうかもしれないな。見事な細工だ」
「君は本当に分かっていない。だから縁談も来ないんだ」
「俺のせいじゃない」

 お前のせいだと言いたかった。アンリは笑い、座布団の上の細工を手に取る。夕日にかざすと、金が柔らかく輝いた。

「姫が欲しかったのは、こんな立派なものじゃない。もっと身近なものだよ」
「例えば?」
「正直さだ。蓬莱の玉の枝なんてないと認めること。見つからないから、連理れんりの枝でどうかと言えばよかった」
「連理の枝?」
「別々に育った二本の木が、途中で一つになったものだよ。中国にはこういう詩がある。在天願作比翼鳥ざいてん がんさく ひよくちょう在地願為連理枝ざいち がんい れんりし。天では比翼の鳥に、地では連理の枝に。どこにいても、共にあるという誓いだ。贈り物なんて凝らなくていい。そこに落ちている枝でいいんだ」

 そう言って庭へ降り、雪の残る地面から一本の枝を拾い上げた。白く霜を帯びた、ただの枝だ。俺は、また一本取られた気がして、ため息をついた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

情けない男を知っている

makase
BL
一見接点のない同僚二人は週末に飲みに行く仲である。

兄弟カフェ 〜僕達の関係は誰にも邪魔できない〜

紅夜チャンプル
BL
ある街にイケメン兄弟が経営するお洒落なカフェ「セプタンブル」がある。真面目で優しい兄の碧人(あおと)、明るく爽やかな弟の健人(けんと)。2人は今日も多くの女性客に素敵なひとときを提供する。 ただし‥‥家に帰った2人の本当の姿はお互いを愛し、甘い時間を過ごす兄弟であった。お店では「兄貴」「健人」と呼び合うのに対し、家では「あお兄」「ケン」と呼んでぎゅっと抱き合って眠りにつく。 そんな2人の前に現れたのは、大学生の幸成(ゆきなり)。純粋そうな彼との出会いにより兄弟の関係は‥‥?

【完】君に届かない声

未希かずは(Miki)
BL
 内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。  ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。 すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。 執着囲い込み☓健気。ハピエンです。

同居人の距離感がなんかおかしい

さくら優
BL
ひょんなことから会社の同期の家に居候することになった昂輝。でも待って!こいつなんか、距離感がおかしい!

執着

紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか

BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。 ……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、 気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。 「僕は、あなたを守ると決めたのです」 いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。 けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――? 身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。 “王子”である俺は、彼に恋をした。 だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。 これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、 彼だけを見つめ続けた騎士の、 世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。

処理中です...