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ザザーー……。
今、内風呂に入っているところだ。ここは吹き抜けの天井で解放感あふれている。ヒノキの香りが爽やかだ。大きなガラス窓から外を眺めると、向こうの方に滝があるのが分かった。水音が聞こえている。近くに生えている木の枝が何本も連なり、寒さで白っぽく変わっているから、グラデーションのようだ。黒崎は変わらず、“優しいお兄さんのふり”を続けている。そして、黒崎から、俺にも出会ったばかりの頃のふりをしてくれと頼まれて、素直にやっている。嫌みを言い放題に出来るからだ。
「……もっとこっちにおいで」
「ここがいいです」
「湯船にもたれると楽だぞ」
「ここからの眺めが見たいので」
優等生のふりをして、にっこりと笑った。嫌がりながらも、出会ったばかり黒崎も悪くないと思った。だからこうして翻弄されている。それすらも悪くないと思っているから、始末が悪い。
「僕は君の体が見たい」
「何を言っているですか?そういうセリフは、女性に仰ってください」
ぶっきらぼうな返事をしたのに、黒崎が楽しそうに笑った。あの当時も同じだった。何を言っても面白がっていた。今はどうだろう?そっと振り向くと、爽やかな笑顔を向けられた。当時の優しいお兄さんさんというよりも、インターンシップで見た、"黒崎常務"に近いと思った。
「夏樹君。話がしたい。こっちへ来てくれ」
「ここでも十分聞こえます」
「……なかなか言うね」
「言いなりになる子よりも、反発する子が好きなんですよね?」
「そうだ。手応えのある子も大好きだ」
「ふうん……」
悪くないなと思った。ふいに頭を抱き寄せられて、抵抗せずに肩へもたれた。
「普段の夏樹君に戻ったのか?」
「"言いなりになる子"になってみました。期待はずれでごめんなさい」
「そんなことをしても無駄だぞ。気持ちは変わらないよ」
「勝手にどうぞ……」
「ああ、手強くて魅力的だ」
「へえ?本心ですか」
「そうだ。嘘をつくのは嫌いだ」
「黒崎さんって、モテるでしょう?女の人から、あなたが好きなのって言われるでしょう?フラれたことがないですよね?」
「……否定はしない」
「だからです。キツい言葉に魅力的に感じるんです。ただの思い込みです」
「苛めないでくれ。君に嫌われたくない」
黒崎が苦笑した。そっと顔が近づき、見つめ合ったままで唇が重ねられた。太ももの内側を撫でられても止めないでいると、耳元で笑い声を立てられた。
「抵抗しないのか?素直な子も好きになった」
「全部好きなタイプなんでしょう?」
「そんなことはないよ。夏樹君だから好きだ」
「誰にでも言っていますよね?」
「……ここはどうかな?」
「んん……」
「我慢できない。降参したい……」
チャプチャプ……。お湯が跳ねた後、湯船の縁に体を押し付けられた。ここで素直に身を任せてやらない。もっと拒んでやる。
「その怖い顔をやめてください」
「……悪い子だ」
「悪い子がどこにいるんですか?」
「ここにいるじゃないか」
「ここには優等生しかいないのに?」
「僕のことを翻弄する悪い子だ。ここで抱きたい」
「やめたの?ふうん。あ……」
さらに動きを封じられた。不意を突かれて躊躇っていると、壁に背中を優しく押しつけられた。天井からの水滴が首筋に落ちてきて、ぞくっと震えた。もう限界だ。大人しく降参したい。
「優等生の夏樹君。大事なことを忘れているぞ」
「どんなことだよ……」
「教えたら言ってくれるのか?」
「あんた次第だよ」
「先に僕の希望を聞いてくれ……」
耳元へ唇が寄せられた。そして、その希望という内容を囁かれた直後、別の意味で体が熱くなった。呆れと怒りも同時に起きた。
「バカヤロウー!」
「夏樹、どうした?」
黒崎の体を引き離して立ち上った。すぐに湯船から出てやった。それだけの内容を聞いたからだ。すけべしじいにも程がある。せっかくの旅行先なのに。
「夏樹、許してくれ」
「あんたはエロすぎるんだよーっ」
「いいムードだっただろう」
「調子に乗るなよーっ」
パシ!タオルで黒崎の体を叩いてやった。俺が色んなことに疎い面があるから、からかっているのだろう。一度も振り返らずに、お風呂から出て行った。
