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ゴトン、ゴトン、カタカタ……。
素敵な眺めを楽しもうとしたのに、なかなか上手くいかないものだ。俺達を乗せたゴンドラが上昇していく。寄り添って景色を眺めているはずが、喧嘩が勃発してしまった。今も言い合いをしている。黒崎からの束縛と、当時のデート相手のことについてだ。何がきっかけで話し始めたのか、忘れてしまった。
「身辺整理をしたって言っても、俺のことを束縛していたのってさ……。どうなわけー?」
「お前しか見ていない。筋を通した」
「今もそうだけど」
「そのまま返してやる。お前の方が束縛が強い。飲み会の度に、消臭スプレーをかけて帰っている」
「そのまま帰って来てもいいよ?チェックできないじゃん……」
「うるさいからだ。浮気はしない。したことがあったのか?」
「ないよ……?」
「これからもする予定はない」
「ふうん……?」
カッコいいことを言われた。胸がキュンと痛くなって、言い過ぎたと反省した。そろそろ仲直りをして、頂上からの眺めを楽しみたい。
「ごめんね。誕生日なのに」
「……」
何も言わずに頭を抱き寄せられた。肩にもたれて首筋に鼻先を埋めた。いい匂いを感じたい。
「仲直りのプレ儀式をしようよ」
「ああ、こっちを向け」
「うん……」
顔を上げて彼の目を見つめた。すると、昼の日差しがサッと差し込んできた。眩しくて目を閉じると、温かいものが、瞼と目尻に押し当てられた。そして、お返しに、自分からも黒崎の頬へキスした。触れ合うだけの軽いものを繰り返していくうちに、笑い声が立った。
「これじゃふざけ合っているだけじゃん」
「いつも通りがいい。特別な事はいらない」
「うん……」
外を見ると、手前にあったゴンドラが見えなくなっていた。自分たちの乗っているゴンドラが頂上にたどり着いたということだ。湾やビル群が見えている。夜の眺めも楽しみたい。
「夜に来たことがなかったな」
「今夜は家の灯りがいい。ゆっくり過ごそうよ」
「ああ……」
「今度こそだよ~」
黒崎の頬を両手で包み込んでキスをした。唇が離れた後、黒崎の両腕が背中に添えられて、強く引き寄せられた。キスを繰り返しているうちに視界が動いて、鉄の天井を肩越しに見た。体を倒されたからだ。
「だめだよ……」
「この方が周りから見えない」
「どこから見るんだよ?」
笑いながらキスをしているうちに、ゴンドラの音が大きくなっていった。もうすぐ地上に着くのか。
ガタン、ガタン……。
気をつけて降りてくださーい。
明るい景色に影が落ちた。赤い鉄骨が見えた時に、係員さんの声が、鉄の壁越しに聞こえてきた。
ガタンガタン、ゴーー。
一層、音が大きくなり、その呼びかけが近くで聞こえるようになった。さっきまで明るかった室内がさらに暗くなり、乗り場の赤い柱が見えた。あっという間だ。なんだか寂しくなった。でも、いつでも来られるし、何回でも乗ることが出来る。
今度は笑いながらゴンドラを降りて、もう喧嘩をしたくないねと話した。本日3回目の喧嘩だった。全く懲りない俺達だと思った。
素敵な眺めを楽しもうとしたのに、なかなか上手くいかないものだ。俺達を乗せたゴンドラが上昇していく。寄り添って景色を眺めているはずが、喧嘩が勃発してしまった。今も言い合いをしている。黒崎からの束縛と、当時のデート相手のことについてだ。何がきっかけで話し始めたのか、忘れてしまった。
「身辺整理をしたって言っても、俺のことを束縛していたのってさ……。どうなわけー?」
「お前しか見ていない。筋を通した」
「今もそうだけど」
「そのまま返してやる。お前の方が束縛が強い。飲み会の度に、消臭スプレーをかけて帰っている」
「そのまま帰って来てもいいよ?チェックできないじゃん……」
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「ないよ……?」
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「ごめんね。誕生日なのに」
「……」
何も言わずに頭を抱き寄せられた。肩にもたれて首筋に鼻先を埋めた。いい匂いを感じたい。
「仲直りのプレ儀式をしようよ」
「ああ、こっちを向け」
「うん……」
顔を上げて彼の目を見つめた。すると、昼の日差しがサッと差し込んできた。眩しくて目を閉じると、温かいものが、瞼と目尻に押し当てられた。そして、お返しに、自分からも黒崎の頬へキスした。触れ合うだけの軽いものを繰り返していくうちに、笑い声が立った。
「これじゃふざけ合っているだけじゃん」
「いつも通りがいい。特別な事はいらない」
「うん……」
外を見ると、手前にあったゴンドラが見えなくなっていた。自分たちの乗っているゴンドラが頂上にたどり着いたということだ。湾やビル群が見えている。夜の眺めも楽しみたい。
「夜に来たことがなかったな」
「今夜は家の灯りがいい。ゆっくり過ごそうよ」
「ああ……」
「今度こそだよ~」
黒崎の頬を両手で包み込んでキスをした。唇が離れた後、黒崎の両腕が背中に添えられて、強く引き寄せられた。キスを繰り返しているうちに視界が動いて、鉄の天井を肩越しに見た。体を倒されたからだ。
「だめだよ……」
「この方が周りから見えない」
「どこから見るんだよ?」
笑いながらキスをしているうちに、ゴンドラの音が大きくなっていった。もうすぐ地上に着くのか。
ガタン、ガタン……。
気をつけて降りてくださーい。
明るい景色に影が落ちた。赤い鉄骨が見えた時に、係員さんの声が、鉄の壁越しに聞こえてきた。
ガタンガタン、ゴーー。
一層、音が大きくなり、その呼びかけが近くで聞こえるようになった。さっきまで明るかった室内がさらに暗くなり、乗り場の赤い柱が見えた。あっという間だ。なんだか寂しくなった。でも、いつでも来られるし、何回でも乗ることが出来る。
今度は笑いながらゴンドラを降りて、もう喧嘩をしたくないねと話した。本日3回目の喧嘩だった。全く懲りない俺達だと思った。
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