今、内風呂に入っているところだ。ここは吹き抜けの天井で解放感あふれている。ヒノキの香りが爽やかだ。大きなガラス窓から外を眺めると、向こうの方に滝があるのが分かった。水音が聞こえている。近くに生えている木の枝が何本も連なり、寒さで白っぽく変わっているから、グラデーションのようだ。黒崎は変わらず、“優しいお兄さんのふり”を続けている。そして、黒崎から、俺にも出会ったばかりの頃のふりをしてくれと頼まれて、素直にやっている。嫌みを言い放題に出来るからだ。
「……もっとこっちにおいで」
「ここがいいです」
「湯船にもたれると楽だぞ」
「ここからの眺めが見たいので」
優等生のふりをして、にっこりと笑った。嫌がりながらも、出会ったばかり黒崎も悪くないと思った。だからこうして翻弄されている。それすらも悪くないと思っているから、始末が悪い。
「僕は君の体が見たい」
「何を言っているですか?そういうセリフは、女性に仰ってください」
ぶっきらぼうな返事をしたのに、黒崎が楽しそうに笑った。あの当時も同じだった。何を言っても面白がっていた。今はどうだろう?そっと振り向くと、爽やかな笑顔を向けられた。当時の優しいお兄さんさんというよりも、インターンシップで見た、"黒崎常務"に近いと思った。
「夏樹君。話がしたい。こっちへ来てくれ」
「ここでも十分聞こえます」
「……なかなか言うね」
「言いなりになる子よりも、反発する子が好きなんですよね?」
「そうだ。手応えのある子も大好きだ」
「ふうん……」
悪くないなと思った。ふいに頭を抱き寄せられて、抵抗せずに肩へもたれた。
「普段の夏樹君に戻ったのか?」
「"言いなりになる子"になってみました。期待はずれでごめんなさい」
「そんなことをしても無駄だぞ。気持ちは変わらないよ」
「勝手にどうぞ……」
「ああ、手強くて魅力的だ」
「へえ?本心ですか」
「そうだ。嘘をつくのは嫌いだ」
「黒崎さんって、モテるでしょう?女の人から、あなたが好きなのって言われるでしょう?フラれたことがないですよね?」
「……否定はしない」
「だからです。キツい言葉に魅力的に感じるんです。ただの思い込みです」
「苛めないでくれ。君に嫌われたくない」
黒崎が苦笑した。そっと顔が近づき、見つめ合ったままで唇が重ねられた。太ももの内側を撫でられても止めないでいると、耳元で笑い声を立てられた。
「抵抗しないのか?素直な子も好きになった」
「全部好きなタイプなんでしょう?」
「そんなことはないよ。夏樹君だから好きだ」
「誰にでも言っていますよね?」
「……ここはどうかな?」
「んん……」
「我慢できない。降参したい……」
チャプチャプ……。お湯が跳ねた後、湯船の縁に体を押し付けられた。ここで素直に身を任せてやらない。もっと拒んでやる。
「その怖い顔をやめてください」
「……悪い子だ」
「悪い子がどこにいるんですか?」
「ここにいるじゃないか」
「ここには優等生しかいないのに?」
「僕のことを翻弄する悪い子だ。ここで抱きたい」
「やめたの?ふうん。あ……」
さらに動きを封じられた。不意を突かれて躊躇っていると、壁に背中を優しく押しつけられた。天井からの水滴が首筋に落ちてきて、ぞくっと震えた。もう限界だ。大人しく降参したい。
「優等生の夏樹君。大事なことを忘れているぞ」
「どんなことだよ……」
「教えたら言ってくれるのか?」
「あんた次第だよ」
「先に僕の希望を聞いてくれ……」
耳元へ唇が寄せられた。そして、その希望という内容を囁かれた直後、別の意味で体が熱くなった。呆れと怒りも同時に起きた。
「バカヤロウー!」
「夏樹、どうした?」
黒崎の体を引き離して立ち上った。すぐに湯船から出てやった。それだけの内容を聞いたからだ。すけべしじいにも程がある。せっかくの旅行先なのに。
「夏樹、許してくれ」
「あんたはエロすぎるんだよーっ」
「いいムードだっただろう」
「調子に乗るなよーっ」
パシ!タオルで黒崎の体を叩いてやった。俺が色んなことに疎い面があるから、からかっているのだろう。一度も振り返らずに、お風呂から出て行った。
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